
(引用元:ESA/Hubble)
こちらは、冥王星の衛星「ニクス(Nix)」の姿勢が変化していく様子を表した想像図です。冥王星には現在までに5つの衛星が確認されており、ニクスは冥王星に近い順で3番目を公転しています。この画像は、ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた明るさの変化を説明するシミュレーションをもとに作成され、ESA/Hubbleから2015年6月3日に公開されました。

冥王星とカロンの重力に揺さぶられる?
太陽系にある多くの大型衛星は、自転周期と公転周期が一致しています。地球の月がいつも同じ面を地球へ向けているのも、この「同期自転」によるものです。
ところが、冥王星の衛星ニクスと「ヒドラ(Hydra)」は、姿勢が不規則に変化し、長期的な動きを予測するのが難しい「カオス的な自転」をしています。その原因は、冥王星と最大の衛星「カロン(Charon)」がつくる重力環境にあります。カロンの質量は冥王星の約8分の1です。地球に対する月の質量が約80分の1であることと比べても、非常に大きな割合です。
冥王星とカロンは、冥王星の外側にある共通重心を中心に、互いを回るように運動しています。周囲を公転する小さな衛星は、移動する冥王星とカロンの両方から引かれるため、受ける重力の向きや強さが変化します。ニクスとヒドラが細長い形をしていることも重なり、姿勢が不規則に変わると考えられています。
実際、ハッブル宇宙望遠鏡の観測では、ニクスとヒドラの明るさが不規則に変化していました。これは、両衛星が予測できない形で姿勢を変えているためと考えられています。
ニュー・ホライズンズが捉えたニクス
画像の公開から約6週間後の2015年7月14日、NASAの探査機「ニュー・ホライズンズ(New Horizons)」が冥王星系を通過しました。接近観測によって、ニクスは最も長い部分が約50kmある細長い天体で、自転周期は約1.8日と判明しました。公転周期の約25日よりも大幅に短く、同期自転していないことが分かります。また、ニクスの細長い形は、姿勢が不規則に変化する理由のひとつと考えられています。
また、接近前の観測で表面が暗いと推定されていた衛星「ケルベロス(Kerberos)」は、反射率が約50%ある明るく小さな天体でした。ハッブル宇宙望遠鏡の観測から質量が実際より大きく見積もられていた理由は、現在も解明されていません。
編集/sorae編集部
関連記事
- ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた冥王星と衛星カロン/ニクス/ヒドラ
- 冥王星表面の不思議な模様は液体窒素の流出跡? スプートニク平原は現在も更新され続けている可能性
- マグマからのメタンが原因?冥王星の衛星「カロン」の北極が赤い理由
参考文献・出典
- ESA/Hubble - The chaotic spin of Pluto’s moon Nix
- ESA/Hubble - Hubble observes chaotic dance of Pluto’s moons
- NASA - Kerberos










