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長さ180万光年の“弓” 市民科学者が発見した弓矢形の巨大な電波銀河「RAD-BAARG」

こちらは、低周波干渉計「LOFAR(Low Frequency Array)」などが観測した「RAD-BAARG(Bow-And-Arrow Radio Galaxy)」と呼ばれる電波銀河。こじし座の方向、地球から約21億光年先にあります。

LOFARが観測した“弓矢形”の電波銀河「RAD-BAARG」(Credit: Hota et al. (2026) and the RAD@home Collaboratory)
【▲ LOFARが観測した“弓矢形”の電波銀河「RAD-BAARG」(Credit: Hota et al. (2026) and the RAD@home Collaboratory)】

宇宙に浮かぶ巨大な「弓矢」

冒頭の画像は、光学望遠鏡で捉えた背景の銀河や星々の画像に、LOFARが観測した電波のデータを赤色で重ね合わせたものです。まるで宇宙空間に巨大な弓矢が引かれているかのような、見事な非対称の形をしています。

イギリスの王立天文学会(RAS)によると、画像の右側(西側)には長さ約180万光年(約560キロパーセク)にもおよぶ、巨大な弧状の「弓」のような構造が広がっています。一方、左側(東側)にはS字型にゆがみながらも伸びた「矢」のような構造が見られます。

一般的な電波銀河の場合は中心から双方向に対称的なジェット(細く絞られたガスの高速な流れ)が伸びることが多いですが、このRAD-BAARGのような極端に非対称な形状は非常にめずらしいとされています。

どうして弓矢の形になったのか?

この特異な形状は、銀河の移動速度と周囲の環境が関係していると考えられています。

ムンバイ大学(インド)のAnanda Hota博士を筆頭とする研究チームの論文によると、この銀河は銀河団ガス(銀河団に属する銀河の間を満たしている高温ガス)の内部を高速で移動しています。そのため、超音速で飛ぶ航空機が前方に衝撃波を形成するのと同じように、この銀河も移動する前方のガスを圧縮し、目に見えない巨大なバウショック(弧状衝撃波)を形成しています。

そこに、RAD-BAARGの中心部にある超大質量ブラックホール(超巨大ブラックホール)の活動にともなって噴出したジェットが衝突することで、本来は見えないはずの衝撃波の輪郭が電波として光り輝き、このような弓状の構造が浮かび上がったと推測されています。

【▲ 市民科学ネットワーク「RAD@home」による解説動画(AI生成)(Credit: RAD@home)】

市民科学の力がもたらした大発見

実は、このRAD-BAARGを発見したのはプロの天文学者ではなく、インドの市民科学ネットワーク「RAD@home」に参加する市民科学者でした。RAD@homeの創設者でもあるHota博士によると、この構造は「過去25年間に見たどの電波銀河とも異なる」ものであり、非常に稀な現象だといいます。

近年、天文学の分野では観測データが非常に膨大となり、AIを活用した自動分類アルゴリズムも導入されています。しかし、この銀河はこれまでの自動分類では「単なる巨大な電波銀河のひとつ」として処理されており、詳細な弓矢の構造までは認識されていませんでした。市民科学者の熱意が未知の天体を捉えた、素晴らしい事例のひとつと言えそうです。

冒頭の画像は王立天文学会が2026年6月22日付で紹介しています。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典