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「月の裏側」はどうなっている? 見えない理由と代表的な地形・最新探査まで

「月の裏側」はどうなっている? 見えない理由と代表的な地形・最新探査まで

月の裏側は、地上からは直接見えない月の半球です。この記事では、見えない仕組みをやさしく解説し、表側と裏側の地形の違いや代表的な地形の位置関係を画像・地図で順に紹介します。さらに、月の裏側の最新探査や話題のトピックもまとめました。

月の裏側は地球からは見えない

月は自転と公転の周期がほぼ同じ約27.3日であるため、地球からは常に同じ面(表側)だけが見えます。これは「潮汐ロック」と呼ばれる現象で、月の引力と地球の重力の相互作用によって起こります。そのため、地球から直接見ることができない反対側は「月の裏側」と呼ばれ、肉眼や地上望遠鏡では決して観測できません。

3Dモデルで月を動かして見よう

NAOJ moon 20170112 full
LOAD 3D MODEL

月(Moon)

公転周期:約27.3日
自転周期:約27.3日
※潮汐ロック(同期回転)
sorae

回転する月の動画で裏側を見てみよう

こちらの動画は、NASAの月周回衛星「ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)」が撮影した11万枚もの撮影データをもとに作成された、回転する月の動画です。実際の画像から作られたデジタル版の月球儀のようなイメージです。月の自転周期が公転周期と同期していなければ、地球からこのように月を見ることができたかもしれません。

月の表と裏は見た目がぜんぜん違う

moon front back
【▲ 月の表側(左)と裏側(右)(Credit: NASA's Scientific Visualization Studio)】

月の表側は「海」と呼ばれる玄武岩に覆われた平原が多い一方、裏側は明るい高地が卓越します。

これは月形成後のマグマ活動や地殻厚の違い、巨大衝突盆地の分布など複数要因が関わった結果と考えられています。裏側は比較的始原的な地形・地殻状態を保つ領域が多く、月の進化史を探る上で重要な手がかりとなります。

月の裏側の代表的な地形

「南極エイトケン盆地」と「エイトケン・クレーター」

エイトケン・クレーターと南極エイトケン盆地

南極エイトケン盆地は、月の裏側に広がる巨大衝突盆地です。月の南極付近からエイトケン・クレーター付近まで延びることに由来して名付けられました。直径は約2500kmに達していて、地形は周囲より大きく落ち込んでいます。場所によっては約8kmに及ぶ低地もあると考えられています。

形成は約42億年前と推定されており、衝突によって地殻が深くえぐられた結果、下部地殻〜上部マントル由来の物質が表層近くに露出している可能性があります。

ライダー・クレーター

月の裏側にある「ライダー・クレーター」(Credit: NASA/GSFC/Arizona State University)
【▲ 月の裏側にある「ライダー・クレーター」(Credit: NASA/GSFC/Arizona State University)】

ライダー・クレーター(Ryder Crater)は、南極エイトケン盆地内にある衝突クレーターで、外形はやや細長くサイズは約17×13kmです。急な斜面上に形成されたため縁の標高差は最大で約1,500mと大きく、東側の崩れや内部の棚状地形が目立つなど非対称な姿をしています。この特異な形は、急斜面に加えて浅い入射角の斜め衝突や衝突体の分裂が関与した可能性が指摘されています。名称は月地質学者グラハム・ライダー(Graham Ryder)氏に由来します。

ツィオルコフスキー・クレーター

ルナー・リコネサンス・オービターの観測データをもとに再現されたツィオルコフスキー・クレーター(Credit: NASA's Scientific Visualization Studio)
【▲ LROの観測データをもとに再現されたツィオルコフスキー・クレーター(Credit: NASA's Scientific Visualization Studio)】

ツィオルコフスキー・クレーター(Tsiolkovsky Crater)は、月の裏側の南半球にある直径約185kmの大規模な衝突クレーターです。内壁には段状のテラス地形が発達し、高い山(中央峰)がそびえます。内部の広い範囲が玄武岩の溶岩で満たされているため、裏側では珍しい暗く平らな広がり(“海”のように見える)を示すのが特徴です。名称はロケット工学の先駆者、コンスタンチン・ツィオルコフスキー(Konstantin Tsiolkovsky)氏に由来します。

