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恒星間彗星「3I/ATLAS」は太陽よりも古い天体? 同位体比の分析結果が示唆

太陽系の外からやってくる未知の天体は、形成された環境の貴重な手がかりを私たちにもたらしてくれます。エディンバラ大学のCyrielle Opitom氏が率いる研究チームは、ESO(ヨーロッパ南天天文台)のVLT(超大型望遠鏡)を用いた観測により、恒星間天体「3I/ATLAS」の炭素および窒素の同位体比を詳細に測定した研究成果を発表しました。

3I/ATLASは、観測史上初めて同位体比を測定できた恒星間天体として注目を集めています。別の研究チームによる重水素などの測定結果に続き、今回の研究では初めて窒素の同位体比などが詳細に測定されました。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「Nature Astronomy」に掲載されています。

同位体比は天体の形成環境を読み解く鍵

恒星間天体とは、太陽以外の恒星の周囲で形成され、何らかの理由で星間空間に放出された後、太陽系に偶然入り込んできた天体を指します。

2025年7月に発見された3I/ATLASは、2017年に発見された「1I/‘Oumuamua(オウムアムア)」、2019年に発見された「2I/Borisov(ボリソフ彗星)」に次いで確認された、3番目の恒星間天体です。

2025年10月末に太陽へ最接近し、現在は太陽から遠ざかりつつある3I/ATLASは極端な双曲線軌道を描いており、二度と太陽系に戻ってくることはありません。

ESOのVLT(超大型望遠鏡)で2026年1月18日に観測した恒星間天体「3I/ATLAS」。3I/ATLASの動きにあわせて観測したため、背景の星々は線状に写っている(Credit: ESO/O. Hainaut)
【▲ ESOのVLT(超大型望遠鏡)で2026年1月18日に観測した恒星間天体「3I/ATLAS」。3I/ATLASの動きにあわせて観測したため、背景の星々は線状に写っている(Credit: ESO/O. Hainaut)】

天文学において「同位体比」の測定は、物質の起源や進化を辿る上で非常に強力な指標となります。そもそも同位体とは、同じ元素の中でも、原子核に含まれる中性子の数が異なる原子のことです。たとえば炭素の場合、陽子と中性子を6個ずつ持つ「12C(炭素12)」と、中性子が1つだけ多い「13C(炭素13)」などが存在します。

同位体比とは、こうした同位体どうしの相対的な割合を指します。同位体比は天体が形成された環境の温度や放射線の状態から影響を受けるため、惑星系の形成条件を探る大きな手がかりになるのです。

ESOによると、ガスを検出できなかった1I/‘Oumuamuaでは化学組成の調査そのものが困難であり、暗かった2I/Borisovでは同位体比の測定には至らなかったものの、3I/ATLASは過去の2例と比べて十分明るかったため、同位体比の分析も可能となりました。

太陽系の彗星とは異なる3I/ATLASの同位体比

研究チームはVLTの紫外線・可視光線エシェル分光器「UVES」を使用し、彗星である3I/ATLASから放出されたガスに含まれるシアン化物分子について、炭素(12Cと13C)および窒素(14Nと15N)の同位体比を測定しました。

その結果、炭素同位体比(12C/13C)は約151、窒素同位体比(14N/15N)は約363という値が示されました。太陽系の彗星における平均的な値は12C/13Cが約90、14N/15Nが約150であり、3I/ATLASの同位体比は非常に高いことがわかります。

VLTの分光器「UVES」を使って2025年12月に取得した恒星間天体「3I/ATLAS」のスペクトル(電磁波の波長ごとの強さの分布)の一部。炭素の同位体である12Cと13Cのスペクトル特性を示している(Credit: ESO/C. Opitom, J. Manfroid et al. Comet image: O. Hainaut)
【▲ VLTの分光器「UVES」を使って2025年12月に取得した恒星間天体「3I/ATLAS」のスペクトル(電磁波の波長ごとの強さの分布)の一部。炭素の同位体である12Cと13Cのスペクトル特性を示している(Credit: ESO/C. Opitom, J. Manfroid et al. Comet image: O. Hainaut)】

研究チームによると、この高い同位体比は、3I/ATLASが「金属量」の少ない星を取り囲む原始惑星系円盤の外縁部で形成された可能性を示唆しています。天文学における金属とは、水素やヘリウムよりも重い元素の総称です。

これらの元素は恒星内部の核融合反応や超新星爆発などを通じて時間をかけて生成され、その量が増えていったと考えられています。つまり、金属量が少ない星は、それだけ古い時代に誕生した星ということになります。

そのような星がまだ若かった頃に円盤内で形成されたとすれば、3I/ATLASは誕生から約46億年が経ったとされる太陽よりもずっと昔に形成されたことになるのです。ESOは別の研究チーム(※)の報告を引用する形で、3I/ATLASの年齢が太陽の2倍以上にもなる可能性に言及しています。

※…NASA(アメリカ航空宇宙局)ゴダード宇宙飛行センター/アメリカ・カトリック大学のMartin Cordiner氏ら。

惑星系形成の歴史を紐解く手がかりに

今回の成果は、太陽系が誕生するよりもずっと前に形成された別の惑星系の組成を探るという貴重な機会につながります。Opitom氏は「恒星間天体の分野はまだ新しく、発見のたびに新たな驚きがある」と述べています。

現在ESOが建設を進めている次世代の大型望遠鏡「ELT」が観測を開始すれば、3I/ATLASよりも暗い恒星間天体に対して同様の測定が可能になると期待されています。恒星間天体の発見数は今後増加すると見込まれており、将来の観測を通じて惑星系の形成をより深く理解するための手がかりが得られることでしょう。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典