「ベテルギウス」を描いた想像図

ベテルギウスの想像図(Credit: eso)

【解説】爆発間近なのか?赤色超巨星ベテルギウスに迫る(※文末にベテルギウスに関するYoutube番組の紹介があります。)

オリオン座の肩に位置する「ベテルギウス(betelgeuse)」は、夜空で約10番目に明るい星で、日本では冬の夜空で肉眼で観察することができます。この天体は非常に大きな赤色超巨星で、半径は太陽の750倍程度。それは例えば地球や火星の軌道さえもすっぽりと覆ってしまうほどの大きさです。

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オリオン座とベテルギウス

夜空に浮かぶオリオン座とベテルギウス (Credit: TheStarmon is licensed under CC BY 3.0. 一部改変。)

ベテルギウスは非常に重く、核融合反応が猛烈な速度で進んでいる

通常、恒星は自分自身の強力な重力を受けており、それを中心コアの核融合による光の圧力によって支えています。そのため、仮に核融合が止まってしまうと支える力がなくなってしまうので、恒星は潰れてしまうとされています。

ベテルギウスのような星は太陽に比べてとても重さが大きいため、中心の重力が非常に強大です。そのため核融合反応が猛烈な速度で進み、中心コアの水素が素早くヘリウムに変化してしまいます。核融合反応が進んでいくと、中心コアがヘリウムを主体とした成分になっていきますが、そうなると今度はコアの周りの外層にいる水素が核融合反応を起こします。それによって、外層に膨大な熱エネルギーが注入されるので、外層の物質が外へと膨張、放出されていきます。

外へと膨張した結果、星はとても大きい赤色超巨星という段階へと進化していきます。そして中心コア付近の水素を燃焼しきってしまうと、代わりに中心コアのヘリウムを燃焼して自らの熱を保つようになります。このヘリウムも燃焼しきってしまうと、炭素などの重い元素を燃焼していきますが、最終的に自重を支えきれなくなり、最後には潰れてしまうと考えられています。

その結果、大量の物質が中心にあつまり、超新星爆発がおこると考えられています。

1987年に地球から4万パーセク程度離れた場所で爆発した超新星SN 1987A. ベテルギウスはこの数十倍-100倍近くに位置する

1987年に地球から4万パーセク程度離れた場所で爆発した超新星SN 1987A. ベテルギウスはこの数十倍-100倍近くに位置する。(Credit: “Supernova 1987A” by NASA Goddard Photo and Video is licensed under CC BY 2.0)

では、ベテルギウスはいつ爆発するのでしょうか?

爆発の段階を知るには、中心のコアの状態を診断する必要がありますが、観測できるのは赤色超巨星の冷たくて大きい比較的外層部のみです。ですので、天文学者達は外層の状態を精密に測定することで、中心内部の状態を推測しようと試みています。

ベテルギウスは爆発をすると満月ほどの明るさになると考えられています。

ベテルギウスは爆発をすると満月ほどの明るさになると考えられています。(Credit: “Moon Over Hattie Hill” by BlueRidgeKitties is licensed under CC BY-NC-SA 2.0)

ベテルギウス、突然暗くなる⁉︎

ベテルギウスは脈動変光星と呼ばれ、時間と共に明るさが変化していることが知られています。実は、2019年後半から今年の2月をピークにベテルギウスがこれまでにない程暗くなったため、一部ではこれは中心コアの核融合が終了しエネルギー源がなくなっていった前触れ、つまり超新星爆発の前触れなのでは議論されました。その後2020年再び増光しましたが、まだその動向に注目が集まっています。

関連:ベテルギウスの減光がついにストップ。増光の兆しを見せる。

約2年間分のベテルギウスの明るさの変化。2019年10月くらいから2020年2月まで急激に減光し、これが超新星爆発の前触れではないかと一部で議論されました。AAVSOウェブサイトの「Light Curve Generator」にて作成(Credit: AAVSO)。一部改変。

約2年間分のベテルギウスの明るさの変化。2019年10月くらいから2020年2月まで急激に減光し、これが超新星爆発の前触れではないかと一部で議論されました。AAVSOウェブサイトの「Light Curve Generator」にて作成。※一部改変(Credit: AAVSO)

