地球に衝突する?人工物?第2の月!? 話題になった小惑星を紹介

地球に衝突する?人工物?第2の月!? 話題になった小惑星を紹介

アメリカ航空宇宙局(NASA)などによると、太陽系ではこれまでに100万を優に上回る数の小惑星が発見されています。その大きさは幅数百kmから数m以下と様々。多くは火星と木星の間に位置する小惑星帯を公転していますが、地球の公転軌道に接近する小惑星も数万個見つかっていて、中には確率こそ低いものの地球へ衝突するリスクが懸念されるものもあります。このページでは、話題の小惑星記事を随時ピックアップしていきます!

地球をかすめる小惑星を描いた想像図(Credit: ESA – P.Carril)
【▲ 地球をかすめる小惑星を描いた想像図(Credit: ESA – P.Carril)】

2032年に衝突する?小惑星「2024 YR4」

ヨーロッパ南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡(VLT)によって撮影された2024 YR4
ヨーロッパ南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡(VLT)によって撮影された2024 YR4

2025年1月27日、約1か月前に発見された小惑星「2024 YR4」は、推定直径が大きく、2032年の衝突確率が1%を超えたため、トリノスケールでレベル3と評価されました。これはレベル2以上の評価を受けた小惑星としては3例目で、史上2番目に大きな値です。しかし、評価方法の特性上、一時的に衝突リスクが過大に見積もられる期間があるため、現時点で一般社会が心配する必要はなく、過去の観測実績からも実際の衝突リスクは非常に低いと判断されています。

正体が電気自動車だった小惑星「2018 CN41」

打ち上げ後、地球を背景に撮影されたTesla Roadster(テスラ・ロードスター)とマネキンのStarman(スターマン)(Credit: SpaceX)
【▲ 打ち上げ後、地球を背景に撮影されたTesla Roadster(テスラ・ロードスター)とマネキンのStarman(スターマン)(Credit: SpaceX)】

国際天文学連合(IAU)の関連機関である小惑星センター(MPC)は、2025年1月2日に小惑星「2018 CN41」の情報を発表しました。しかし、翌日1月3日、MPCはこの天体をリストから削除することとなります。その理由は、この天体が小惑星ではなく、「車(とロケットの一部)」であることが判明したためです。

落下前に観測された小惑星「2024 XA1」

アラブ首長国連邦のMohammad Shawkat Odeh氏によって撮影された2024 XA1(黄色丸囲み中の交点)。(Credit: Mohammad Shawkat Odeh)
【▲ 図3: アラブ首長国連邦のMohammad Shawkat Odeh氏によって撮影された2024 XA1(黄色丸囲み中の交点)。(Credit: Mohammad Shawkat Odeh)】

地球へ落下する天体が、落下前に宇宙空間で「小惑星」として観測されることは非常に稀なことです。しかし、観測技術の向上などにより、落下前に発見される小惑星の報告数は徐々に増加しています。

2024年12月3日に地球に落下した小惑星「2024 XA1」は、落下前に観測された小惑星として史上11例目となりました。2024年内では「2024 BX1」「2024 RW1」「2024 UQ」に続く4例目の事例です。

上空1355kmを通過した小惑星「2024 XA」

図1: 赤線が2024 XAの軌道。地球に極端に接近したため、軌道が曲げられています。(Credit: CNEOS)
【▲ 図1: 赤線が2024 XAの軌道。地球に極端に接近したため、軌道が曲げられています。(Credit: CNEOS)】

日本時間2024年12月1日13時58分に観測された小惑星「2024 XA」は、その約5時間後の18時46分に地球に最接近しました。最接近時の距離は上空わずか1355kmで、静止軌道よりはるかに内側です。2024 XAの最接近距離は、通過前に観測されたものとしては観測史上最短であり、全ての小惑星の中でも2番目となります。

地球の第2の月となった小惑星「2024 PT5」

図1: 地球を固定して見た場合の、2024 PT5の位置の変化。黄線になっている範囲が、地球を重力的中心とする “第2の月” である期間となり、1周する前に地球周回軌道を離脱します。
【▲ 図1: 地球を固定して見た場合の、2024 PT5の位置の変化。黄線になっている範囲が、地球を重力的中心とする “第2の月” である期間となり、1周する前に地球周回軌道を離脱します。(Credit: Tony Dunn / 日本語の追加は筆者(彩恵りり)による)】

地球の近くを通過する小惑星の中には、地球の重力に捕獲され、一時的に「第2の月」となるものがあります。これまでに確実に確認された天然の「第2の月」は4例しかありません。

2024年8月に発見された小惑星「2024 PT5」は、2024年9月29日から11月25日まで地球の重力に捕獲されることが判明し、話題になりました。また、地球周回軌道に入る前に発見され、事前に「第2の月」になることが予測されたのは、2024 PT5が初めての事例です。

水星よりも太陽に近づく小惑星「2021 PH27」

太陽を中心に小惑星2021 PH27と水星・金星・地球の公転軌道を示した図。発見時点での位置関係が再現されている(Credit: CTIO/NOIRLab/NSF/AURA/J. da Silva (Spaceengine))
【▲ 太陽を中心に小惑星2021 PH27と水星・金星・地球の公転軌道を示した図。発見時点での位置関係が再現されている(Credit: CTIO/NOIRLab/NSF/AURA/J. da Silva (Spaceengine))】

2021年、地球の軌道よりも内側を公転する小惑星「2021 PH27」が発見されました。2021 PH27は、地球軌道内を周回する「アティラ群」に属し、その軌道長半径は約7,000万km、太陽に最も近づく近日点距離は約2,000万kmです。つまり、太陽に最も近づく際は、水星の軌道よりも太陽に近い位置を通過する天体です。

まとめ:次々と発見される小惑星

観測技術の向上や観測体制の充実にともなって、今までなら見逃されていたような暗い小惑星でも最近は発見できるようになりました。地球に近付く暗い小惑星にはサイズが小さいものが多く、中には発見直後に地球の大気圏へ突入して流星が観測されたり、隕石が回収されたりすることもあります。

また、発見直後は「近い将来地球に衝突するかもしれない」と世間から注目を集めるものの、その後の観測の積み重ねによって、近いうちには衝突しないことが明らかになる小惑星もあります。幅十数m~数十mほどの小惑星でも衝突すれば地上に被害が生じるおそれがありますから、リスクを正確に評価するためにも、小惑星の捜索と追跡観測は重要な取り組みです。

その一方で、形成初期の地球には小惑星や彗星によって水や生命に必要な物質が運ばれたと考えられていて、小惑星で回収されたサンプルからは実際にそのような物質が見つかっています。日々更新されていく小惑星の最新情報や注目の話題をキャッチするためにも、このページを時々チェックしてみて下さい!

 

編集/sorae編集部