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NASA火星探査車キュリオシティが採取したサンプルから様々な有機分子を新たに検出 貴重な試薬も使用

フロリダ大学のAmy Williamsさんを筆頭とする研究チームは、NASA(アメリカ航空宇宙局)の火星探査車「Curiosity(キュリオシティ)」が採取したサンプルから、火星でこれまでに確認された中で最も多様な有機分子群が検出されたとする研究成果を発表しました。研究チームの成果をまとめた論文は科学誌「Nature Communications」に掲載されています。

NASAの火星探査車Curiosity(キュリオシティ)が2020年10月に撮影したセルフィー。今回の研究で分析されたサンプルは探査車のすぐ左下にある岩から採取されたもの(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)
【▲ NASAの火星探査車Curiosity(キュリオシティ)が2020年10月に撮影したセルフィー。今回の研究で分析されたサンプルは探査車のすぐ左下にある岩から採取されたもの(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)】

かつて湖があったクレーターで見つかった有機分子

NASAや研究チームによると、Curiosityが2020年に採取した岩石サンプルのひとつ(Mary Anning 3)を分析したところ、21種類の有機分子(炭素を含む化合物の総称)が検出されました。

このうち、ベンゾチオフェンやナフタレンなどの7種類は、火星で初めてその存在が特定されたといいます。炭素と硫黄を含むベンゾチオフェンは隕石からよく発見される物質であり、隕石によって初期の火星に有機分子がもたらされた可能性を示唆するものとなります。ナフタレンは防虫剤の成分としてよく知られています。

サンプルが採取されたアイオリス山(シャープ山)は、数十億年前に湖や川が存在したと考えられているゲール・クレーターの中央にそびえています。この地域は粘土鉱物が豊富にあり、過酷な放射線や長い時間経過から有機化合物が守られやすい環境だったと考えられています。

冒頭のセルフィーの一部を拡大した画像。この岩では矢印で示された3箇所からサンプルが採取されており、今回の研究では「Mary Anning 3」と呼ばれるサンプルが分析された(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)
【▲ 冒頭のセルフィーの一部を拡大した画像。この岩では矢印で示された3箇所からサンプルが採取されており、今回の研究では「Mary Anning 3」と呼ばれるサンプルが分析された(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)】

生命の遺伝情報にかかわる分子も初検出

研究チームによれば、新たに検出・推定された分子の中には窒素複素環(nitrogen heterocycle)と呼ばれる構造が含まれていました。これは窒素を含む炭素の環状構造で、遺伝情報を担うDNAやRNAの化学的な前駆体(もとになる物質)と考えられています。

Williamsさんは、火星表面で窒素複素環が検出されたのは今回が初めてであり、地球に落下した火星由来の隕石からも確認されたことはないとして、発見の重要性を強調しています。

火星で初めて実施された分析手法も

NASAによれば、今回の発見はCuriosityの内部に搭載された科学装置「SAM(Sample Analysis at Mars=火星サンプル分析装置)」によってもたらされました。

特筆すべきは、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)という試薬を用いた湿式化学分析が、火星探査史上初めて行われた点です。TMAHを収めた容器はCuriosityに2つしか搭載されていないといいます。貴重な試薬を用いたことで、研究チームはそのままでは検出が困難な安息香酸メチルなどの有機分子を分解し、特定することに成功しました。

生命活動に由来するか否か

地球では、有機分子は生命の構成要素として知られていますが、火星で見つかる有機分子が生命の活動によって作られたものなのか、あるいは水と岩石の反応や隕石の飛来といった非生物学的なプロセスで生成されたものなのかは、現在のところわかっていません。

最近では、2025年に火星での発見が報告された長鎖炭化水素について、非生物学的なプロセスでは存在量を十分に説明できないとする研究成果が発表されています。Williamsさんたち研究チームは今回の発見について、古代の火星に生命を育む化学的環境が備わっていたことを改めて裏付けるものだと述べています。

今回の実験で得られた知見は、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の火星探査車「Rosalind Franklin(ロザリンド・フランクリン)」によるミッションや、NASAが準備を進めているドローン型探査機「Dragonfly(ドラゴンフライ)」による土星の衛星Titan(タイタン)の探査ミッションなどにおいて、同様の分析を成功させるための重要な足がかりになると期待されています。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典