上海交通大学のDarius Modirrousta-Galian氏とイェール大学の是永淳氏は、誕生から間もない成長途中の岩石惑星が経験すると考えられている天体どうしの大規模な衝突「巨大衝突」が、岩石惑星の大気にどのような影響を及ぼすのかを調べた研究成果を発表しました。両氏の成果をまとめた論文は学術誌「Nature Astronomy」に掲載されています。

2種類の惑星を分ける“半径の谷”
過去の研究によると、主星の近くを公転する比較的小さな太陽系外惑星の半径の分布には、地球の約1.3倍と約2.4倍の部分に“山”が生じます。その間にあたる惑星は数が少ないことから、「半径の谷」とも呼ばれています。
2つの“山”は、原始大気を持たない「スーパーアース」と、原始大気をまとった「サブネプチューン」にあたると考えられています。原始大気とは、ガスと塵(ダスト)の集まりである原始惑星系円盤で誕生した原始惑星が、周囲から取り込んだ水素に富むガスの層を指します。
論文によると、2種類の惑星の分かれ目を説明する有力な説の一つは、原始惑星系円盤が消えて周囲からガスを取り込めなくなった後に起きる巨大衝突だとみられてきました。衝突によって惑星の表面が高温に加熱され、原始大気が宇宙へ逃げ出すと考えられてきたのです。
増えた質量が大気を引き止める?
巨大衝突は惑星を加熱する一方で、衝突した天体を取り込むことで惑星の質量は増加し、大気を引き止める重力を強めることにもなります。そこで両氏は、加熱と質量の増加を同時に扱うモデルを用いて、巨大衝突を経験した後の惑星の進化を計算しました。
両氏によると、原始惑星の核(コア)と衝突した天体の核が合体するような巨大衝突は、惑星の質量が増えることで重力を強める方向に働く一方で、衝突エネルギーのうちマントル(岩石の層)の温度を上げるのは一部にとどまることがわかりました。マントルを溶かすためにまずエネルギーが消費されることに加えて、衝突した天体の核はマントルにほとんどエネルギーを渡すことなく惑星の深部に沈み、高温のまま残ってしまうことがその理由です。
その結果、重力を強める効果のほうが加熱する効果を上回り、巨大衝突を経験した惑星はかえって大気を保持しやすくなる可能性が示されました。より大きく、大気を持つ惑星ほど衝突による成長を経て生まれやすい反面、円盤が消えた後に巨大衝突を経験しない、より小さな惑星ほど主星の放射を浴び続けて原始大気を失う傾向があると両氏は考えています。
つまり、“半径の谷”に隔てられたスーパーアースとサブネプチューンは、巨大衝突の経験の有無が進化の分かれ道になった可能性がある、というわけです。

サブネプチューンの“中身”は重い可能性
この結果をもとに、両氏はサブネプチューンの岩石部分(マントルと核)は平均してスーパーアースよりも重い可能性が示唆されると述べており、ジェームズ・ウェッブ(James Webb)宇宙望遠鏡などによる大気の観測や、現在・将来のミッションによる質量の測定を通じて、この予想が検証されることに期待を寄せています。
大気を奪うと考えられてきた巨大衝突は、スーパーアースとサブネプチューンを隔てる原因となっているのかもしれません。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- Yale News - Clearing the air about super-Earths, sub-Neptunes — and their respective atmospheres
- Modirrousta-Galian and Korenaga - Retention of primordial atmospheres through giant impacts (Nature Astronomy)
- Modirrousta-Galian and Korenaga - Retention of primordial atmospheres through giant impacts (arXiv)










