高速で銀河を駆ける連星 銀河中心とハローを4億年周期で行ったり来たり
【▲ 連星「VVV 1256-62AB」の想像図(Credit: Jiaxin Zhong & Zenghua Zhang)】

こちらは約246光年先の連星「VVV 1256-62AB」の想像図です。VVV 1256-62ABは左奥の白色矮星「VVV 1256-62A」と右手前の準矮星「VVV 1256-62B」で構成されています。間隔は約1400天文単位で、約6万年周期で互いに公転しています。

【▲ 連星「VVV 1256-62AB」の想像図(Credit: Jiaxin Zhong & Zenghua Zhang)】
【▲ 連星「VVV 1256-62AB」の想像図(Credit: Jiaxin Zhong & Zenghua Zhang)】

天の川銀河の星々は各々の軌道を公転していますが、この連星の軌道は独特です。南京大学の張曾華(Zenghua Zhang)さんを筆頭とする研究チームによると、天の川銀河の中心に対して約4億年ごとにわずか約3000光年まで接近したかと思えば、最も遠ざかる時は約10万光年も離れて銀河ハロー(※銀河を球状に包む低密度の領域)に達するような細長い軌道を描いており、現在は秒速406kmで中心から離れる方向へ移動しています。

【▲ 連星「VVV 1256-62AB」の過去20億年(シアン)と今後20億年(赤)の動きを示した動画。星印は現在の太陽の位置を示している】
(Credit: Roberto Raddi, Zenghua Zhang, MNRAS)

また、誕生したばかりの白色矮星の表面温度は10万℃にもなりますが、VVV 1256-62Aの表面温度は太陽よりも低い約4160℃まで下がっています。連星の年齢は約105億年と非常に古く、VVV 1256-62Aが白色矮星になってからだけでも85億年ほどの時間が経っていると推定されています。

【▲ パラナル天文台(チリ)の「VISTA望遠鏡」で2010年と2015年に撮影された連星「VVV 1256-62AB」の連続画像。左が白色矮星「VVV 1256-62A」、右が準矮星「VVV 1256-62B」(Credit: VISTA, ESO)】
【▲ パラナル天文台(チリ)の「VISTA望遠鏡」で2010年と2015年に撮影された連星「VVV 1256-62AB」の連続画像。左が白色矮星「VVV 1256-62A」、右が準矮星「VVV 1256-62B」(Credit: VISTA, ESO)】

VVV 1256-62ABの研究を通じて、天の川銀河全体についてのさらなる知見を得たり、恒星の進化モデルをテストしたりできると期待されています。

 

Source

  • 南京大学 - "Waltz" in the Milky Way: The first age benchmark ultracool subdwarf with a white dwarf companion-Nanjing University
  • ESA - Gaia discovers interesting duo belonging to the Milky Way halo: an ultracool subdwarf with a white dwarf companion
  • Zhang et al. - Primeval very low-mass stars and brown dwarfs – VIII. The first age benchmark L subdwarf, a wide companion to a halo white dwarf (Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)

文・編集/sorae編集部