小惑星が地球に接近することは頻繁にあります。その大半はとても小さいため、かつては観測自体が困難でしたが、現在では観測事例が増えています。
世界時2024年12月1日4時58分(※1)に観測された小惑星「2024 XA」は、その約5時間後の9時46分に地球に最接近しました。最接近時の距離は上空わずか1355kmであり、静止軌道よりはるかに内側です。2024 XAの最接近距離は、通過前に観測されたものとしては観測史上最短、全ての小惑星の中でも2番目となります。
※1…本記事では日時を世界時で記述します。表記された時間を9時間進めると日本時間になります。
小粒の小惑星「2024 XA」が上空1355kmを通過
地球と月との平均距離の10倍である半径385万kmの球体は、人間のスケールで言えば十分に広大ですが、天文学的に言えば極小のマトです。この距離以内に入り込んだ小惑星は「地球に接近した小惑星」としてカウントされることからもそれは分かります。
一方で、小惑星がこれよりずっと内側に入り込むこともよく知られています。かつてこれは理論的な話でしたが、現在では観測技術の向上により実際に観測される事例も増えてきました。先ほどの10分の1の距離、すなわち月よりも地球に接近した小惑星は、2024年に入ってから123例が報告されるほどになっています。
世界時2024年12月1日4時58分、カタリナ・スカイサーベイによって、かなり小さな新しい小惑星が観測されました。たまたま2024年12月上旬の1個目の発見となったことから、後に仮符号「2024 XA」と名付けられることになるこの小惑星は、発見時点ですでに地球から約17万kmと、月との距離の半分以下の距離にあること、地球へと極めて接近することが明らかとなりました。
最初の観測から約5時間後の9時46分、2024 XAは相対速度13.6km/sで太平洋上空を通過しました。最接近時の地表からの距離は1355kmであり、静止軌道である3万5786kmよりも内側です。この接近距離は2つの意味で記録的です。1つは、観測史上2番目に接近した小惑星であることです。地表に衝突した11例(※2)や、小惑星としてカウントされていない火球(※3)を除けば、史上最も接近した「2020 VT4」の368kmに次ぐ接近記録となります。
※2…2024 XAの発見後に見つかったものの、この記事の執筆時点では既知の例となった「2024 XA1」を含みます。
※3…いくつかの火球が、上空100kmを下回って地表に接近し、大気圏を通過したものの再び宇宙空間へと飛び出していることが実際に観測されています。
もう1つは、最接近前に観測された中では最も接近した小惑星であることです。先述の2020 VT4は最接近の約15時間後に初めて観測されましたが、2024 XAの発見は最接近の約5時間前です。前回の同様の事例は「2024 LH1」の1720kmであり、これよりも接近した形となります。
2024 XAは地球をかすめるように通過したため、地球の重力の影響を受けて公転軌道が大幅に変化しました。接近前の公転周期は約4年でしたが、現在では約1.5年まで短縮されています。
なお、2024 XAの発見後に見つかった、衝突前に観測された小惑星「2024 XA1」は、偶然似た仮符号が振られただけの無関係の天体です。ただし後述する通り、地球に接近する小惑星の観測事例は増え続けています。偶然には違いないものの、多数の観測事例があれば偶然が起こる確率は上がっていると言えるでしょう。
- 小惑星「2024 XA1」(C0WECP5)を落下前に観測 前回の同様事例からわずか42日後(2024年12月10日)
もっと重大な事態に備えるための “小さな発見”
2024 XAの推定直径は1.3~2.8mであるため、衝突しても火球となり、せいぜい小さな隕石の粒が地表に落下する程度で、被害の心配はありません。2024 XAの観測が重要なのは、このような小粒な小惑星の接近を見逃さなかったことにあります。
確かに、接近する小惑星を観測できるかどうかは、天文台が夜であるかどうかのような運に左右される部分もあります。ただし根本的には、小さくて暗い天体でも観測できる技術力、ノイズのような無関係の物体を排除するアルゴリズム、軌道を正確に予測する計算能力などが問われます。そして小さくて無害な小惑星の接近を事前に観測できる体制を整えることは、災害になり得る “本番” に備えるための訓練であるとも言えます。
上記図3の表は、地球に極めて接近した小惑星の一覧ですが、この表は高度0km、すなわち衝突することが事前に予測された11例を含んでいません。また、高度の上限は地球の半径である6378km(地球と月との平均距離の3.32%未満)で区切っています。誤差の大きな2例を除いても2024 XAは9例目であり、2024年中では3例目の報告、そして「最接近前に観測された中では最も接近した小惑星」という称号は2024年中で2回も更新されました。10年前ならそれだけでニュースになるレベルの極端な接近すら、2020年頃からは珍しくなくなっています。極端な接近の観測は、この先もどんどん増えていくことになるでしょう。
Source
- Minor Planet Electronic Circular. “MPEC 2024-X24 : 2024 XA”.(Minor Planet Center)
- Small-Body Database. “(2024 XA)”.(Jet Propulsion Laboratory)
- Teo Blašković. “Asteroid 2024 XA flew past Earth at 0.02 LD, the closest flyby of the year and second closest on record”.(The Watchers)
- “Tony Dunn氏のX(旧Twitter)でのポスト”.
文/彩恵りり 編集/sorae編集部
#小惑星 #2024XA