
JAXA(宇宙航空研究開発機構)は2026年6月24日、小惑星探査機「はやぶさ2」が次の目標である小惑星「トリフネ(Torifune)」をカメラで捉えた画像を公開するとともに、記者説明会を開催しました。いよいよ2026年7月5日に迫ったトリフネのフライバイ(接近通過)に向け、探査機が正確な軌道上を飛行していることが確認されています。
約700万km先からトリフネを捕捉

こちらが公開された画像で、はやぶさ2の光学カメラ「ONC-T(光学航法望遠カメラ)」を使って2026年6月20日~21日にかけて取得した画像を使ったアニメーションです。中央左下を下から上に向かって移動している光点がトリフネになります。
JAXAによると、当時、はやぶさ2とトリフネの距離は約700万km離れており、トリフネはてんびん座の方向、約12.5等の明るさでした。間隔をあけて取得した画像を使用することで、背景の星々の間を移動するトリフネの姿をはっきりと確認できます。
拡張ミッション「はやぶさ2#」1つ目の探査対象
JAXAのはやぶさ2は、2019年2月と7月に小惑星「リュウグウ(Ryugu)」で採取したサンプルを2020年12月に地球へ持ち帰った後、次の小惑星を目指して拡張ミッション「はやぶさ2#(ツーシャープ)」を続けています。
拡張ミッションの探査対象となる小惑星は2つあります。1つは、2026年7月にフライバイ探査を行う予定のトリフネです。はやぶさ2はトリフネの近くを高速で通過しながら、その様子を観測することになっています。
もう1つは、2031年7月に到着予定の小惑星「1998 KY26」です。2025年9月発表の研究では幅約11mと見積もられている小さな小惑星で、はやぶさ2はその周囲を飛行しながら観測を行い、場合によっては小惑星表面へ降下・上昇するタッチダウンを実施する可能性もあります。

劣化が顕著なイオンエンジンと超高速接近への挑戦
順調にトリフネへと接近しているはやぶさ2ですが、探査機の状態は決して万全ではありません。2014年12月の打ち上げから11年以上が経過し、4台搭載されているイオンエンジンのうち3台(A、C、D)は性能劣化が顕著になっています。
JAXAによれば、頼みの綱として現在稼働している残る1台のイオンエンジン(B)にも劣化の兆候が見られ始めており、劣化を防ぐために推進剤(キセノンガス)の流量を増やすといった、限界に近い状況での運用が続いています。
また、今回のフライバイではやぶさ2は、秒速約5.2km(時速約1万8700km)という大きな相対速度でトリフネとすれ違います。JAXAはこの高速での接近に向け、リュウグウ到着時にも用いたカメラ画像と電波航法を組み合わせる方法(光学電波複合航法)をベースにしつつ、新たな航法誘導の手法を導入し、トリフネの中心から約800mという超近接距離を通過する精密な軌道制御に挑みます。

フライバイ探査の科学的目標と「地球防衛」への貢献
今回のトリフネフライバイでは、はやぶさ2に搭載されたカメラ、赤外線分光計、レーザ高度計などを最接近の直前までフル活用し、トリフネの形状や表面の物質、温度分布などの詳細なデータが取得されます。地球の公転軌道の近くを周回する地球接近小惑星のひとつであるトリフネの性質を調べることで、太陽系小天体の成因や進化、物質の移動に関する新たな知見が蓄積されると期待されています。
さらに、今回のフライバイは「プラネタリーディフェンス(地球防衛)」の観点でも大きな意義を持ちます。大きな相対速度で小さな天体の至近距離を正確に通過する技術は、将来、地球に衝突するおそれのある小惑星へ探査機を意図的に衝突させて軌道を変える技術(キネティックインパクト)に応用できるからです。
また、未知の危険な天体が発見された際、すでに宇宙空間で待機していた探査機を急行させて観測を行う「緊急調査(ファースト・レコン)」コンセプトの実証実験としても、今回のフライバイは位置付けられています。

トリフネ最接近と最終目的地「1998 KY26」へ
JAXAによると、トリフネの具体的な形が見えてくるのは、最接近時刻の約1分前から。はやぶさ2のカメラが捉えたその姿を私たちが確認できるのは、フライバイが終了した後になります。
はやぶさ2拡張ミッションチームは2026年6月10日に本番さながらのリハーサル運用を実施し、万全の態勢を整えています。また、2027年12月に予定されている地球スイングバイに向けて、フライバイ直後から再びイオンエンジンを稼働させる必要もあります。
限界が近づく機器を抱えながらも、着実に宇宙の旅を続けるはやぶさ2。2026年7月5日18時30分頃に予定されているトリフネとの一瞬の邂逅、そして最終目的地「1998 KY26」へと向かう今後の運用から、目が離せません。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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