
(引用元:NASA)
こちらは、NASAの木星氷衛星探査機「エウロパ・クリッパー(Europa Clipper)」に取り付けられている三角形の金属板です。表面に刻まれた数多くの波形は、世界各地の103言語で「水」と発音したときの音声を視覚化したものです。

電子機器を守る金属板
この板は、熱や腐食に強い金属である「タンタル」製で、厚さ約1mm、大きさは約18×28cmです。単なる記念品ではなく、探査機の電子機器を収めた容器「ボールト」の開口部をふさぐ構造の一部として組み込まれています。
木星周辺の強力な放射線から電子機器を守るため、ボールトは金属製になっており、この板も防御の一端を担っています。実用的な部品でありながら、両面にさまざまな意匠が刻まれているのです。
103言語の「水」
外側を向く面のデザインは「Water Words(水の言葉)」と名付けられました。言語学者たちの協力で世界各地の語族から集められた103言語の「水」の音声が、それぞれ波形として刻まれています。
この103の音声言語に、中央のアメリカ手話が加わります。中央の円形の記号は、アメリカ手話で「水」を表す手の形を、画像処理やデータ圧縮にも使われる数学的手法「フーリエ変換」を用いて図形化したものです。
エウロパの氷の地殻の下には、地球上のすべての海を合わせた量の2倍を超える水が存在すると考えられています。地球とエウロパを結ぶ共通点として、「水」が金属板の主題に選ばれました。
裏側に刻まれたもの
内側を向く面には、当時の米国桂冠詩人アダ・リモン氏がエウロパのために書いた詩「In Praise of Mystery: A Poem for Europa(神秘を讃えて)」が、本人の手書きのまま刻まれています。

その近くには、NASAのキャンペーン「Message in a Bottle」に応募した260万人以上の名前を微細な文字で刻んだシリコンチップが取り付けられています。また、銀河系内に存在する交信可能な地球外文明の数を見積もるための「ドレイクの方程式」も、考案者である天文学者フランク・ドレイク氏の筆跡で刻まれています。
エウロパ・クリッパーは日本時間2024年10月15日に打ち上げられ、2025年3月には火星の重力を利用した軌道変更を実施しました。2026年12月には地球でスイングバイを行い、2030年4月に木星周回軌道へ投入される予定です。
編集/sorae編集部
記事
- 待ち受け画面にしたくなるほど美しい 探査機「エウロパ・クリッパー」のコンセプトアート
- NASA探査機エウロパ・クリッパーがスイングバイ時に火星を観測
- スペースX、NASAの無人探査機「エウロパ・クリッパー」を打ち上げ
参考文献・出典
- NASA/JPL - Europa Clipper's 'Water Words'(PIA26063)
- NASA - Europa Clipper Vault Plate
- NASA - Europa Clipper Mission Timeline























