コーネル大学のLisa Kalteneggerさんを筆頭とする研究チームは、どうして地球と金星の環境がこれほど異なるのか、岩石惑星が恒星の近くで水と生命を維持できる限界の距離はどれくらいなのかを理解する上で重要な知見をもたらす可能性がある太陽系外惑星についての研究成果を発表しました。

2022年に「エリダヌス座」の方向約105光年先で発見された系外惑星「LP 890-9c」は、もう1つの系外惑星「LP 890-9b」とともに、赤色矮星「LP 890-9」を公転しています。LP 890-9cの直径は地球の約1.4倍、公転周期は約8.5日で、公転軌道は主星のハビタブルゾーン(天体の表面に液体の水が安定して存在し得る領域)の内縁付近にあるとされています。

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【▲ 太陽系外惑星「LP 890-9c」で起こり得る“高温の地球”から“乾いた金星”への進化を示したイメージ図(Credit: Carl Sagan Institute/R. Payne)】
【▲ 太陽系外惑星「LP 890-9c」で起こり得る“高温の地球”から“乾いた金星”への進化を示したイメージ図(Credit: Carl Sagan Institute/R. Payne)】

研究チームによると、ハビタブルゾーンの内縁付近に存在する岩石惑星がどれくらいの期間に渡って水を保持できるのかは、その期間を推定するモデルによって結果が異なるといいます。そこで研究チームは、惑星のサイズや質量、化学組成、表面の温度と圧力、大気の厚さや雲の量といった性質を考慮して、LP 890-9cに存在し得る大気の様々な進化段階に対応した7つのモデルを作成してシミュレーションを実施しました。

その結果、地球より暑くてもまだ海が残っている、海が蒸発して水蒸気の大気に覆われている、あるいは金星のような状態になっている、といった進化段階ごとの環境の違いが、LP 890-9cの透過スペクトルに顕著に現れることがわかったといいます。このことから、LP 890-9cはハビタブルゾーンの内縁付近における岩石惑星の進化を研究する貴重な機会を与えてくれると期待されています。

透過スペクトルとは、観測者から見て系外惑星が主星の手前を横切る「トランジット」を起こした時に、系外惑星の大気を通過してから届いた主星の光のスペクトルを指します(スペクトルは電磁波の波長ごとの強さのこと)。透過スペクトルには系外惑星の大気中に存在する物質の痕跡(吸収線)が残ります。天体のスペクトルを得る分光観測を行い、主星から直接届いた光のスペクトルと透過スペクトルを比較することで、系外惑星の大気中にどのような物質が存在するのかを調べることができるのです。

関連:ウェッブ宇宙望遠鏡がスーパーアースの観測で水蒸気を検出 大気は存在するのか?(2023年5月18日)

研究チームによれば、LP 890-9cに大気が存在するのか、存在するとしたらどのような状態なのかは「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」による複数回のトランジットの観測で明らかになる可能性があるということです。研究チームの成果をまとめた論文はMonthly Notices of the Royal Astronomical Society: Lettersに掲載されています。

Kalteneggerさんは「暑くても液体の水と生命を支え得る条件が存在する場合、ハビタブルゾーンの内縁は生命で満ちている可能性があります。金星のような状態に達している場合、水は私たちの予想よりも早く失われる可能性があります」とコメントしています。

 

Source

  • Image Credit: Carl Sagan Institute/R. Payne
  • Cornell University - Exoplanet may reveal secrets about the edge of habitability
  • Kaltenegger et al. - Hot Earth or Young Venus? A nearby transiting rocky planet mystery (MNRAS Letters)

文/sorae編集部

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