くじら座にある銀河団「MACSJ0025」。青紫色の部分が「暗黒物質(ダークマター)」の存在を示している(Credit: NASA, ESA, CXC, M. Bradac (University of California, Santa Barbara, USA), and S. Allen (Stanford University, USA).)

くじら座にある銀河団「MACSJ0025」。青紫色の部分が「暗黒物質(ダークマター)」の存在を示している(Credit: NASA, ESA, CXC, M. Bradac (University of California, Santa Barbara, USA), and S. Allen (Stanford University, USA).)

夜空に輝く星々をはじめ、星雲、銀河といった天体は、私たち自身の目や望遠鏡・人工衛星などを使って観測することができます。しかし、私たちの目に見える存在が宇宙のすべてというわけではありません。

宇宙に存在する物質・エネルギーのうち、約27%が「ダークマター(暗黒物質:dark matter)」と呼ばれる仮説上の物質、約68%が「ダークエネルギー(暗黒エネルギー:dark energy)」と呼ばれる仮説上のエネルギーとされています。私たちが知覚している通常の物質は、残りの5%でしかないと言われています。

未知の物質ダークマターは宇宙と素粒子の謎を解明する重要なカギとなっていて、世界中の研究者が探索を行っています。

■ダークマターが存在している証拠

ダークマターは電磁波(可視光、電波、X線など)を発しないので望遠鏡で観測することはできませんが、質量を持っているので、通常の物質に重力を介して影響を及ぼします。そのため、以下のような重力が引き起こす現象によってその存在が推測されています。

1)銀河の回転

回転している物体には、回転の中心から離れる方向に遠心力が働きます。銀河の中心の周りを公転している円盤部の星々も同様で、遠心力は銀河の回転スピードが速いほど強くなります。この遠心力と銀河に存在する物質による重力が釣り合うことで、公転する星々は銀河から飛び出すことなく周り続けることができます。

ところが、銀河の回転速度を実際に測定してみると、銀河を構成する恒星の質量から算出された釣り合いの取れる値と比べてかなり速いのです。この回転速度による遠心力と釣り合うためには、実際に輝いている恒星(通常の物質)以外に大きな質量をもつ「何か」の存在が不可欠です。このことから、光(電磁波)を発しない物質、つまりダークマターが大量に存在すると考えられています。

銀河の回転とダークマター(Credit: 創造情報研究所)

銀河の回転とダークマター(Credit: 創造情報研究所)

2)重力レンズ効果

もう一つの重要な手がかりは「重力レンズ」です。重力レンズとは、遠方の天体(銀河など)と私たちの間にある別の銀河や銀河団の重力によって遠方の天体を発した光の進む向きが曲げられることで、遠方の天体の像がゆがんで見える現象です。重力レンズによる効果は、夜空の複数の方向に同じ銀河の姿が見える事象として観測することができます。

遠方の天体と私たちの間にある銀河・銀河団の質量が大きいほど、遠方の天体を発した光の曲がり方も大きくなります。ダークマターを直接見ることはできませんが、天体の像がゆがんで見える様子を詳しく観測することで、重力レンズ効果をもたらしている銀河や銀河団に存在するダークマターの質量を推定することができるのです。

ダークマターによる重力レンズ効果(Credit: 創造情報研究所)

ダークマターによる重力レンズ効果(Credit: 創造情報研究所)

 

関連:時空のゆがみが作り出す「銀河のドラゴン・アーク」

■謎に包まれるダークマターの正体

銀河の回転速度や重力レンズ効果の観測結果をもとに、ダークマターが存在することはわかります。それでは、ダークマターは何からできているのでしょうか?

ダークマターの正体については幾つかの仮説が立てられていますが、現在有力視されているのは「未発見の素粒子」です。理論上存在が予想されているものの見つかっていない素粒子は幾つかあり、そのうちのどれかがダークマターなのではないかと考えられています。たとえば東京大学宇宙線研究所の「XMASS(エックスマス)」実験では、「弱く相互作用する重さがある粒子」を意味する「WIMPs(Weakly Interacting Massive Particles)」の一種「ニュートラリーノ」や、「アクシオン」といったダークマター候補の素粒子を検出するためのデータ収集が2019年3月まで行われました。

また、過去には惑星や小惑星、白色矮星、褐色矮星、中性子星、それにブラックホールといった、あまり光らない(電磁波を出さない)「暗い天体」がダークマターの候補として検討されてきました。特に銀河を取り巻く希薄な領域「ハロー」に存在する見えにくい天体は「MACHO(Massive Compact Halo Object, Massive Astrophysical Compact Halo Object)」と呼ばれて探索が行われましたが、現在ではダークマターにおいてMACHOが占める割合は少ないと予想されています。

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■宇宙の大規模構造とダークマター

現在の宇宙は、銀河の集団である「銀河団」が連なったフィラメント状の構造と、銀河が希薄な領域「空洞(ボイド)」が複雑に絡み合った網の目のような構造をしています。

「宇宙の大規模構造」と呼ばれるこの構造は、次のように形成されたのではないかと推測されています。初期の宇宙に存在したわずかな「ゆらぎ」をもとに、ダークマターの密度にもゆらぎが生じます。密度の高い部分はさらに多くのダークマターを引き寄せていき、その重力によって通常の物質であるガスが次第に引き寄せられます。やがて集まったガスから最初の世代の星々や銀河が形成されるようになり、銀河は星形成活動や衝突・合体を経て成長し、現在に至ったというのです。

このように、現在観測されている宇宙の巨大な構造、その成り立ちにはダークマターが密接に関係していると考えられています。

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編集/sorae編集部

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