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球状星団「オメガ・ケンタウリ」で初めて恒星質量ブラックホールを発見

ユタ大学のMatthew Whitaker氏を筆頭とする研究チームは、球状星団「オメガ・ケンタウリ(オメガ星団)」において初めて恒星質量ブラックホールを発見したとする研究成果を発表しました。

この成果は、天文学者を長年悩ませてきた「星団内に潜む見えないブラックホール」の存在を裏付ける、重要な一歩となります。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載されています。

“あるはずなのに見つからない” 理論と観測のギャップ

NASAによると、天文学の理論モデルによれば、約1000万個の恒星が重力で結びついているオメガ・ケンタウリには、大質量星が超新星爆発を起こす際に形成される恒星質量ブラックホール(※質量は太陽の数倍~100倍程度)が約1万個存在すると予測されてきました。

しかし、過去に行われた視線速度法(※天体が観測者に対して近づいたり遠ざかったりする速度を測る手法)や、ブラックホールに落下する物質が放つX線や電波を用いた観測では、確かな証拠を得ることができていませんでした。

オメガ・ケンタウリでは、これまでにハッブル宇宙望遠鏡の観測によって中間質量ブラックホール(※質量は太陽の100倍程度~数万倍)が存在する証拠は示されていたものの、より軽い恒星質量ブラックホールは見つかっていなかったのです。

20年以上にわたるデータから導き出されたブラックホールの存在

そこで研究チームは、「アストロメトリ(位置天文学)」と呼ばれる手法を用いて恒星質量ブラックホールを探しました。アストロメトリとは、長期間にわたる観測を通じて、天球上における天体の位置の変化を精密に測定する手法です。

研究チームはこの手法を適用するために、以前の研究で使用されたデータに加えて、2002年~2023年の20年以上にわたるハッブル宇宙望遠鏡のアーカイブデータと、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による最新のデータを組み合わせて分析を行いました。

ハッブル(Hubble)宇宙望遠鏡が観測した球状星団「オメガ・ケンタウリ」(背景)と、分析の対象になった主系列星(赤い丸印)周辺の拡大図(右上)(Credit: ESA/Hubble & NASA, M. Häberle (MPIA))
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡が観測した球状星団「オメガ・ケンタウリ」(背景)と、分析の対象になった主系列星(赤い丸印)周辺の拡大図(右上)(Credit: ESA/Hubble & NASA, M. Häberle (MPIA))】

論文によると、研究チームはオメガ・ケンタウリにある主系列星(※中心部で水素の核融合反応が安定して進行している恒星)のひとつに着目し、その公転軌道を詳細に分析しました。この主系列星は未知の暗い天体を公転していることが過去の研究を通じて知られていましたが、暗い天体の正体は中性子星である可能性が示唆されていました。

ところが、研究チームがこの主系列星の質量(約0.78太陽質量)をもとに、ハッブル宇宙望遠鏡とウェッブ宇宙望遠鏡のデータを用いて軌道を再計算したところ、未知の天体の質量は約4.46太陽質量と算出されました。中性子星の質量は太陽の2倍~2.5倍程度が上限とされていることから、研究チームはこの天体が恒星質量ブラックホールだと結論付けました。

注目すべきは、「oMEGACat BH-2」と名付けられたこのブラックホールの質量が、予想よりも小さかったことです。

論文の共著者であるユタ大学のAnil Seth氏は、オメガ・ケンタウリのように金属量(※水素とヘリウム以外の元素の量)の少ない環境で形成されるブラックホールの質量はもっと大きいと予想されていたことから、oMEGACat BH-2は今後の理論モデル構築に重要なデータを提供することになると述べています。

また、oMEGACat BH-2と主系列星からなるこの連星系の公転周期は約94年であり、NASAによれば既知のブラックホール連星(※ブラックホールを含む連星)としては最も長い周期だということです。

重力波の理解や今後の観測へ向けて

研究チームの分析によれば、この連星系は最初からペアとして誕生したのではなく、星団の密集した環境下で別々に生まれた星が後から出会ったことで動的に形成された可能性が高いと考えられています。密集する星団内の環境で周囲の星々と相互作用することで、連星系をなすブラックホールと主系列星はオメガ・ケンタウリの年齢(約120億年)よりもずっと短い10億年以内に引き離されると予測されています。

Seth氏は、球状星団におけるブラックホールの形成プロセスや連星の動的形成を理解することは、ブラックホールどうしの合体のような重力波をともなう現象を解釈する上で不可欠だと強調しています。

なお、NASAは広い視野で高解像度の観測が可能なナンシー・グレース・ローマン(Nancy Grace Roman)宇宙望遠鏡の打ち上げを2026年8月末に予定しています。ローマン宇宙望遠鏡による高い頻度での観測を通じて、オメガ・ケンタウリや他の球状星団に潜むブラックホールのさらなる発見が期待されています。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典