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キュリオシティが火星で発見した大きな有機分子 非生物学的な生成プロセスでは説明困難?

NASA(アメリカ航空宇宙局)は2026年2月6日付で、NASAの火星探査車「Curiosity(キュリオシティ)」が火星の岩石サンプルから発見した有機化合物について、生物活動が関与しない非生物学的なプロセスだけではその存在量を十分に説明できないとする新しい研究成果を紹介しました。

今回の成果は、古代の火星において生命の構成要素となり得る複雑な有機物が大量に存在していた可能性を示唆しており、過去の生命の存在を支持する重要な手がかりとなります。これらの有機分子の真の起源を解明するために、将来の火星サンプルリターンミッションなどによる詳細な分析が待たれます。

NASAの火星探査車「Curiosity(キュリオシティ)」が2018年6月15日に砂嵐が発生中のゲール・クレーターで撮影したセルフィー(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)
【▲ NASAの火星探査車「Curiosity(キュリオシティ)」が2018年6月15日に砂嵐が発生中のゲール・クレーターで撮影したセルフィー(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)】

泥岩のサンプルから見つかった長鎖アルカン

Curiosityが2013年5月にゲール・クレーターの泥岩から採取したサンプル「Cumberland(カンバーランド)」の分析データをもとに、長鎖アルカンと呼ばれる大きな有機分子(デカン、ウンデカン、ドデカン)が発見されたことが、2025年3月に報告されました。

これらの有機分子は、泥岩のなかに保存されていた脂肪酸(生命の構成要素のひとつ)の分解物である可能性が指摘されています。Cumberlandからの長鎖アルカン発見について、詳しくは以下の過去記事をご参照ください。

地球上において、脂肪酸は主に生命活動によって作り出されますが、水と鉱物が相互作用する熱水環境などの地質学的なプロセスで生成されることもあります。そのため、発見された有機分子がかつて火星に存在したかもしれない生命によって作られたものなのかどうかを、Curiosityのデータだけで判断することはできませんでした。

そこで今回、NASAゴダード宇宙飛行センターのAlexander A. Pavlovさんを筆頭とする研究チームは、生命が関与しない非生物学的なプロセスによって、発見された有機分子の蓄積量を説明できるかどうかを検証しました。研究チームの成果をまとめた論文は2026年2月4日付で学術誌「Astrobiology」に掲載されています。

放射線による破壊を考慮して「元の量」を推定

研究チームが注目したのは、宇宙空間から降り注ぐ放射線の影響です。研究チームによれば、Cumberlandが採取された泥岩は約8000万年という長期間にわたって、火星の表面で強力な宇宙放射線に晒されてきたといいます。検出された有機分子はごく微量(推定数十ppb、1ppbは10億分の1)でしたが、岩石にもともと含まれていた有機分子の量はもっと多かったことが考えられます。

実験室での放射線照射実験や数学的モデルを使用して、研究チームは8000万年前まで遡ったシミュレーションを実施し、放射線で破壊される前の有機物の量を推定しました。その結果、放射線に晒され始める前のCumberlandには、現在の測定量の数千倍以上に相当する120〜7700ppm(1ppmは100万分の1)という高濃度の長鎖アルカン(あるいはその元となる脂肪酸)が含まれていた可能性が示されました。

NASAの火星探査車「Curiosity(キュリオシティ)」が2013年5月にサンプル「Cumberland(カンバーランド)」を採取した時にできた穴(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)
【▲ NASAの火星探査車「Curiosity(キュリオシティ)」が2013年5月にサンプル「Cumberland(カンバーランド)」を採取した時にできた穴(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)】

従来想定されてきた非生物学的なプロセスでは説明困難

研究チームによれば、炭素を豊富に含む隕石や惑星間塵(宇宙空間を漂う微小な塵)の落下、古代の火星大気で生じた光化学反応によるヘイズ(もや)からの堆積といった、これまで想定されてきた非生物学的なプロセスだけでは、大きな有機分子がこれほど大量に泥岩に含まれていた理由を完全に説明することは困難だといいます。

論文のなかで研究チームは、これらの有機分子の起源を説明する仮説として、非生物学的なプロセスである「別の場所の熱水環境(高温の水と岩石が反応する場所)で合成された有機物が運ばれてきた可能性」と、生物学的なプロセスである「古代の火星に存在した生命によって蓄積された可能性」の2つを提示した上で、生命由来の仮説を立てることは合理的だと述べています。

起源の解明に向けて期待される将来のミッション

火星における生命の存在について結論を出すためには、有機分子が火星に似た条件下でどのように分解されていくのかをさらに詳しく調べる必要があります。今後の火星探査や、現在計画が進められている地球へのサンプルリターンによって、これらの有機分子の真の起源が解き明かされることが期待されます。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典