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25光年先の太陽系外惑星「GJ 3378 b」ハビタブルゾーンを公転する岩石惑星の可能性高まる

地球から約25光年先の太陽系外惑星「GJ 3378 b」が、これまで考えられていたよりも地球に似た環境を持つ可能性が浮上しました。

カリフォルニア大学アーバイン校のPaul Robertson氏を筆頭とする研究チームによると、最新の高精度な観測によってGJ 3378 bの質量と公転周期が大幅に修正されたことで、生命を育み得る有望な候補のひとつとして期待が高まっているといいます。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「The Astrophysical Journal」に掲載されています。

スーパーアースに分類される太陽系外惑星の想像図(Credit: NASA)
【▲ スーパーアースに分類される太陽系外惑星の想像図(Credit: NASA)】

厚い大気に覆われていると考えられていた惑星

GJ 3378 bは、きりん座の方向にある赤色矮星「GJ 3378」を公転している太陽系外惑星です。質量は地球よりも大きくて海王星よりも小さく、ハビタブルゾーン(※)に位置するとみられることから、地球外生命探査のターゲットのひとつとして注目されてきました。

※…大気を持つ惑星の表面に液体の水が存在し得る、恒星から一定の範囲にある領域。童話「3びきのくま」にちなんで「ゴルディロックスゾーン」とも呼ばれる。

テキサス大学オースティン校マクドナルド天文台の発表によれば、2024年に初めて惑星候補として報告された当初、GJ 3378 bは質量が地球の約5倍、公転周期が約25日であると推定されていました。質量がこれほど大きな惑星は分厚いガスの大気を保持しやすく、地表は大気圧が強い過酷な環境である可能性が高いと考えられていました。

最新の観測で質量は地球の約2.3倍に下方修正

研究チームは今回、マクドナルド天文台のホビー・エバリー望遠鏡(HET)に搭載された赤外線分光器「HPF(Habitable-zone Planet Finder)」や、キットピーク国立天文台のWIYN望遠鏡に搭載された分光器「NEID」などを用いて、GJ 3378 bの主星であるGJ 3378を詳細に観測しました。赤色矮星のGJ 3378は表面温度が低く、主に赤外線を放射するため、HPFのように赤外線観測に特化した高精度な機器が威力を発揮します。

論文によると、これらの観測装置によって、公転する惑星の重力によって生じる恒星のわずかな動きが極めて高い精度で捉えられました。データを分析した結果、GJ 3378 bの公転周期は約21.45日へと短くなり、視線速度法(後述)で算出される最小質量(惑星の質量の理論上の下限値)も地球の約2.3倍へと下方修正されました。最小質量がこれまでの半分以下になったことで、GJ 3378 bは分厚いガスに覆われた惑星ではなく、地球よりも質量の大きな岩石惑星、いわゆるスーパーアースである可能性が高まったのです。

大気の有無は? 鍵を握る次世代の望遠鏡

従来の想定よりも地球に似た惑星である可能性が高まったGJ 3378 bですが、直ちに生命の存在に結びつくわけではありません。

研究チームによれば、GJ 3378 bは主星に近いため、恒星からの強いX線や紫外線に長期間さらされています。そのため、強力な放射線によって大気が宇宙空間へ剥ぎ取られるかどうかを左右する境界線、いわゆる「Cosmic Shoreline(宇宙の海岸線)」の上に位置していると推測されています。

GJ 3378 bが現在も大気を保持しているか否かは、今回の研究ではわかっていません。この謎を解明する鍵となるのが、ESO(ヨーロッパ南天天文台)のELTをはじめとする地上の次世代大型望遠鏡や、NASA(アメリカ航空宇宙局)が構想中の「ハビタブル・ワールド・オブザバトリー(HWO)」のような次世代宇宙望遠鏡です。

論文の共著者であるテキサス大学オースティン校のMichael Endl氏は「究極の目標はバイオシグネチャー(生命の兆候)の発見です」と述べており、こうした次世代の手段による将来の直接観測に向けて、太陽系近傍の惑星をリストアップしておくことの重要性を強調しています。

大気を保持しているのか、それとも剥き出しの大地が広がるのか。GJ 3378 bは、“人類は宇宙で孤独な存在なのか”という根源的な問いに答えるための、重要な道標のひとつとなるかもしれません。

参考:太陽系外惑星の観測方法について

太陽系外惑星の観測では「視線速度法(ドップラーシフト法)」および「トランジット法」という2つの手法が主に用いられています。

「視線速度法」とは、太陽系外惑星の公転にともなって円を描くようにわずかに揺さぶられる主星の動きをもとに、惑星を間接的に検出する手法です。

惑星の公転にともなって主星が揺れ動くと、光の色は主星が地球に近付くように動く時は青っぽく、遠ざかるように動く時は赤っぽくといったように、ドップラー効果によって周期的に変化します。こうした主星の色の変化は、天体のスペクトル(電磁波の波長ごとの強さの分布)を得る分光観測を行うことで検出されています。

視線速度法の観測データからは、太陽系外惑星の公転周期や最小質量を求めることができます。

【▲ 参考動画:太陽系外惑星の公転にともなって主星のスペクトルが変化する様子(Credit: ESO/L. Calçada)】

もう一つの「トランジット法」とは、太陽系外惑星が主星の手前を横切る「トランジット(transit)」を起こした際に生じる主星の明るさのわずかな変化をもとに、太陽系外惑星を間接的に検出する手法です。

繰り返し起きるトランジットを観測することで、その周期から惑星の公転周期を知ることができます。トランジット時の主星の光度曲線(時間の経過にあわせて変化する天体の光度を示した曲線)をもとに、惑星の直径や大気の有無といった情報を得ることも可能です。

近年では、トランジットの周期に生じるわずかな変動をもとに、重力を介して相互作用する別の惑星を捜索する手法「トランジットタイミング変動法(TTV法)」も用いられるようになっています。

【▲ 参考動画:太陽系外惑星のトランジットによって恒星の明るさが変化する様子(Credit: ESO/L. Calçada)】

また、太陽系外惑星がトランジットを起こしている時の主星の光には、惑星の大気(存在する場合)を通過してきた光もわずかに含まれています。

惑星の大気を通過してから届いた主星のスペクトルは「透過スペクトル」と呼ばれていて、惑星の大気に含まれる物質が特定の波長の電磁波を吸収したことで生じる暗い線「吸収線」が現れます。透過スペクトルを通常のスペクトルと比較すればどのような吸収線が現れているのかがわかるので、惑星の大気組成を調べることができます。

参考画像:恒星(左)の光を利用して太陽系外惑星(中央下)の大気組成を調べる手法のイメージ図。太陽系外惑星の大気を構成する物質が一部の波長を吸収するため、大気を通過して地球(右)に届いた主星の光のスペクトル(透過スペクトル)を分析することで、惑星の大気組成を調べることができる。また、大気にヘイズ(もや)がある場合は青い光が散乱して、通過した光は少し赤くなる(Credit: ESO/M. Kornmesser)
【▲ 参考画像:恒星(左)の光を利用して太陽系外惑星(中央下)の大気組成を調べる手法のイメージ図。太陽系外惑星の大気を構成する物質が一部の波長を吸収するため、大気を通過して地球(右)に届いた主星の光のスペクトル(透過スペクトル)を分析することで、惑星の大気組成を調べることができる。また、大気にヘイズ(もや)がある場合は青い光が散乱して、通過した光は少し赤くなる(Credit: ESO/M. Kornmesser)】

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典