
こちらは「ほ座(帆座)」の方向約5500光年先の星形成領域「RCW 38」です。星形成領域とはその名の通り、ガスや塵(ダスト)から新しい星が形成されている領域のこと。星は物質が高密度に集まった分子雲の中でも、特に濃い部分が重力によって崩壊する(潰れる)ことで誕生すると考えられています。星が誕生・成長する場所であることから、星形成領域は“星のゆりかご”と表現されることもあります。

赤外線で明らかになった豊かな星団の姿
この画像はESO=ヨーロッパ南天天文台が運営するパラナル天文台(チリ)の「VISTA望遠鏡」に搭載されていた高感度赤外線カメラ「VIRCAM」で取得したデータを使って作成されました。人間の目は赤外線を認識できないので、使用されたデータは取得時のフィルターに応じて青・緑・赤で着色されています。
ESOによると、RCW 38には誕生から100万年経っていない約2000個の若い星々からなる星団が存在しています。塵に視界が覆われているため、ほとんどの星は可視光線では見えません。塵に妨げられにくい赤外線を捉えるVIRCAMで観測を行うことで、塵の繭に包まれている若い星や、星の中心で水素の継続的な核融合反応が起こるほどの質量に達しなかった褐色矮星を含む、豊かな星団の姿が明らかになったということです。
2008年から活躍してきたVIRCAMはこの画像に使われたデータの取得後に引退しており、2025年後半には新たに開発された多天体分光装置「4MOST」がVISTA望遠鏡に搭載される予定です。天体の組成や運動などを調べるために必要なスペクトル(電磁波の波長ごとの強さの分布)を取得するための分光観測を、4MOSTは一度に2400個の天体に対して行うことができるといい、ESOは生まれ変わるVISTA望遠鏡に期待を寄せています。
冒頭の画像はESOから2025年2月13日付で公開されています。ちなみに、本記事では掲載できるサイズの都合により画像を縮小していますが、ESOから公開されているのは8000万ピクセルの高解像度画像です。美しいRCW 38の光景をオリジナル版の解像度で楽しみたい方は、ESOがあわせて公開しているズーム表示対応バージョンを以下リンク先で是非お楽しみ下さい!
- The RCW 38 cluster in infrared light (RCW 38のズーム表示対応バージョン)
RCW 38の拡大画像




- いて座の「M17(オメガ星雲)」 ヨーロッパ南天天文台の望遠鏡が観測(2024年9月30日)
Source
- ESO - Star cluster reveals its colours in stunning 80-million-pixel ESO image
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部