NASA(アメリカ航空宇宙局)は2026年10月29日付で、ハッブル宇宙望遠鏡の延命を模索する取り組みの一環として、軌道上昇などを担うミッションに関する民間企業への情報提供依頼(RFI)を発行しました。

軌道上昇のタイムリミットは2032年?
1990年に打ち上げられて以来、ハッブル宇宙望遠鏡の高度は希薄な大気との抵抗によって少しずつ低下しています。NASAによると、軌道を維持するための推進装置が搭載されていないハッブル宇宙望遠鏡は、このままでは2033年~2034年頃に大気圏へ再突入する可能性が高いとみられています。
ここ数年の間にジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡やナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡が打ち上げられていますが、紫外線も捉えられるハッブル宇宙望遠鏡に代わる宇宙望遠鏡としてはNASAが検討中の「ハビタブル・ワールド・オブザバトリー(Habitable Worlds Observatory: HWO)」が候補とされており、2040年頃までは登場が見込まれていません。
そこでNASAは、ハッブル宇宙望遠鏡の高度を上昇させたり、整備を行ったりするためのミッションを模索しています。仮に軌道上昇を実施するとなれば、6年後の2032年までに実施する必要があるとNASAは見込んでいます。
ハッブル宇宙望遠鏡の延命を模索するNASA
ハッブル宇宙望遠鏡はスペースシャトルで打ち上げられた後も、1993年から2009年にかけて5回の整備を受けてきました。この時にスペースシャトルを使って高度を上昇させたこともあります。ただ、スペースシャトルは2011年に退役したため、ハッブル宇宙望遠鏡はすでに17年にわたってハードウェアの整備や軌道上昇を受けずに過ごしています。
2022年9月には、アメリカのSpaceX(スペースX)社が民間宇宙飛行計画「Polaris Program(ポラリス計画)」と共同で提案したハッブル宇宙望遠鏡の軌道上昇ミッションについて、NASAとSpaceXが実現可能性調査を行うことで合意しました。ただ、長期的な科学的成果が短期的な科学的リスクを上回るかどうかを見極める追加の検討が必要だとの理由で、当面は軌道上昇を進めないとの方針をNASAは2024年6月に示しています。
ちなみに、Polaris Programは現在NASAの長官を務めるJared Isaacman氏が手掛けてきたプログラムです。Isaacman氏はこれまでに世界初の民間船外活動を含む2回の有人宇宙飛行でコマンダーを務めた人物でもあります。
断念されたスウィフトの軌道上昇
NASAが科学衛星の軌道上昇を試みるのはハッブル宇宙望遠鏡が初めてではありません。2025年9月にはハッブルと同じく推進装置を持たないガンマ線観測衛星「ニール・ゲーレルス・スウィフト」の軌道上昇について、NASAはアメリカのKatalyst Space(カタリスト・スペース)社と契約を締結し、スウィフトの軌道上昇を目指しました。
しかし、2026年7月に打ち上げられたKatalyst Spaceの無人宇宙機「LINK」は姿勢制御に問題が発生し、同年8月には軌道上昇を断念することが発表されています。スウィフトは2026年10月に科学観測が終了しており、間もなく大気圏へ再突入すると見込まれています。

今回のRFIで求められているのは?
今回のRFIでは、ハッブル宇宙望遠鏡の軌道を少なくとも高度600kmまで引き上げること、性能を高めて寿命を延長する整備を行うこと、そして制御された大気圏再突入で処分すること、以上の3項目に関するミッションの情報提供が2026年11月30日を期限に求められています。
RFIは契約を約束するものではありませんが、大きな科学的成果をあげてきたハッブル宇宙望遠鏡の延命は、民間の活力をNASAがどのように評価するかにかかっているかもしれません。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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