
(引用元:Stefano Ivan Stingaさん)
こちらは、NASAの有人月ミッション「アルテミスII(Artemis II)」の宇宙飛行士が撮影した62枚の画像から再構成された、皆既日食の様子です。
日本在住で天体写真の撮影や探査機データの画像処理に取り組むStefano Ivan Stingaさんが作成し、今回、sorae編集部にご提供いただきました。

日本時間2026年4月7日、月の近くを通過するフライバイの途中で、宇宙船「オリオン(Orion)」は月の影に入りました。宇宙飛行士たちは、月の裏側の向こうに太陽が隠れる皆既日食を1時間近くにわたって観測し、その様子をオリオンの窓越しに撮影しました。
月の周囲に広がる淡い光と、地球照に照らされた月の縁
月の周囲には、淡い光が帯状に広がっています。この光についてStingaさんは、太陽系内を漂う微細な塵が太陽光を散乱した「Fコロナ」と「黄道光」だと説明しています。月に隠れた太陽の近くで特に明るく、太陽の見かけの通り道である黄道に沿って伸びています。
月の左側の縁には、月の表側の一部が三日月状に明るく写っています。この部分を照らしているのは、地球で反射した太陽光です。「地球照」と呼ばれる現象で、画像ではクレーターなどの地形も見て取れます。一方、円盤の大部分を占める暗い部分は、太陽光が当たっていない月の裏側です。

また、全体画像の右下には、土星、海王星、火星、水星が黄道に沿って並んでいます。下の拡大画像には、このうち土星、海王星、火星の位置が示されています。なお、金星は画面左端のすぐ外側に位置しています。

淡い光、月、星を別々に処理して合成
画像の作成に使われたのは、NASAの惑星データシステム「PDS」で公開されたRAW画像です。撮影には、デジタルカメラ「ニコンZ9」に焦点距離35mm・開放F値2のレンズが使われました。
Stingaさんが使用した62枚は、日本時間2026年4月7日9時51分から10時26分までの約35分間に、最長13秒の露出で撮影されたものです。まず、レンズの周辺部で画像が暗くなる影響(周辺減光)や、露出の違いなどを1枚ずつ補正し、星の位置を基準に各画像の位置をそろえました。
続いて、62枚の中からそれぞれに適した画像を選び、月の周囲に広がる淡い光、月、背景の星を別々に処理したうえで、最後に1枚の画像へと合成しています。
淡い光の処理には55枚を使用しました。星が写っている部分を除外して画像を重ね合わせ、光のなだらかな広がりを再現しています。窓に映り込んだ金星の反射は除去し、惑星の周囲に生じた光のにじみは、黄道に沿って広がる光の帯になじむように補完しています。
月の処理では、候補となる26枚から特に鮮明な17枚を選び、月の位置をそろえて重ね合わせました。さらに、ノイズの低減やぼやけの補正を施し、地球照に照らされた月の縁の細かな起伏を引き出しています。
背景の星は、撮影データから9430個の星の位置、明るさ、色を個別に測定し、その測定値に基づいて丸い光の点として描き直しました。なお、星の位置や明るさなどをまとめた「星表」は、位置の確認や色の補正などにのみ使用しており、撮影データにない星を星表から追加したわけではありません。
撮影データに基づき、見えるように整えた景色
仕上げには、一度の露出では同時に捉えきれない明るい光と暗い月、かすかな星を1枚の画像で見られるよう、明暗の差を調整しています。
月の裏側に当たる暗い領域は、撮影データに地形の模様が記録されておらず、カメラや窓による光の「かぶり」やわずかな反射しか写っていなかったため、黒く表示されています。

Stingaさんによると、画像の一部をコピーして別の場所に貼り付ける処理や、AIによる生成は行っていないとのことです。また、NASAの公開データをもとに独自に作成した画像であり、NASAの公式画像ではないとしています。
高解像度画像や月・惑星の拡大画像は、Stingaさんの画像紹介ページでご覧いただけます。同じページでは、もとのRAW画像1枚と完成画像を、スライダーを動かして比較することもできます。
編集/sorae編集部
画像提供者情報
- Stefano Ivan Stinga さん
日本在住。趣味で天体写真の撮影や、NASAなどが公開している探査機データの画像処理を行う。 - 画像紹介・高解像度ダウンロードページ:https://stinga.jp/behind-the-moon-2026/
- X(旧Twitter):@Sting1_JP
- Flickr:Stefano Ivan Stinga









