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かつて火星に存在した水の新たな証拠を発見 NASA火星探査車「スピリット」のデータから

2011年に運用を終えたNASA(アメリカ航空宇宙局)の火星探査車「スピリット(Spirit)」。そのデータが、いまなお現役の研究材料であり続けていることを示す成果が発表されました。

エディス・コーワン大学(ECU)の研究担当副学長を務めるPaulo de Souza教授は、スピリットの観測データを再解析した結果、かつての火星に水が存在することを示す鉱物が新たに検出されたとする研究成果を発表しました。de Souza氏の成果をまとめた論文はSpringer Nature発行の学術誌「Interactions」に掲載されています。

NASAの火星探査車「スピリット」のセルフィー。2005年8月に撮影された数百枚の画像を使って作成したもの(Credit: NASA/JPL-Caltech/Cornell)
【▲ NASAの火星探査車「スピリット」のセルフィー。2005年8月に撮影された数百枚の画像を使って作成したもの(Credit: NASA/JPL-Caltech/Cornell)】

双子探査車のミッションと立ちはだかる「量」の壁

2003年6月に打ち上げられたスピリットは、2004年1月に火星のグセフ・クレーター(Gusev Crater)へ着陸。三週間後には双子の探査車「オポチュニティ(Opportunity)」が火星の反対側にあたるメリディアニ平原に着陸し、火星にかつて存在したとされる水の証拠を探る「マーズ・エクスプロレーション・ローバー(MER)」ミッションの下で探査活動を行いました。

当初想定されていたミッション期間はわずか90日間でしたが、スピリットは約6年、オポチュニティは実に15年近くにわたって稼働し続けました。

NASAの火星探査車「スピリット」の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)
【▲ NASAの火星探査車「スピリット」の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

スピリットとオポチュニティには、鉄を含む鉱物の種類や状態を調べる小型メスバウアー分光計「MIMOS II」が搭載されていました。メスバウアー分光計は、試料に照射したガンマ線の吸収度合いから読み取ることで、試料に含まれる物質を調べることができる装置です。

鉄を含む鉱物の中には、ヘマタイト(赤鉄鉱)のように水と長期間触れ合うことで初めて生成されるものがあります。試料の中にどの鉄鉱物がどれだけ存在するかを突き止めることは、かつて水が存在したかどうかを判断する手がかりになるのです。

しかし、探査車が使用できる時間、電力、メモリーが限られていたことから、MIMOS IIによる1回あたりの観測時間は短く、統計的な精度(データのばらつきの少なさ)が不足しがちでした。そのため、土壌全体の5%に満たないような微量な鉄鉱物相を検出するのは困難だったといいます。

残されたデータが示す「水の惑星」だった証拠

de Souza氏は、スピリットがグセフ・クレーター内の32箇所で取得していた合計150時間余りに達するMIMOS IIの観測データに着目し、分析を行いました。

その結果、カンラン石や輝石といった火成岩を構成する鉱物や、微細な鉱物粒子に加えて、岩石と水が反応することで生成される結晶質のヘマタイトや、水による変質作用を受けたマグネタイト(磁鉄鉱)の存在が確認されました。de Souza氏は、ごく普通の土壌にこれほど広くヘマタイトが行き渡っていた事実こそ、かつての火星表面がかなり広範囲にわたって水に覆われていた可能性を示す手がかりだと述べています。

なお、スピリットが着陸したのと同じ2004年に発表された研究では、グセフ・クレーターの土壌に結晶質ヘマタイトは存在しないと報告されていました。この点についてde Souza氏は、先行研究の再検討を促す必要があると指摘しています。

今後についてde Souza氏は、オポチュニティが取得したデータとの比較や、将来の火星サンプルリターンミッションを通じた検証に期待を寄せています。スピリットの運用終了から15年後に示された今回の成果は、観測データの再分析によって重要な発見がもたらされる可能性を改めて示すものだと言えそうです。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典