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「はやぶさ2」のカメラが太陽系外惑星を検出 口径15mmでの成功は最小記録

JAXA/ISAS(宇宙航空研究開発機構/宇宙科学研究所)の湯本航生さんを筆頭とする研究チームは、JAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」に搭載された口径15mmの光学カメラ「ONC-T(光学航法望遠カメラ)」を使用して、太陽系外惑星の検出に成功したとする研究成果を発表しました。

湯本さんによると、宇宙空間で太陽系外惑星のトランジット(後述)を観測した機器として、世界で最も小さな口径での成功例となります。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「The Astronomical Journal」に掲載されています。

JAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」のCGイメージ(Credit: DLR)
【▲ JAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」のCGイメージ(Credit: DLR)】

長周期惑星の発見をはばむ「観測のバイアス」

太陽以外の恒星などを公転する惑星である太陽系外惑星は、これまでに6200個以上が確認されています。ただし、その多くは数日〜数十日という短い公転周期を持つ惑星が占めています。木星と同程度の質量を持ちながら、主星の極めて近くを公転するために表面が高温に加熱されている「ホットジュピター」は、その代表例です。

一方で、太陽系の木星のように、10年以上の長い公転周期を持つ木星型惑星は、あまり見つかっていません。これは、木星のような長い公転周期の惑星がめずらしいからではなく、私たち人類の観測手法に偏り(バイアス)があるからだと考えられています。

現在、太陽系外惑星を検出するための主な手法として、「トランジット法」や「視線速度法(ドップラーシフト法)」が用いられています。トランジット法は、惑星が主星(恒星)の手前を横切る現象「トランジット」が起きた時の、主星の明るさの周期的な変化やその推移をもとに惑星を検出する方法です。

もうひとつの視線速度法は、主星と重力で結びついている惑星の公転にあわせて、主星が円を描くように揺さぶられることでわずかに生じる、主星のスペクトル(※1)の周期的な変化をもとに惑星を検出する方法です。

※1…電磁波の波長ごとの強さの分布、わかりやすく言えば主星の色の成分。

2つの方法には、「見えない惑星を間接的に検出するために、よく見える主星の光の変化を利用する」という共通点があります。トランジット法では惑星の直径が大きければ大きいほど主星の明るさが変わり、視線速度法では惑星の質量が大きければ大きいほど主星のスペクトルが変わるので、惑星を見つけやすくなります。

さらに言えば、主星の光が変化する周期が短ければ短いほど、すなわち惑星の公転周期が短ければ短いほど、惑星の存在に気づきやすくなるという特徴があります。それゆえに、恒星の近くを短い周期で公転する巨大な惑星であるホットジュピターは見つかりやすく、木星のように恒星から遠く離れた長い公転周期の惑星は見つかりにくい、という偏りが生じやすいのです。

「はやぶさ2」が捉えたわずか0.5%の減光

こうした太陽系外惑星検出の偏りを解消するため、近年では超小型衛星を用いて一つの恒星を長期間継続して観測する手法が注目されています。ただ、小さな衛星には小さな観測装置しか搭載できないデメリットがあります。これまでは、NASA(アメリカ航空宇宙局)の超小型衛星「ASTERIA(アステリア)」に搭載された口径60mmのカメラによる「かに座55番星e」のトランジット観測が、最小口径の成功例でした。

より小さな観測機器で、どこまで高精度な観測が可能なのかを実証するために、研究チームは「はやぶさ2」のONC-Tに注目。既知のホットジュピターである「WASP-189 b」と「MASCARA-1 b」を対象に、2年間にわたって合計14回のトランジット観測を実施しました。

研究チームによると、各トランジットで約21時間の連続観測を行い、取得した合計約1万枚の画像を解析した結果、トランジットで生じた約0.5%というわずかな主星の減光を捉えることに成功しました。検出の確からしさを示す信号対雑音比(※2)は、WASP-189 bで40、MASCARA-1 bで16という高い値が得られています。

※2…観測信号の強さをノイズの大きさで割った指標、高いほど信号が明瞭であることを意味する。S/N比。

また、ONC-Tと比べて約7倍の口径を持つNASAの系外惑星探査衛星「TESS(テス)」の観測データと比較したところ、トランジット時刻を約2分の精度で決定できたことや、減光率から求めた惑星と恒星のサイズ比率も約0.2%の精度で算出できたことが確認されました。

さらに、ONC-Tで検出したMASCARA-1 bの公転周期と、過去の研究で報告された公転周期が一致しない可能性も明らかになったといいます。このズレには他の惑星の重力が影響している可能性があるといい、理由の解明には今後の継続的な観測が待たれます。

左:トランジット法の概要。惑星が横切る時の恒星の明るさの変化を利用する。右:「はやぶさ2」に搭載されたONC-T(Credit: ISAS, 湯本航生)
【▲ 左:トランジット法の概要。惑星が横切る時の恒星の明るさの変化を利用する。右:「はやぶさ2」に搭載されたONC-T(Credit: ISAS, 湯本航生)】
「はやぶさ2」のONC-Tで観測したWASP-189(左)と、WASP-189の明るさの変化を示したグラフ(右)(Credit: ISAS, 湯本航生)】
【▲ 「はやぶさ2」のONC-Tで観測したWASP-189(左)と、WASP-189の明るさの変化を示したグラフ(右)(Credit: ISAS, 湯本航生)】
「はやぶさ2」のONC-Tで観測したWASP-189 b(左)およびMASCARA-1 b(右)のすべてのトランジットの観測結果を重ね合わせた図。TESSのデータとよく一致していることがわかる(Credit: ISAS, 湯本航生)】
【▲ 「はやぶさ2」のONC-Tで観測したWASP-189 b(左)およびMASCARA-1 b(右)のすべてのトランジットの観測結果を重ね合わせた図。TESSのデータとよく一致していることがわかる(Credit: ISAS, 湯本航生)】

超小型衛星による新たな惑星探査の幕開け

「はやぶさ2」は2014年12月の打ち上げから10年以上が経っており、今回の研究で観測に使用されたONC-Tは宇宙線の影響によるセンサーの劣化が進んでいます。研究チームは、そのような条件下であっても、口径15mmという小さなカメラが太陽系外惑星を精度良く観測できる性能を持つことが証明されたことの意義は大きいと述べています。

今後は同程度の小型カメラを搭載した超小型衛星を多数運用し、長期間の観測を行うことで、これまで見逃されていた長周期の木星型惑星の発見につながることが期待されています。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典