モスクワの海

LROの観測データをもとに再現された「モスクワの海」周辺
【▲ LROの観測データをもとに再現された「モスクワの海」周辺(Credit: NASA's Scientific Visualization Studio)】

モスクワの海(Mare Moscoviense)は、月の裏側にある数少ない「海」の一つで、直径約280kmのほぼ円形をした暗い溶岩原です。より大きなモスクワ盆地(約400〜450km級)の中央部に広がり、周囲の高地に囲まれた低地として際立ちます。裏側は一般に地殻が厚く溶岩が出にくいため、ここに玄武岩が広く分布していること自体が、局所的な地殻の薄化や大衝突後の減圧による融解など、特別な条件が働いた可能性があります。

紹介した地形の場所

月の裏側の地形

 

月の裏側への着陸ミッション(2018〜2025)

2018年、2024年:中継インフラの整備

中継通信衛星「鵲橋2号」の想像図(Credit: CASC)
【▲ 中継通信衛星「鵲橋2号」の想像図(Credit: CASC)】

2018年に中継衛星「鵲橋」が月の裏側との通信経路を確保しました。2024年には後継機「鵲橋2号」が機能を拡充し、裏側や極域での探査運用の安定化に寄与しました。

2019年:嫦娥4号が人類初の月の裏側に着陸

「嫦娥4号」が撮影した月の裏側の画像(Credit: CNSA)
【▲「嫦娥4号」が撮影した月の裏側の画像(Credit: CNSA)】

中国の探査機「嫦娥4号」が2019年1月3日、世界初となる月裏面への着陸に成功しました。嫦娥4号は月面の地形や地質、鉱物などの調査を目的に、2018年12月8日に「長征3号B」ロケットによって打ち上げられました。

2024年:嫦娥6号が月の裏側のサンプルリターンに成功

中国国家航天局(CNSA)が公開した月探査機「嫦娥6号」のセルフィー(Credit: CNSA)
中国国家航天局(CNSA)が公開した月探査機「嫦娥6号」のセルフィー(Credit: CNSA)

中国国家航天局(CNSA)は2024年6月25日に、月の裏側で採取したサンプルを搭載した月探査機「嫦娥6号」の帰還機が地球へ帰還したことを発表しています。月の裏側からのサンプルリターンは世界初です。

話題のトピックス

月の裏側に2つの人工クレーター

ルナー・リコネサンス・オービターによって撮影された、WE0913Aが衝突したことによって生じた新たなクレーター。2つのクレーターが並んでいる状況は、ロケットの一部が衝突して生じた他のクレーターとは異なる特徴です。 (Image Credit: NASA, GSFC & Arizona State University)
【▲ ルナー・リコネサンス・オービターによって撮影された、WE0913Aが衝突したことによって生じた新たなクレーター。2つのクレーターが並んでいる状況は、ロケットの一部が衝突して生じた他のクレーターとは異なる特徴です(Credit: NASA, GSFC & Arizona State University)】

2022年3月4日に月の裏側に落下した天体「WE0913A」はロケットの一部とみられています。WE0913Aは通常とは異なる2つの連なるクレーターを残したため、その正体に関心が持たれていました。観測データから、その正体は中国国家航天局の月探査試験機「嫦娥5号T1」の打ち上げに使われた「長征3号C」の上段ステージであると確定しています。

月に花崗岩?それは火山の跡?

NASAの月探査機ルナー・リコネサンス・オービターで撮影されたコンプトン-ベルコヴィッチ。見た目に白っぽいことは、白っぽい岩石である花崗岩が存在すると推定する上で1つの根拠となる。 (Image Credit: NASA)
【▲ 図2: NASAの月探査機ルナー・リコネサンス・オービターで撮影されたコンプトン-ベルコヴィッチ。見た目に白っぽいことは、白っぽい岩石である花崗岩が存在すると推定する上で1つの根拠となる(Credit: NASA)】

代表的な火成岩の1つである「花崗岩」は、地球以外の天体ではめったに存在しません。研究チームは、月の裏側にある「コンプトン-ベルコヴィッチ」という放射性物質が特異的に多いことで知られる地域からのマイクロ波放射を計測することで、地下に熱源が存在することを突き止めました。この成果をもとに、コンプトン-ベルコヴィッチは35億年前に月の火山活動で形成されたと考えられています。

 

文・編集/sorae編集部

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参考文献・出典