広告

NASA(アメリカ航空宇宙局)は2026年10月29日付で、惑星探査機「ボイジャー1号(Voyager 1)」の省電力化策「ビッグバン(the Big Bang)」を2026年9月上旬に完了したと発表しました。電力が細り続けるなか、残された科学装置による観測をより長く続けるための取り組みです。

NASAの惑星探査機「ボイジャー」のイメージイラスト
【▲ NASAの惑星探査機「ボイジャー」のイメージイラスト(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

電力不足の中でも稼働し続ける科学装置

ボイジャー1号は2012年8月に、太陽圏(太陽が作り出す粒子と磁場の泡)の外側にある星間空間へ到達しました。星間空間に到達した探査機は、2026年11月時点でボイジャー1号と同型機の「ボイジャー2号(Voyager 2)」だけです。

2機のボイジャーには電源としてプルトニウムの崩壊熱を電気に変換する「放射性同位体熱電気転換器」(Radioisotope Thermoelectric Generator: RTG、原子力電池の一種)が搭載されていますが、NASAによればその発電量は毎年約4ワットずつ低下しています。

電力不足に対応しつつ、星間空間の貴重な観測データを可能な限り集めるため、NASAはボイジャーに搭載されている科学装置を1基ずつ停止させてきました。現在稼働している科学装置はボイジャー1号が2基、ボイジャー2号は3基まで減っています(※)。

※…2機共通で稼働しているのは「MAG(磁力計)」と「PWS(プラズマ波サブシステム)」の2基で、ボイジャー2号ではさらに「CRS(宇宙線サブシステム)」が稼働中。

保温に関わる機器を一度に切り替え

NASAによると、運用チームは2026年9月上旬に、ボイジャー1号の3つの機器をオフにして消費電力がより小さな3つの機器へ切り替える「ビッグバン」に成功しました。ビッグバンという愛称は、機器を一度にまとめて切り替えることに由来します。

切り替えられた機器はいずれも極寒の宇宙空間で機体を動作可能な温度に保つのに役立つもので、3つすべてを同時に切り替えなければ、消費電力を減らしつつ機体の熱を適切に行き渡らせることはできなかったといいます。もしもビッグバンを実施しなければ、ボイジャー1号では早ければ2027年夏にもさらに1基の科学装置を停止しなければならない状況だったといいます。

なお、ボイジャー2号ではすでにビッグバンが実施されていて、2026年末頃に迫っていた次の科学装置停止のタイミングを少なくとも1年先送りする見通しが立ったと発表されています。

一時的な通信途絶を経て「1光日」の距離へ

ただ、気にかかる情報もあわせて明らかにされています。NASAは2026年10月18日から19日にかけてボイジャー1号との交信を予定していたものの、電波を受信できないトラブルが発生。20日には再び受信に成功したといいますが、今回の通信途絶の原因は10月29日時点でまだ調査中とされています。

NASAによると、ボイジャー1号はアメリカ東部標準時2026年11月18日5時16分(日本時間同日19時16分)に、地球からの距離が光の速度で1日かかる「1光日」に、人工物として初めて到達する見込みです。打ち上げから今年で49年を迎えたボイジャー1号は、これまでどの探査機も到達したことがない遥かな星間空間から、もうしばらくは観測データを届け続けてくれそうです。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

関連記事

参考文献・出典