
天王星や海王星の内部には、固体と液体の中間のような「超イオン状態」となった物質があると考えられています。超イオン状態は電気や熱をよく通すため、惑星内部の熱循環や磁場の形成などに影響を与えると考えられていますが、その詳しい性質には未だに不明な点もあります。
カーネギー研究所のCong Liu氏とR. E. Cohen氏、および南京大学のJian Sun氏の研究チームは、炭素と水素の混合物を高温高圧下に置くと、炭素イオンの螺旋の中に水素イオンの螺旋が入っている、内外の二重螺旋構造の「擬1次元超イオン状態※(Quasi-1D Superionic State)」が出現する可能性があることを計算により導きました。擬1次元超イオン状態では、熱や電気は特定の方向にのみ流れやすくなるため、惑星内部の性質に影響を与える可能性があります。
※…日本語訳は筆者による。
超イオン状態: 天王星や海王星の中にある不思議な物質

太陽系の外側を公転する天王星と海王星は、水素とヘリウムを主体とする大気の下に、水・メタン・アンモニアなどを主体とする分厚い層があると考えられています。このような物質(-170℃付近では固体となる揮発成分)は、惑星科学の用語で「氷」と呼ばれています。
天王星や海王星の大気の下は高い温度と圧力に晒されているため、氷成分は普通とは異なる性質を示します。例えば水はH2O分子ではなく酸素イオンと水素イオンに分離し、整然と並んだ酸素イオンと自由に動き回る水素イオンという、固体と液体の中間のような状態になると考えられています。これは「超イオン状態」と呼ばれています。
超イオン状態になると、物質は熱や電気を良く通すようになります。これに伴い、熱の移動や磁場の発生など、惑星全体の性質や環境に大きく関わります。このため、どのような環境条件で超イオン状態が発生するのかを正確に理解するための研究が進められています。ただし、超イオン状態が出現するほどの高温高圧環境は、実験室で再現することが困難か、あるいは不可能であるため、計算によって物質のふるまいを予測します。
移動方向に制約のある「擬1次元超イオン状態」の存在を予測

カーネギー研究所のCong Liu氏とR. E. Cohen氏、および南京大学のJian Sun氏の研究チームは、惑星内部の高温高圧下で水素と炭素の組み合わせがどうなるのか、基本的な科学原理のみでの計算と、機械学習に基づく計算の双方で予測を行いました。計算された環境は、4000~6000℃までの温度と500万~3000万気圧までの圧力です。
その結果、4000℃付近で予測された炭素と水素の超イオン状態は、とても興味深い構造をとることが判明しました。炭素イオンと水素イオンは、それぞれがお互いに結合し、螺旋を描くことが予想されたのです。これは、上から見ると六角形に見える炭素イオンの螺旋の柱の中に、やはり螺旋状の水素イオンが収まっている構造となります。

内外に螺旋が並んだ二重構造は見た目にも面白いものですが、この構造には物理学的な意味もあります。
通常、超イオン状態が予測される物質では、水素イオンは3次元のどの方向にも制限なく自由に動くことができます。しかし今回予測された超イオン状態では、水素イオンが螺旋構造をしており、螺旋が進む直線方向には自由に動くことができますが、螺旋が巻いている円の方向にはほとんど動くことができません。水素イオンの動ける方向が実質的に1次元に制限されていることから、3氏はこの構造を「擬1次元超イオン状態」と呼んでいます。
今回予測された擬1次元超イオン状態は、固体と普通の超イオン状態の間に挟まる中間的な性質を持つ物質の形態であると考えられます。また、圧力が高いほど、擬1次元超イオン状態が存在する温度範囲が広くなり、普通の超イオン状態よりも出現しやすくなります。
不思議な物質は不思議な性質を与える?
もし、擬1次元超イオン状態が天王星や海王星の内部に存在するならば、その存在は惑星内部の正確なモデル化に影響を与えます。水素イオンが特定の一方向にしか進めないため、その方向には熱や電気がよく運ばれるものの、異なる方向へは運ばれにくいからです。これにより、惑星内部のエネルギーの循環の仕方や、磁場の形成のメカニズムなど、惑星内部の解釈が変わる可能性もあります。
興味深いことに、海王星の内部には、擬1次元超イオン状態が現れる温度と圧力の環境が存在するという予測があります。このため、擬1次元超イオン状態が、海王星の性質に影響を与えているかもしれません。
一方で、今回は単純化のために炭素と水素のみで計算を行っています。実際の天王星や海王星には酸素や窒素なども含まれているため、これらの元素が性質を変える可能性もあります。実際の影響については、今後の研究で詳細を検討する必要があります。
ひとことコメント
疑似的に1次元的な性質を持つことが推定される超イオン状態。変わった性質の理由になっているのかもしれないね。(筆者)
文/彩恵りり 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- Cong Liu, R. E. Cohen & Jian Sun. “Prediction of thermally driven quasi-1D superionic states in carbon hydride under giant planetary conditions”.(Nature Communications)
- Ronald Cohen. “The depths of Neptune and Uranus may be “superionic””.(Carnegie Science)

























