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がか座β星で3番目の太陽系外惑星を発見 10年以上前から直接観測されていたことも判明

地球から約63光年の距離にある「がか座β(ベータ)星(Beta Pictoris)」は、若い星の周囲でどのように惑星が形成されるのかを知る上で、天文学者たちが注目し続けてきた天体のひとつです。

今回、独立して研究を進めていた2つの研究チームが、がか座β星で3番目となる太陽系外惑星「がか座β星d(Beta Pictoris d)」を発見したとする研究成果を発表しました。各チームの研究成果は、どちらも学術誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載されています。

ESO(ヨーロッパ南天天文台)やNASA(アメリカ航空宇宙局)によると、直接撮像によって3つ以上の惑星が確認された惑星系は、HR 8799系に次いでがか座β星系が観測史上2例目となります。

がか座β星と3つの太陽系外惑星のイメージ図。中央右に描かれているのが今回発見されたがか座β星d(Credit: Illustration: NASA, ESA, CSA, STScI, Ralf Crawford (STScI))
【▲ がか座β星と3つの太陽系外惑星のイメージ図。中央右に描かれているのが今回発見されたがか座β星d(Credit: Illustration: NASA, ESA, CSA, STScI, Ralf Crawford (STScI))】

既知の惑星よりも暗くひっそりと輝く

誕生から約2300万年と若いがか座β星の周囲には、惑星形成時の残骸といえる岩石や氷、それに塵(ダスト)からなる「デブリ円盤」が広がっており、これまでにも「がか座β星b」および「がか座β星c」という2つの巨大惑星が直接撮像されていました。

今回新たに見つかったがか座β星dは、これまでの2つとは少し特徴が異なります。

エディンバラ大学のBen Sutlieff氏を筆頭とする研究チームの推定によれば、がか座β星bとがか座β星cの推定質量はどちらも木星の約8.7倍ですが、今回発見されたがか座β星dの推定質量は木星の約2.4倍であり、これまで地上から直接撮像された太陽系外惑星の中ではかなり軽い惑星です。

一方で、カリフォルニア大学サンディエゴ校のAidan Gibbs氏を筆頭とする研究チームの分析では、がか座β星dの質量は木星の約2〜4倍と推定されています。

ESOのVLT(超大型望遠鏡)が直接観測したがか座β星d(矢印)。中央左の明るい天体は既知のがか座β星bで、★印の位置にあるがか座β星からの光はデータ処理時に除去されている(Credit: ESO/B. Sutlieff, M. Bonse et al.)
【▲ ESOのVLT(超大型望遠鏡)が直接観測したがか座β星d(矢印)。中央左の明るい天体はがか座β星bで、★印の位置にあるがか座β星からの光はデータ処理時に除去されている(Credit: ESO/B. Sutlieff, M. Bonse et al.)】

興味深いのは、その軌道と温度です。公転軌道の半径について、Sutlieff氏らは約26天文単位(※太陽系でいえば天王星と海王星の公転軌道の間に相当)、Gibbs氏らは約30天文単位(※海王星の公転軌道付近に相当)と推定していますが、いずれにしても既知の2つの惑星よりも外側を公転していることになります。

また、表面温度について、Sutlieff氏らは約600ケルビン(約330℃)、Gibbs氏らは約600〜800ケルビン(約330〜530℃)と推定していますが、これは他の太陽系外惑星と比べて相対的に低温です。そのため、がか座β星系で最初に発見されたがか座β星bと比べると100倍も暗く、きわめて微弱な光しか放っていません。

偶然に導かれた10年越しの発見

がか座β星は世界中の天文学者が観測してきた有名な星ですが、どうして今まで3番目の惑星が見つかっていなかったのでしょうか。Sutlieff氏らの論文タイトルを借りれば、10年越しの「かくれんぼ(Hide-and-seek)」だったと言えます。

実は、2つの研究チームは両方とも、既知の惑星であるがか座β星bを調査する目的で観測データを分析していました。今回のがか座β星dの発見は、どちらも偶然の産物だったのです。

2014年12月から2025年12月までの11年間にVLT(超大型望遠鏡)とジェームズ・ウェッブ(James Webb)宇宙望遠鏡で観測したがか座β星周辺の様子。★印の位置にあるがか座β星そのものからの光はデータ処理時に除去されているか、観測時に遮蔽されている。Sutlieff氏らによって、矢印の位置にがか座β星dが写っていたことが確認された(Credit: ESO/B. Sutlieff, M. Bonse et al.)
【▲ 2014年12月から2025年12月までの11年間にVLT(超大型望遠鏡)とジェームズ・ウェッブ(James Webb)宇宙望遠鏡で観測したがか座β星周辺の様子。★印の位置にあるがか座β星そのものからの光はデータ処理時に除去されているか、観測時に遮蔽されている。Sutlieff氏らによって、矢印の位置にがか座β星dが写っていたことが確認された(Credit: ESO/B. Sutlieff, M. Bonse et al.)】

