
(引用元:ESA/Hubble)
「火星の天気は、今日も涼しく晴れ。朝方の低いもやは次第に晴れ、午後はおおむね晴れるものの、上空には雲が見られるでしょう。金星の予報は、高温で曇り。硫酸のにわか雨が続くでしょう。スモッグが減り、大気の状態はわずかに改善しています」
1995年3月21日、NASAは天気予報を思わせる書き出しで、ハッブル宇宙望遠鏡による火星と金星の観測成果を紹介しました。惑星の気候を追うハッブルの役割を「惑星間気象衛星」に例えたものです。
当時、地上から火星の気象を詳しく観測できるのは、火星が地球へ接近する時期に限られていました。一方、ハッブルはより長い期間にわたって季節変化を追跡でき、地上からでは難しい長期的な変化を調べることができました。

塵と雲が左右する火星の気候
ハッブルが捉えた火星の大気は、1976年に到着した火星探査機「バイキング1号・2号(Viking 1 and Viking 2)」の観測時に比べて低温で澄んでおり、水蒸気も少ない状態でした。研究者は、この違いをダストストーム(大気中に大量の塵を巻き上げる嵐)が少なかったことと関連付けました。バイキングによる探査の初年度には大規模なダストストームが2回発生し、大気中に長く漂う微細な塵が太陽光を吸収して大気を温めていたためです。バイキングが見た状態が、火星の平常時を代表するとは限らなかったのです。
当時のハッブルの観測では、水蒸気が凍ってできた氷の雲も確認されました。研究者は、こうした雲が火星の北極と南極の間で水を運ぶ役割を担っている可能性を指摘していました。
金星の火山活動を探る
金星では、上層大気に含まれる二酸化硫黄が観測の手がかりになりました。1995年の発表では、二酸化硫黄の減少は、1970年代後半に起きたと推測される噴火の影響が弱まりつつあるためだと解釈されていました。
その後、金星探査機「ビーナス・エクスプレス(Venus Express)」も二酸化硫黄の大きな変動を観測しました。2012年に発表された研究では、この変動について、噴火だけでなく大気循環の変化でも説明できる可能性が示されました。
さらに2023年には、金星探査機「マゼラン(Magellan)」のレーダー画像を再解析した研究が発表されました。金星のマアト山(Maat Mons)にある火山噴出孔が、1991年の8か月間に拡大し、形を変えていたのです。これは、1991年に金星で火山活動が起きていたことを示す直接的な証拠となりました。
火星の気候も金星の火山活動も、限られた時期の観測だけでは全体像を捉えられません。長期的な観測と過去のデータの再解析によって、新たな事実が少しずつ明らかになってきました。
編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- ESA/Hubble - Hubble monitors weather on neighbouring planets (opo9516i)
- HubbleSite - Hubble Monitors Weather on Neighboring Planets
- NASA JPL - NASA's Magellan Data Reveals Volcanic Activity on Venus
- ESA - Have Venusian volcanoes been caught in the act?










