
こちらは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測した星形成領域「IC 348」。ペルセウス座の方向、地球から約1000光年先にあります。

輝く星々を包むような星雲と赤ちゃん星のジェット
IC 348は、ガスと塵(ダスト)の集まりである低温の分子雲が自らの重力で収縮することで、新しい星が生み出されている領域です。
誕生する天体の質量は幅広く、太陽よりもはるかに重くて数百万年ほどで超新星爆発に至る大質量星から、太陽の約8パーセントの質量しかない軽い恒星、さらには恒星と同じ過程で生まれながらも中心部で水素の核融合を維持できない褐色矮星があります。
ESA(ヨーロッパ宇宙機関)によると、ウェッブ宇宙望遠鏡はIC 348で生まれたばかりの星々と、それを包むように渦巻く雲の様子を捉えました。画像の中央付近には星々が密集しており、明るい星の多くは大小8本の回折スパイク(※)をまとっています。
※…望遠鏡の構造によって光が回折する(わずかに曲がる)ことで生じる光学的な特徴。ウェッブ宇宙望遠鏡の場合は主鏡を構成する六角形の鏡の縁や、副鏡を支える支柱によって特有の回折スパイクが現れる。
また、画像右上の青みがかった一角には、生まれたばかりの星が噴き出したジェットが周囲のガスに衝突して光を放つ「ハービッグ・ハロー(Herbig-Haro: HH)天体」が幾つか見えています。横長に伸びる構造は「HH 797」、そのすぐ右にあるプロペラのような形の構造は「HH 211」と呼ばれています。
質量が木星の2倍しかない褐色矮星も発見
ペンシルベニア州立大学のKevin Luhman氏とESAのCatarina Alves de Oliveira氏は、このIC 348を観測対象に、恒星と惑星の中間的な性質を持つ褐色矮星はどこまで軽くなり得るのかを探ってきました。
研究チームは2022年にIC 348で3個の褐色矮星を発見しており、そのうち最も軽いものは木星の3〜4倍程度の質量でした。その後も2024年にさらに広い範囲を観測して褐色矮星の候補天体を絞り込み、2025年には質量を確認するための分光観測(電磁波の波長ごとの強さの分布であるスペクトルを得る観測手法)を実施しています。
その結果、両名はIC 348で新たに9個の褐色矮星を確認しました。そのうち2個では円盤構造の兆候が確認されており、周囲で惑星が形成されている可能性があるといいます。
また、9個のうち8個からは水素と炭素だけでできた炭化水素の存在を示すとみられる痕跡が見つかり、同様の痕跡を示す既知の褐色矮星の数は合計11個になりました。炭化水素の痕跡は質量が軽いほど強まる傾向があることから、両名はこれらの褐色矮星について、スペクトルをもとにした独自のクラスに分類できる可能性を指摘しています。
さらに、今回確認された9個の褐色矮星のうち1つは、質量が木星の約2倍(太陽の約0.19%)しかありませんでした。一般的に、褐色矮星の質量の下限は木星の13倍前後とされていますから、この天体の質量はその値を大きく下回っていることになります。
惑星が若い星を取り巻くガスや塵でできた原始惑星系円盤の中で形成されるのに対して、褐色矮星は恒星と同じように分子雲の収縮によって形成されたと考えられています。ESAは両名の発見について、星形成のモデルに新たな課題を突きつけるものだと述べています。
恒星と比較すれば「木星とほぼ同じ質量」でありながらも、恒星と同じプロセスで生まれた天体が見つかったという事実は、恒星、惑星、そして褐色矮星を区別する境界線がどこにあるのかという問いを、改めて示すものと言えそうです。
冒頭の画像はESA/Webbから2026年9月15日付で公開されています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- ESA/Webb - Webb reveals stunning panorama of star formation
- Luhman and Alves de Oliveira - A New Spectral Class of Brown Dwarfs at the Bottom of the IMF in IC 348 (The Astrophysical Journal Letters)
