Sutlieff氏らのチームは、ESOが運用するパラナル天文台のVLT(超大型望遠鏡)で取得したデータを分析していたところ、がか座β星bとは異なる微かなシグナルに気がつきました。

そこで、過去11年分のアーカイブデータを徹底的にチェックした結果、主星であるがか座β星や、既知の惑星であるがか座β星bの明るい輝きにまぎれるようにして、がか座β星dは何年にもわたって写り込んでいたことが明らかになったのです。

ジェームズ・ウェッブ(James Webb)宇宙望遠鏡のNIRSpec(近赤外線分光器)のデータから再構成されたがか座β星bとがか座β星d。水色の破線は海王星の公転軌道のサイズを示す(Credit: Image: NASA, ESA, CSA, STScI; Science: Aidan Gibbs (UC San Diego), Jean-Baptiste Ruffio (UC San Diego); Image Processing: Alyssa Pagan (STScI))
【▲ ジェームズ・ウェッブ(James Webb)宇宙望遠鏡のNIRSpec(近赤外線分光器)のデータから再構成されたがか座β星bとがか座β星d。水色の破線は海王星の公転軌道のサイズを示す(Credit: Image: NASA, ESA, CSA, STScI; Science: Aidan Gibbs (UC San Diego), Jean-Baptiste Ruffio (UC San Diego); Image Processing: Alyssa Pagan (STScI))】

一方、Gibbs氏らのチームは、ジェームズ・ウェッブ(James Webb)宇宙望遠鏡の「NIRSpec(近赤外線分光器)」を使ってがか座β星bを調査していた時に、予期せぬシグナルに遭遇しました。

巨大惑星の大気でよく見られる一酸化炭素の存在を示すスペクトル(※電磁波の波長ごとの強さの分布)の特徴を見出したGibbs氏らは、視線速度(※運動する天体における観測者の視線方向に対する速度)の算出を通じてがか座β星と重力で結びついていることを確認するとともに、ウェッブ宇宙望遠鏡の「MIRI(中間赤外線観測装置)」による追加観測の結果、がか座β星dの水蒸気とメタンを検出することに成功しています。

ジェームズ・ウェッブ(James Webb)宇宙望遠鏡のNIRSpec(近赤外線分光器)で観測したがか座β星dのスペクトル。特徴的な一酸化炭素の連続した吸収線が現れており、視線速度の算出を通じてがか座β星と重力で結びついていることも確認された(Credit: Image: NASA, ESA, CSA, STScI, Leah Hustak (STScI); Science: Aidan Gibbs (UC San Diego), Jean-Baptiste Ruffio (UC San Diego), Alexis Bidot (STScI); Image Processing: Alyssa Pagan (STScI))
【▲ ジェームズ・ウェッブ(James Webb)宇宙望遠鏡のNIRSpec(近赤外線分光器)で観測したがか座β星dのスペクトル。特徴的な一酸化炭素の連続した吸収線が現れており、視線速度の算出を通じてがか座β星と重力で結びついていることも確認された(Credit: Image: NASA, ESA, CSA, STScI, Leah Hustak (STScI); Science: Aidan Gibbs (UC San Diego), Jean-Baptiste Ruffio (UC San Diego), Alexis Bidot (STScI); Image Processing: Alyssa Pagan (STScI))】

惑星形成を理解する上で重要な観測対象に

今回の発見の意義は、「がか座β星系で既知の惑星がひとつ増えた」というだけに留まりません。

がか座β星の周囲に広がるデブリ円盤は、星から約30〜50天文単位の位置で、内縁部がくっきり途切れているという特徴があります。この構造は、星から約2.7天文単位および約10天文単位を公転する、既知の2つの惑星による影響だけでは説明できません。

NASAによれば、天文学者は以前から、今回発見されたがか座β星dのような惑星が存在するはずだと予測していたといいます。今回発見が報告されたがか座β星dの質量と公転軌道はデブリ円盤の構造を説明できる可能性があり、円盤の内縁部を削り出した原因である可能性が示唆されています。

ただし、がか座β星dの発見をもって円盤のダイナミクスをすべて説明できると結論づけるのはまだ早く、今後のさらなる観測が必要とされています。がか座β星dよりもさらに外側に、別の惑星が存在する可能性も排除されていません。

【▲ 公転するがか座β星dの位置が11年間で変化する様子を示した動画(英語)(Credit: ESO/B. Sutlieff, M. Bonse et al.)】

同じ環境で生まれた3つの太陽系外惑星を比較できるようになったがか座β星系は、惑星がどのように形成され、大気がどう進化していくのかを解き明かす上で、非常に貴重な観測対象となります。

今後は、ウェッブ宇宙望遠鏡による継続的な観測や、ESOが建設を進めている次世代の大型望遠鏡「ELT」の登場によって、がか座β星系のさらなる秘密が明らかになるかもしれません。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典