
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のZhenlin Zhu氏やMark Morris氏を中心とする研究チームは、NASA(アメリカ航空宇宙局)のチャンドラX線観測衛星などのデータを利用し、天の川銀河の中心付近で新たな超新星残骸の候補を発見したとする研究成果を発表しました。研究チームの成果をまとめた論文は、学術誌「The Astrophysical Journal」に掲載されています。
いて座C領域のガスの泡と過去の観測

天の川銀河の中心領域は、強力な磁場が存在するとともに、大質量星や高密度の分子雲が高速で周回する、非常に特異な環境です。
今回、研究チームが注目したのは、地球から約2万6000光年離れた星形成領域「いて座C(Sagittarius C)」です。いて座Cには、若い大質量星の周囲にHII(エイチツー)領域(※)が存在しています。
※…輝線星雲の一種で、生まれたばかりの若い大質量星の放射する紫外線によって電離した水素ガスが放つ赤色の光(Hα線)が観測される領域。電離水素領域とも。
NASAによると、退役した成層圏赤外線天文台「SOFIA」が以前に行ったいて座Cの観測にて、領域の周囲にある膨張するガスの殻が確認されていました。天文学者はこのデータから、いて座Cで超新星爆発が起きたのではないかという手がかりを得ていたといいます。
複数の波長が描き出すX線の「塊」
研究チームは、チャンドラおよびESA(ヨーロッパ宇宙機関)のX線宇宙望遠鏡「XMM-Newton」が取得したX線データと、南アフリカの電波望遠鏡「MeerKAT」で取得した電波観測データ、さらにはハワイの掃天観測プロジェクト「Pan-STARRS」の光学観測データを使って、いて座Cの解析を行いました。
その結果、いて座CのHII領域の中に、爆発した大質量星が残した残骸とみられる、塊状のX線放射が埋もれていたことが明らかになりました。研究チームによれば、X線で示されたこの塊が超新星残骸だと仮定した場合、衝撃波の速度は秒速約800kmに達し、観測されているのは爆発から約1700年経った姿だと推定されます。
この“塊”が実際に超新星残骸だと確認された場合、天の川銀河中心の超大質量ブラックホール(超巨大ブラックホール)である「いて座A*(エースター)」に最も近い場所で発見された超新星残骸のひとつになるといいます。

起源の解明に向けた今後の観測への期待
その一方で、NASAによると、超新星残骸の可能性があるこの“塊”には、超新星爆発で撒き散らされるはずの主要な元素(鉄、酸素、ケイ素など)が増加していることを示す明確な兆候は見られませんでした。
ひとつの可能性として、爆発した星の破片が、すでに周囲のガスと混ざり合ってしまった可能性が指摘されています。また、可能性は低いものの、この塊状の構造が超新星爆発ではなく、領域内の大質量星の集団から発生した高温のガスだとする別のシナリオも検討されています。
発見された“塊”の謎を解明するため、研究チームはさらなる高精度の観測に期待を寄せています。研究チームによれば、2026年の初めにJAXA(宇宙航空研究開発機構)のX線分光撮像衛星「XRISM(クリズム)」によっていて座Cの観測が実施されました。XRISMの軟X線分光装置「Resolve(リゾルブ)」で得た高分解能スペクトルデータから、ガスの運動に関する重要な情報が明らかになる見込みだといい、謎めいた“塊”の起源が特定されることに期待が寄せられています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- NASA - NASA’s Chandra Discovers Possible Supernova Remnant in Galactic Center
- CXC - NASA's Chandra Discovers Possible Supernova Remnant in Galactic Center
- Zhu et al. - Diffuse X-Ray Emission in the Sagittarius C Complex (The Astrophysical Journal)
























