
NOIRLab(アメリカ国立光学・赤外天文学研究所)は2026年7月31日付で、チリのセロ・トロロ汎米天文台(CTIO)にあるビクター・M・ブランコ4m望遠鏡の観測計画を人工知能(AI)が立案し、天候などの変化に応じてリアルタイムで調整する取り組みが行われたことを発表しました。
今回の取り組みは、NOIRLabを所管するNSF(アメリカ国立科学財団)とサイモンズ財団が共同で設立した研究機関「SkAI」(スカイ、AI Institute for the Skyの略)に所属する研究者らによってもたらされました。NOIRLabによると、アメリカの国立施設において、AIが観測の計画から管理までを担ったのは今回が初めてだといいます。

天文学者を悩ませる「観測時間の配分」という課題
天体望遠鏡を使った観測では、その夜の天候や月明かりの強さ、大気の状態などを見極めながら、どの天体にどれだけの時間を割り当てるかを判断する必要があります。NOIRLabによると、限られた観測時間からできるだけ多くの科学的成果を引き出すために、綱渡りのような判断が求められる作業だといいます。
大型望遠鏡は国内外の研究者が共有する貴重な資産であり、観測の順番が回ってくるまで数か月かかることもめずらしくありません。適切な方向へ望遠鏡を向けることができなければ、画像がぼやけたり月明かりで白飛びしたりすることで遠方の暗い天体の観測が難しくなりますし、やり直す機会はまた数か月先になってしまう場合もあるといいます。
過去の観測データを学習して人間に匹敵する判断力を獲得
SkAIの研究者は、天文学者が長年の経験から培ってきた判断のルールをAIに教え込むのではなく、過去の観測データの学習を通じて望遠鏡の向きを自ら判断できるように育てました。学習の基礎となったのは、宇宙の膨張が加速している理由の解明を目指して2013年から2019年にかけて実施された国際プロジェクト「ダークエネルギーサーベイ」の観測記録です。
AIによる観測運用は、ブランコ4m望遠鏡の観測装置「DECam(ダークエネルギーカメラ)」を使って2026年春から夏にかけて2回にわたって実施されており、いずれも成功を収めたといいます。今回の取り組みを共同で主導したシカゴ大学のAlex Drlica-Wagner氏は、「現時点で、このAIの性能は人間の能力に匹敵する水準にあると言えます」と述べています。

次世代望遠鏡の膨大なデータ処理にも期待
SkAIの研究者が次に目指しているのは、単にAIが人間の判断を模倣するだけでなく、それを上回る観測戦略を打ち出せるようにすることだといいます。
今回の取り組みを共同で主導したノースウェスタン大学のAravindan Vijayaraghavan氏は、「AIや強化学習の発想が、“変化する条件”と“限られた観測時間”の両立を常に求められる望遠鏡のスケジューリングに取り入れられていることに刺激を受けています。天文学の観測プロジェクトのためにこうした知的なスケジューリングシステムを開発することは、機械学習における興味深い新たな課題にもつながっており、このプロジェクトを通じてそれらに挑み続けることに期待しています」と述べています。
また、Drlica-Wagner氏は、日常的な運用業務を自動化できれば、天文学者は科学的により興味深い課題の検討や新たな発見そのものに、これまで以上の時間を割けるようになると見通しを示しています。
NOIRLabは、先日10年間のサーベイ観測プロジェクトが正式始動したベラ・ルービン天文台からもたらされるこれまでにない規模の観測データを念頭に、限られた時間の中で観測の効率化と科学的価値の最大化を図る上で、今回実証されたような自動スケジューリング技術が助けになることが期待されていると述べています。急速に進歩するAI技術は、天文学の発展にも大きく寄与することになりそうです。
【▲ AIが立案したスケジュールの下で観測を行うビクター・M・ブランコ4m望遠鏡の様子(動画)(Credit: CTIO/NOIRLab/NSF/AURA/G. Damke)】
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- NOIRLab - First AI-driven Telescope Goes Stargazing
- Northwestern Now - First AI-driven telescope goes stargazing
