ベテルギウス表面のイメージング

上の光度変化は、星全体の明るさを表したものですが、太陽のように星自体をイメージングすることができたのならば、減光の原因、例えば超新星爆発に関係があるのか?等を探れるかもしれません。ベテルギウスは数百パーセクと比較的近いながら、非常に大きな半径をもつため、Adaptive Optics (補償光学)などの技術を用いることで、星の表面が直接撮像されています。

2020年2月14日、その最新画像がヨーロッパ南天天文台 (ESO)より公開されました。画像を見てわかるように、2019年12月段階の、減光の最中のベテルギウス表面には右半分にもやのようなものがかかっていることがわかります。

2019年1月 (左) と2019年12月 (右)に観測されたベテルギウスの画像

2019年1月 (左) と2019年12月 (右)に観測されたベテルギウスの画像(Credit: ESO/M. Montargès et al.)

関連:減光し続けるベテルギウスの最新画像が公開。2月下旬から増光に転じる様子

爆発は関係ない。ベテルギウスは塵による減光?

減光の原因は一体なんなのでしょうか?

一つの説は、塵によって減光したというものです。特に、Andrea Dupree氏(ハーバード・スミソニアン天体物理学センター)らの研究グループは、2019年から2020年に起きた減光が、減光直前にベテルギウス表面から射出された塵の塊によってもたらされたものである可能性があると指摘しています。この塵の射出のタイミングは、420日のベテルギウスの脈動周期から予測される星の膨張のタイミングとよく一致しているとしています。

関連:ベテルギウス減光の続報、やはり塵が原因? ハッブル宇宙望遠鏡を使った研究成果

ベテルギウスの表面から塵が放出され、それがベテルギウス自身を覆うイメージ図

ベテルギウスの表面から塵が放出され、それがベテルギウス自身を覆うイメージ図(Credit: NASA, ESA, and E. Wheatley (STScI))

塵ではなく、黒点による減光?

また、Thavisha Dharmawardena氏(マックス・プランク天文学研究所)らの研究グループは減光が塵ではなく、ベテルギウス表面の黒点が原因であると指摘しました。研究グループは地上電波望遠鏡を用いて、ベテルギウスの電波における強度変動を解析しました。特に、2019年の減光時に電波においても20%程度の減光があることをつきとめました。仮に塵が原因であるとすると、20%程度もの減光を起こすとは考えにくいため、研究グループはベテルギウス表面に巨大な黒点が出来たとするシナリオが妥当であると指摘しています。

関連:ベテルギウスの減光は表面に生じた巨大な黒点が原因だった?

ただ、依然として減光の原因が塵なのか黒点が原因なのかは、研究者内で議論がなされておりさらなる観測データによる実証が必要となるでしょう。

関連:ベテルギウスの減光の謎に迫る。原因は黒点?それとも塵?

巨大な黒点が生じたベテルギウスを描いた想像図

巨大な黒点が生じたベテルギウスを描いた想像図(Credit: MPIA graphics department)

ベテルギウスは連星の合体の結果できた?

ベテルギウスが昔どのような遍歴を辿ってきたのかも、その性質を知る上で重要です。
Manos Chatzopoulos氏(ルイジアナ州立大学)らの研究チームは、ベテルギウスはとても高速回転していること、また高速で銀河系内を移動していることを、過去どこかの時点で伴星と合体したとする説で説明できる可能性を指摘しました。

関連:ベテルギウス、連星が合体して誕生した星なのかもしれない

結局ベテルギウスはいつ爆発する?

仮に2020年の減光が爆発に関係ないとすると、いつベテルギウスは爆発をするのでしょうか?

Meridith Joyce氏 (オーストラリア国立大学) らの研究グループは、ベテルギウスの脈動パターンを理論的に精密に考察し、その結果ベテルギウスはまだ中心コアのヘリウムを燃焼している段階にあると議論しています。これは超新星爆発までにまだ10万年くらいは時間がかかることを意味しています。なので、まだ爆発は当分先なのかもしれません。

関連:「爆発にはまだ遠い」ベテルギウスは従来予想よりも小さくて近い星?

 

また、12月4日の21時からアストロコネクトさんのYoutube番組であるオンラインプラネタリウムにて『冬だ!!(冬の星座)全員集合!?/いつ爆発するの!?ベテルギウス!!』が放送されます。オンラインプラネタリウムは毎週金曜日の21時から放送されますのでぜひ御覧ください!
※アーカイブにて過去の放送も閲覧可能です。

文/sorae編集部

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