
地球とほぼ同じ大きさの金星。けれど表面は約470℃・約92気圧、二酸化炭素(CO₂)の濃い大気と硫酸の雲に包まれ、鉛が溶けるほどの灼熱世界です。金星はしばしば、温室効果が暴走した“温暖化の果て”の姿として語られてきました(近年は「最初から極端に乾いていた」可能性も指摘)。本記事では2025年11月時点の金星の主要トピックを、まとめています。
金星のいま(おさらい)

大気の主成分はCO₂約96.5%、窒素約3.5%。温室効果が非常に強く働いています。上空では、惑星をぐるりと取り巻く非常に速い風(いわゆるスーパーローテーション)が吹き、雲の頂(上の層)では時速300km台に達します。
地表温度は約465℃、地表圧力は約92気圧(海の深さ約900mに相当)。一方、高度50〜60kmの雲の上の層は、温度・気圧が地球に近い範囲になります。
「火山はいまも噴いている?」マゼラン再解析が相次いで“活動中”を示唆

1990年代に金星を観測した金星探査機「マゼラン」のデータを、近年の手法で見直す研究が進んでいます。
2023年:マアト山(Maat Mons)の火口形状が数か月のうちに変化していたと報告。溶岩が流れ出た可能性を示す有力な証拠とされました。
2024年:シフ山(Sif Mons)やニオベ平原(Niobe Planitia)でも新しい溶岩流の痕跡が指摘。「金星は今も地質的に活動している」との見方が強まっています。
「海はあったのか?」新しい研究は“とても乾いた内部”を示唆

「古代の金星には、海があったのか」
2024年末の研究では、金星大気を維持する火山ガスの成分バランスから逆算し、火山ガス中の水がごく少ない(最大でも数%程度)と推定されました。金星の内部は非常に乾いており、そもそも海を作れなかった可能性が高いと結論づけています。
一方で、過去に温暖で海があったとする研究も残っており、決着は今後の直接観測に委ねられます。
「雲のなかの生命?」リン化水素(PH₃)論争は継続中
2020年にリン化水素が見つかったとの報告が話題になりましたが、その後の再解析では検出に否定的な結果が多数。別の物質を取り違えた可能性の指摘もあります。
一方で存在を支持する再解析も続いており、結論はまだ出ていません。最終判断にはより確実な測定が必要です。
日本の「あかつき」 2025年9月に運用終了を正式決定

金星探査機「あかつき」は、2024年4月の姿勢系トラブルに伴う通信断以降、回復作業を続けましたが、2025年9月18日に運用終了が正式に決定しました。
上空の速い風(スーパーローテーション)や夜側大気の流れなど、多くの成果を残しています。
これからの金星探査
- NASA「DAVINCI」(2030年目標)
大気圏に小型の測定機を落とし、雲の上から地表近くまでの成分・“元素の重さの違い(同位体)”を直接測定。ついでにフライバイ観測も実施。 - NASA「VERITAS」(2031年目標)
高分解能レーダーと分光観測で、地形・地質・熱の歴史を全球マップ化。地表の“いま”と“過去”を高精度で描き出します。 - ESA「EnVision」(2031年目標)
レーダーと分光で、複雑に起伏した地形(テッセラ)や地殻と大気の相互作用を詳しく調べます。 - ISRO「Venus Orbiter Mission(Shukrayaan-1)」(2028年予定)
インドの金星周回機。2025年10月には国内のサイエンス会合が行われ、準備が進んでいます。
金星は地球の未来の姿?
いま地球では、人類の文明活動による温暖化が進行しています。地球とはまったく無関係に思える金星の過酷な環境も、温室効果が進行した結果もたらされる未来の地球の姿を予想する上で、自然が用意してくれた貴重な実験室のようなものです。
金星について深く知ることは、地球と金星が「よく似た双子」にならないためにも重要なことなのです。
編集/sorae編集部
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