ペイル・ブルー・ドット:宇宙に浮かぶ点の様な地球。ボイジャー1号が60億km先から撮影
ボイジャー1号が撮影した「ペイル・ブルー・ドット」の30周年を記念した再処理画像(Credit: NASA/JPL-Caltech)

1990年2月14日、アメリカ航空宇宙局(NASA)の無人探査機「ボイジャー1号」は、地球からおよそ60億km離れた場所から、地球を含む6つの惑星の写真を撮影しました。これらの画像は太陽系の「家族写真」とも呼ばれ、その中には「ペイル・ブルー・ドット(Pale Blue Dot:淡い青い点)」として知られる地球の姿も含まれています。

撮影から30周年を迎えた2020年、NASAは最新の技術を用いてこれらの歴史的な画像を再処理しました。広大な宇宙に浮かぶ点のような地球の姿は、人類にとって地球の脆さや貴重さを再認識させるものであり、今なお深い感動を与えています。

「ペイル・ブルー・ドット」と「太陽系の家族写真」

ボイジャー1号が撮影した「ペイル・ブルー・ドット」の30周年を記念した再処理画像(Credit: NASA/JPL-Caltech)
【▲ ボイジャー1号が撮影した「ペイル・ブルー・ドット」の30周年を記念した再処理画像(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

こちらが現代の画像処理技術で再処理された「ペイル・ブルー・ドット」です。画像の中央付近、散乱した太陽光の帯のなかに小さな点として写っているのが、60億km先から撮影された地球です。このときの地球はボイジャー1号からは三日月型に見えており、カメラから見える地球のサイズは1ピクセルにも満たない0.12ピクセルしかありませんでした。

1980年11月に土星の接近観測を終えたボイジャー1号はその後も観測を続けていましたが、探査機としての寿命を延ばすべく、カメラをシャットダウンすることになりました。このとき、当時ボイジャー計画に携わっていた天文学者のカール・セーガンによって、シャットダウンする前のカメラを使って「太陽系の家族写真(Family Portrait of the Solar System)」を撮影することが提案されます。

ボイジャー1号によって撮影された「太陽系の家族写真」と、撮影時の位置関係を示した図。撮影は右端に見える海王星(Neptune)から始まり、合計60枚に及んだ(Credit: NASA/JPL-Caltech)
【▲ ボイジャー1号によって撮影された「太陽系の家族写真」と、撮影時の位置関係を示した図。撮影は右端に見える海王星(Neptune)から始まり、合計60枚に及んだ(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

カメラのシャットダウン直前に実施されたボイジャー1号による太陽系の家族写真撮影では、金星、地球、木星、土星、天王星、海王星、そして太陽が写されました(水星は太陽に近すぎ、火星は散乱した太陽光にまぎれてしまい、冥王星は暗すぎたために写すことができませんでした)。地球が写った「ペイル・ブルー・ドット」と呼ばれる画像は、全部で60枚撮影された写真の1つとなります。

人類すべてが「ペイル・ブルー・ドット」という淡い点のなかに詰まっている

人類を含むすべての生命、その暮らし、46億年に渡るこれまでの歴史が詰まっている小さな点を写したこの画像は、ボイジャー1号に搭載されている「狭域カメラ(Narrow-Angle Camera)」を使い、緑、青、紫のフィルターを通して撮影された3枚の画像を合成することによって作成されました。

1990年に公開された当時の「ペイル・ブルー・ドット」。中央やや右下の光線内に地球が写っている(Credit: NASA/JPL)
【▲ 1990年に公開された当時の「ペイル・ブルー・ドット」。中央やや右下の光線内に地球が写っている(Credit: NASA/JPL)】

 

ボイジャー計画について

ボイジャー計画(Voyager program)は、NASAが1977年に打ち上げた2機の無人探査機ボイジャー1号と2号による太陽系外縁部の探査ミッションで、木星や土星を含む外惑星の詳細な観測を行い、現在は太陽圏を超えて星間空間の探査を続けています。

 

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Source

  • Image Credit: NASA/JPL-Caltech
  • NASA - 'Pale Blue Dot' Revisited

文/松村武宏