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時間差で超新星爆発を起こした連星系の残骸か NASA天文衛星「フェルミ」の観測成果

スタンフォード大学のMiltiadis Michailidis氏らの研究チームは、超新星残骸「IC 443」および隣接する「G189.6+3.3」が、かつて連星をなしていた2つの恒星がそれぞれ超新星爆発を起こしたことで形成されたことを突き止めたとする研究成果を発表しました。

この成果は、NASA(アメリカ航空宇宙局)のガンマ線観測衛星「フェルミ(Fermi)」をはじめとする、複数の望遠鏡による多波長観測データにもとづくものです。研究チームの成果はアメリカ天文学会の第248回会合で発表され、論文が学術誌「Nature Communications」に掲載される予定です。

クラゲ星雲の陰に隠れていた暗い超新星残骸

研究の対象となったIC 443とG189.6+3.3は、ふたご座の方向、地球から約6000光年先にある超新星残骸です。

超新星残骸は、太陽の8倍以上の質量を持つ大質量星が超新星爆発を起こした後に観測される天体です。爆発した星の周囲に広がるガスを衝撃波が加熱することで、可視光線、電波、X線といった電磁波が放射されていると考えられています。

NASAによれば、その形から「クラゲ星雲」とも呼ばれるIC 443と、それに隠れるようなG189.6+3.3は、X線で観測すると部分的ながら実際に重なり合っているように見えるといいます。

多波長で観測した超新星残骸「IC 443」(右)と、もうひとつの超新星残骸「G189.6+3.3」のフィラメント構造(左上)(Credit: NASA Goddard Space Flight Center and M. Michailidis et al. 2026; optical: DSS; infrared: NASA/WISE/JPL-Caltech/UCLA; ultraviolet: NASA/Swift)
【▲ 多波長で観測した超新星残骸「IC 443」(右)と、もうひとつの超新星残骸「G189.6+3.3」のフィラメント構造(左上)(Credit: NASA Goddard Space Flight Center and M. Michailidis et al. 2026; optical: DSS; infrared: NASA/WISE/JPL-Caltech/UCLA; ultraviolet: NASA/Swift)】

ガンマ線観測が紐解く「時間差の超新星爆発」

研究チームはフェルミ衛星の16年分におよぶ観測データを分析した結果、暗いG189.6+3.3の北部でガンマ線の放射を発見しました。このガンマ線は、超新星の強力な衝撃波によって光速近くにまで加速された陽子が、星間ガスと衝突することで生み出されたものです。

また、2つの超新星残骸の間には、明るいガスのフィラメント(ひも状の構造)が存在しています。新たな観測データから、G189.6+3.3の衝撃波がこの高密度なガスに衝突して、劇的に減速していることが明らかになりました。

CNRS(フランス国立科学研究センター)のMarianne Lemoine-Goumard氏によると、これは両方の残骸が同じガス雲と相互作用しており、地球から共通の距離にあることを示す重要な証拠だといいます。

研究チームの推測によれば、2つの超新星残骸を残した恒星はもともと連星をなしており、どちらも太陽の20倍以上の質量がありました。まず最初に片方の星が爆発し、その衝撃によってもう片方の星が宇宙空間へと弾き飛ばされます。生き残ったほうの星は、爆発から2万年〜10万年ほど宇宙空間を移動した後、同じように超新星爆発を起こしたとみられています。

それぞれの残骸の年齢は推定値に幅がありますが、先に爆発したほうの残骸とみられるG189.6+3.3は2万年~11万年、後から爆発したほうの残骸とみられるIC 443は8000年~9000年と推定されています。

超新星残骸「IC 443」と「G189.6+3.3」の形成プロセス。1)大質量星のペア(A星とB星)からなる連星が誕生する。2)A星が超新星爆発を起こしてB星が弾き飛ばされる。3)2万年~10万年後、弾き飛ばされたB星も超新星爆発を起こす。4)A星の残骸であるG189.6+3.3と、B星の残骸であるIC 443という2つの超新星残骸が、同じ領域で観測されるようになる(Credit: M. Michailidis et al. 2026)
【▲ 超新星残骸「IC 443」と「G189.6+3.3」の形成プロセス。1)大質量星のペア(A星とB星)からなる連星が誕生する。2)A星が超新星爆発を起こしてB星が弾き飛ばされる。3)2万年~10万年後、弾き飛ばされたB星も超新星爆発を起こす。4)A星の残骸であるG189.6+3.3と、B星の残骸であるIC 443という2つの超新星残骸が、同じ領域で観測されるようになる(Credit: M. Michailidis et al. 2026)】

連星系の進化の謎に迫る重要な手がかりに

Michailidis氏によると、連星をなしていた両方の星が超新星爆発を起こし、両方の残骸が確認されたのは今回が初めての事例だといいます。

NASAでフェルミ衛星のプロジェクトサイエンティストを務めるElizabeth Hays氏は、「輝く2つの大質量星の残骸を、数千年かけて共に進化した強力なペアとして結びつけることができるようになった」と述べています。

大質量星の多くは連星系または多重星系で誕生すると考えられています。今回発見されたIC 443とG189.6+3.3の複合体は、巨大な連星がどのように進化し、物質を交換し、爆発に至るのかを解明する上で、極めて希少で強力な研究対象になることが期待されます。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典