オハイオ州立大学のYi-Kuan Chiang博士らは、宇宙空間を占めるガスの平均温度が過去100億年間で約10倍に上昇したことが確認されたとする研究成果を発表しました。
宇宙の温度変化を調べるのに用いられたのは、欧州宇宙機関(ESA)の衛星「プランク」と米国ニューメキシコ州にあるスローン財団望遠鏡を使った「スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)」です。プランクは宇宙マイクロ波背景放射(CMB)のデータを、SDSSは宇宙の銀河分布を示す「大規模構造」と光のスペクトル情報を収集しています。
誕生した直後の宇宙の名残であるCMBからは宇宙空間中のガスの平均温度を、重力で光の波長が伸びる「赤方偏移」からは観測対象の「年齢」を推定できます。研究グループはこれらを組み合わせることで、現在と過去における宇宙の平均温度を比較しました。その結果、宇宙全体のガスの平均温度は過去100億年の間に現在の約200万K(ケルビン)まで10倍以上上昇したことが明らかになったといいます。温度の上昇は今後も続くとされています。
ガスの温度が上昇する原因は、誕生したばかりの宇宙に存在した量子による密度の「ゆらぎ」とされています。このゆらぎが存在したことでダークマター(暗黒物質)やガスが重力に引き寄せられ、銀河や銀河同士が密集した銀河団や、これらが網目状に分布する宇宙の大規模構造が形成されたと考えられています。非常に強い重力で引き寄せられたガスが衝撃波で加熱されることで、ガスの温度がどんどん上昇を続けているとみられています。
今回明らかになった宇宙温度の上昇について、研究を主導したChiang博士は、宇宙の大規模構造理論を裏づける発見だと語っています。
Image Credit: Illustris Collaboration
Source: Phys.org
文/Misato Kadono