
こちらは欧州宇宙機関(ESA)が2025年2月5日付で公開した動画です。ESAの太陽探査機「Solar Orbiter(ソーラー・オービター)」に搭載されている極端紫外線撮像装置「EUI(Extreme Ultraviolet Imager)」を使って2022年10月13日と2023年4月17日に連続撮影した太陽の高解像度画像を使って作成されました。
【▲ 欧州宇宙機関(ESA)の太陽探査機「Solar Orbiter(ソーラー・オービター)」の極端紫外線撮像装置「EUI」で撮影された太陽の微小なプラズマジェット(白色の楕円で示された部分)のアニメーション(英語)。2022年10月13日と2023年4月17日に連続撮影した画像を使って作成されたもので、右上はサイズの比較用に挿入された地球の画像】
(Credit: ESA & NASA/Solar Orbiter/EUI Team)
ESAによると、白い楕円に囲まれている周囲よりも暗い領域には、風にそよぐ髪の毛のようにも見える“微小な”プラズマのジェットが写っています(微小と言っても、1つの領域だけでも地球が入ってしまうくらいの大きさがあります)。2023年にSolar Orbiterの観測によって太陽の南極付近で発見されたこのジェットは、1つ1つが約1分間継続し、毎秒約100kmの速度でプラズマを放出させているといいます。
2種類の太陽風はどちらも微小なプラズマジェットが発生させている可能性
発見以来、このジェットは高速太陽風の起源ではないかと考えられてきました。太陽から放出されたプラズマの流れである太陽風は、秒速700km程度の高速太陽風と、秒速300km程度の低速太陽風の2種類に分けられます。高速太陽風はコロナホール(太陽コロナに生じた穴のように見える領域)の方向から来ることが何十年も前から知られていたものの、低速太陽風の起源についてはよくわかっていなかったといいます。
今回、マックス・プランク太陽系研究所のLakshmi Pradeep Chittaさんを筆頭とする研究チームは、EUIの高解像度画像をはじめ太陽風の粒子や太陽磁場の測定値といったSolar Orbiterの観測データを分析。その結果、太陽の赤道付近に生じたコロナホールでもプラズマジェットを発見するとともに、観測された太陽風とジェットの直接的な結びつきを見出すことができました。

さらに、これらのジェットは高速太陽風だけでなく、起源がわかっていなかった低速太陽風の少なくとも一部を発生させていることも研究チームは発見しました。高速太陽風と低速太陽風はこれまで異なるプロセスで発生していると考えられてきたといい、Chittaさんは「同じ微小なプラズマジェットが高速太陽風と低速太陽風の両方を駆動させているように見えたことに、私たちは非常に驚きました」とコメントしています。
ESAは今後も1年に2回太陽に接近するSolar Orbiterでさらなる観測を行い、微小なジェットが太陽風を発生させている仕組みをより深く理解するためにより多くのデータを集めたいと考えているということです。太陽も恒星のひとつですから、Solar Orbiterによる観測は恒星の基本的な性質やそこで働くプロセスを理解することにもつながるはず。今後の成果にも注目しましょう!
- 太陽の手前を横切る影のような水星の姿 欧州の太陽探査機が捉えた(2023年2月25日)
- 太陽の高解像度画像 欧州の探査機「ソーラー・オービター」が撮影(2022年6月3日)
Source
- ESA - Scientists spot tiny Sun jets driving fast and slow solar wind
- Max Plank Institute - Origin of fast and slow solar wind discovered
- Chitta et al. - Coronal hole picoflare jets are progenitors of both fast and Alfvénic slow solar wind (Astronomy & Astrophysics)
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部