「天文学的な数字」と表現されるように、天文学では非常に大きな数字を扱います。これには天体の数(「星の数ほどある」とも言われます)や天体までの距離が含まれます。ここでは、特に天体までの距離について詳しく考えてみましょう。
天体までの距離とその単位
天体までの距離は非常に遠いため、日常生活で使用する単位(例えばキロメートル(km))では桁数が多くなりすぎてしまいます。そこで天文学では、新たな単位として「光年」、「パーセク(pc)」、「天文単位(AU)」がよく使われます。
光年(Light Year)
「光年」は最もよく知られている天文学の基本単位です。光年とは、光が1年間に進む距離のことを指します。しかし、「光が1年間に進む距離」と言われても実感が湧きにくいかもしれません。そこで、光子(光の粒)になったつもりで太陽から天の川銀河の端まで旅することを想像してみましょう。
パーセク(pc:Parsec)
「パーセク(pc)」とは、「年周視差が1角度秒(1”)となる距離」を指します。1パーセクは約3.26光年に相当します。
天文単位(Astronomical Unit, AU)
「天文単位(AU)」とは、地球と太陽の間の平均距離を指し、約1億5000万キロメートル(1 AU ≈ 1.5 × 10^8 km)です。
光年、パーセク、天文単位の具体例
以下に、光年、パーセク、天文単位をキロメートル(㎞)に換算した具体的な距離を示します。光の速度は300,000 km/sと仮定します。
距離の単位 | キロメートル換算 | 説明 |
---|---|---|
1光秒 | 300,000 km(30万 km) | 光が1秒間に進む距離 |
1光分 | 18,000,000 km(1800万 km) | 光が1分間に進む距離 |
地球まで | 8.3光分 | 太陽から地球までの距離 |
木星まで | 43.2光分 | 太陽から木星までの距離 |
1光時 | 1,080,000,000 km(10億8000万 km) | 光が1時間に進む距離 |
海王星まで | 4.1光時 | 太陽から海王星までの距離 |
1光日 | 25,920,000,000 km(259億2000万 km) | 光が1日間に進む距離 |
オールトの雲内側 | 29光日 | 太陽系を球殻状に取り囲む微惑星が分布するオールトの雲の内側までの距離 |
1光年 | 9,460,000,000,000 km(9兆4600億 km) | 光が1年間に進む距離 |
最も近い恒星とその惑星 | 4.25光年 | プロキシマ・ケンタウリとその惑星プロキシマbまでの距離 |
100光年 | 946,000,000,000,000 km(946兆 km) | 100光年に相当する距離 |
天の川銀河の直径 | 100,000光年 9.46 × 1017 km(946京 km) | 天の川銀河の直径 |
光の速度と宇宙のスケール
動画で「光(light)」の後が「秒(second)」、「分(minute)」、「時(hour)」、「日(day)」、「年(year)」と変わっていったことに気づいたでしょうか?例えば「1光分」は1分間に光が進む距離を意味しています。光は非常に速いとされていますが、具体的な例を挙げると以下の通りです。
- 地球から太陽まで:約8.3分(8分20秒)
- 地球から月まで:約1.3秒
- 地球から火星まで:約3分
系外惑星への距離と未来の宇宙探査
最も近い系外惑星までは4.25光年、つまり約4年3ヶ月かかります。光速度やそれに近い速度の宇宙船が開発されない限り(現在の科学技術では)、系外惑星への旅は困難です。しかし、系外惑星の研究や宇宙開発の意義は依然として高く評価されています。
光年と他の単位の関係
最後に、「光年」と他の2つの単位「パーセク(pc)」および「天文単位(AU)」との関係を以下に示します。
- 1光年 = 0.307パーセク(pc) = 63,200天文単位(AU)
まとめ
天体までの距離を理解するためには、光年、パーセク、天文単位といった天文学独自の単位を理解することが重要です。これらの単位を用いることで、宇宙の広大さをより具体的に把握することができます。最新の宇宙探査技術の進展により、今後さらに多くの発見が期待されます。
Source
- Video Credit: NASA(exoplanets.nasa)
- Image Credit: 国立天文台暦計算室
- Source: NASA(exoplanets.nasa)
文/吉田哲郎 編集/sorae編集部