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こちらは、ESO(ヨーロッパ南天天文台)が運営するチリのパラナル天文台の近くで撮影された渦巻銀河「NGC 3227」とその周辺の様子。しし座の方向、地球から約7700万光年先にあります。

渦巻銀河「NGC 3227」(中央右)に向かうように筋状に輝く4つのレーザーガイド星(中央左)(Credit: ESO/A. Berdeu)
【▲ 渦巻銀河「NGC 3227」(中央右)に向かうように筋状に輝く4つのレーザーガイド星(中央左)(Credit: ESO/A. Berdeu)】

画像に向かって右側に並ぶ2つの銀河のうち、右上がNGC 3227で、左下は楕円銀河「NGC 3226」です。NGC 3227は中心にある超大質量(超巨大)ブラックホールが周囲のガスを引き込むことで中心部が明るく輝く「活動銀河」のひとつとして知られています。

とはいえ、この画像でまず目を引くのは、画像中央のやや左下で黄色く輝く4本の光の筋ではないでしょうか。

レーザーで作り出した“人工の星”

ESOによると、この4本の筋は、パラナル天文台の「VLT(超大型望遠鏡)」を構成する4基の大型望遠鏡から1本ずつ照射されたレーザーが作り出した“人工の星”です。

画像の左下をよく見ると、かすかに4本の線が写っています。これは上空へ向かうレーザービームそのものです。ビームは空気に散乱されながら上昇し、大気が薄くなる上空ほど暗くなりますが、地上から約90kmの高さにあるナトリウム原子の多い層(ナトリウム層)に達すると、レーザーに励起されたナトリウム原子が明るい光を放ちます。

上空のナトリウム層では、ナトリウム原子が厚さ5~10kmほどにわたって広がっています。レーザーを放つ望遠鏡から見れば人工の星は点状に見えますが、ナトリウム層に厚みがあるために、望遠鏡から2.5km離れた場所で撮影したこの画像では人工の星が筋として写っているのです。

補償光学用のレーザー発振器が4基すべての大型望遠鏡に搭載されたESOのVLT(超大型望遠鏡)(Credit: A. Berdeu/ESO)
【▲ 補償光学用のレーザー発振器が4基すべての大型望遠鏡に搭載されたESOのVLT(超大型望遠鏡)(Credit: A. Berdeu/ESO)】

大気のゆらぎによるぼやけを打ち消す「補償光学」

上空に作り出された人工の星は、「補償光学(Adaptive Optics: AO)」と呼ばれる技術と関係があります。

地球には大気があるので、地上から天体を観測しようとすると、大気のゆらぎの影響を受けて像がぼやけてしまいます。このゆらぎの影響を打ち消すために、VLTや国立天文台ハワイ観測所の「すばる望遠鏡」といった地上の大型望遠鏡では、望遠鏡の反射鏡をリアルタイムに変形させることでゆらぎの影響を打ち消し、天体を鮮明に捉えています。この手法を支えているのが補償光学です。

大気のゆらぎを測定するための目安となるのは明るい星です。ただ、観測したい天体の近くで、常に都合良く明るい星が利用できるとは限りません。そこで、ナトリウム層に向けてレーザーを照射し、人工の星を作り出すことで、ゆらぎの測定を行っているのです。

冒頭の画像はESOから2026年11月2日付で公開されています。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典