【▲ 参考画像:アメリカ国立電波天文台の「カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)」(Credit: Alex Savello)】

【▲ 参考画像:アメリカ国立電波天文台の「カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)」(Credit: Alex Savello)】

「1950年の夏、物理学者のエンリコ・フェルミは、他の科学者と昼食をとりながら、その当時話題であったUFO (※1) や超光速飛行などにまつわる雑談をしていた。その時フェルミは『でも、みんなはどこにいるんだ?(But, where Is everybody?)』とつぶやいた。」

※1…この3年前の1947年、アメリカのワシントン州で自家用機に乗っていたケネス・アーノルドが、音もなく飛行する円盤を目撃したと主張した。後にケネス・アーノルド事件と呼ばれたこの出来事は世間の話題となり、異星人の乗り物としての “空飛ぶ円盤” が定着するきっかけとなった。

これが、後に「フェルミのパラドックス」と呼ばれるようになった、観測事実と実際の矛盾に関する指摘です。

地球のように生命を宿す可能性のある惑星は、宇宙にたくさんあるでしょう。その中のいくつかでは実際に生命が誕生して高度な文明が発達し、地球を訪問できるほどの技術レベルに達しているかもしれません。しかし、私たちが知る文明は、今のところ地球のものだけです。

この矛盾については「宇宙では、地球のように文明はおろか、生命が発生すること自体が極めて稀である」という悲観的な予測から、「実は異星人はすでに地球に来ているが、政府などの組織がひた隠しにしているのだ」という陰謀じみた話まで、様々な “答え” が与えられています。

フェルミのパラドックスが唱えられた1950年には、太陽系以外の惑星は知られていませんでしたが、現在では数千の太陽系外惑星がすでに発見されていて、そのうちの少なくない数がハビタブルゾーン内を公転しています。しかも、技術レベルの問題から、これらの惑星のほとんどは数百光年以内にあるのです。

直径が数万光年以上もある銀河や、そんな銀河が数千億個も存在するこの宇宙に、地球以外の生命も文明もほとんど存在しない、と考えるのは難しくなってきているように思えます。では、どうして異星人は今のところ見つかっていないのでしょうか?

ヘブライ大学ラカー物理学研究所のAmri Wandel氏は、この疑問に関する1つの答えを導き出しました。それは、「宇宙には生命がありふれているだろう」という予測から始まります。

Wandel氏は、まず異星人の “考え方” について、2つの条件を仮定しました。第1に「生命がいるかもしれない、というだけの惑星にはあまり注目しない」、第2に「文明があるかもしれない惑星には注目する」というものです。

先述の通り、宇宙には生命を宿す可能性のある惑星が無数に存在します。しかし、私たちがまだ隣の惑星系にさえ探査機を送ることができていないように、何光年以上もの距離に隔てられた他の惑星系は、探査機を送り込むにはあまりにも遠すぎます。このため、光の速度を超えられないという制約がある限り、単に生命がいるかもしれないというだけで、探査機や有人宇宙船を闇雲に送ることはしないでしょう。

これは、地球外知的生命体宛ての電波送信にも同じことが言えます。何らかの意味を持つ電波を送っても、その惑星に電波を受信できる程度の技術レベルを持つ文明が存在しなければ意味がないでしょう。それに、電波は進む距離が長くなればそれだけ弱くなるため、送信対象は受信してもらえると期待できる惑星に絞り込まれるはずです。これが第1の条件です。

では、第2の条件に照らしてみるとどうでしょうか。たとえば、地球では約100年前に電波を用いた無線通信が行われるようになり、その一部は宇宙へと漏れています。つまり、地球から100光年以内には無線通信が始まった頃の電波が届いているはずであり、即座に返答してくれる異星人が50光年以内にいれば、今頃地球に返事が届いているはずです。そのような範囲には1300ほどの星系が存在します。

しかし、宇宙へと漏れ出る無線信号は、特定の星系に向けられたものではありません。電波の信号レベルは距離とともに弱くなり、わずか1光年先ではバックグラウンドノイズと区別ができなくなる可能性があります。つまり異星人にとって、地球は「文明の兆候となる電波通信をしていない惑星」だと思われているかもしれないのです。他の惑星と同じように生命を宿している可能性はあるものの、文明が存在しないと見なしているとすれば、異星人がコンタクトしてこない理由になるはずです。

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このような指摘を行ったのはWandel氏が初めてではありませんが、Wandel氏はより議論を進めています。

文明が無線送信技術を発達させ、技術的には異星人とコンタクトができるようになっている期間が数百年から数千年であるとした場合、天の川銀河(銀河系)に非常に豊富な文明が存在しない限り、地球とコンタクトを取れる確率は非常に低いだろうとWandel氏は見積もっています。ここでいう「非常に豊富な文明」の数は1億以上と見積もられています。

しかし、50光年以内には即座に返事をくれる異星人がいないかもしれない (※2) と考えれば、天の川銀河に存在する文明の数はおそらく1000万よりもはるかに少ないと見積もられます。2つの見積もりの大きな格差により、私たちが異星人とコンタクトできていないのは確率的に当然であると言うことができます。

※2…もちろん、人類の電波に気付いてはいるものの、返事をしていない異星人が存在する可能性はあります。その異星人は他の文明に関心がなかったり、文化的・宗教的な理由であえて返事をしていなかったりするかもしれませんし、あるいは “ワープ航法を開発していない異星人とは接触禁止” なのかもしれません。ただし、これらは反証可能性のない思考実験なので、今回は考慮しません。

今回の見積もりが正しい場合、通信できる技術水準の文明が数千年以上維持されなければ、私たち人類と異星人がお互いに通信できる可能性は低いままです。私たちが “隣人” を見つけられるかどうかは、第2の地球探しや電波の送信だけでなく、今の地球文明を数千年以上維持する努力にかかっているのかもしれません。

 

Source

  • Amri Wandel. “The Fermi Paradox revisited: Technosignatures and the Contact Era”. (arXiv)
  • Eric M. Jones. “''Where is everybody. '' An account of Fermi's question”. (Office of Scientific and Technical Information)

文/彩恵りり

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