63光年先の太陽系外惑星「がか座ベータ星c」の直接観測に成功

ケンブリッジ大学のMathias Nowak氏らの研究グループは、2019年に発見が報告された太陽系外惑星「がか座ベータ星c」の直接観測に成功したとする研究成果を発表しました。

「がか座ベータ星c」は南天の「がか座」(画架座)を構成する約63光年先の「がか座ベータ星」を周回する系外惑星で、質量は木星の約8.2倍とされています。公転軌道の軌道長半径は約2.7天文単位(※)で、ややつぶれた楕円形の軌道(軌道離心率は0.24)を描いているとみられています。

※…1天文単位=約1億5000万km。太陽から地球までの平均距離に由来する

直接観測された2つの系外惑星(がか座ベータ星bとc)、塵の円盤(dust disk)、およびがか座ベータ星の位置(β Pictoris)を示した図。GRAVITYの観測データをもとに作成されたもの(Credit: Axel Quetz / MPIA Graphics Department)

ESO(ヨーロッパ南天天文台)の「超大型望遠鏡(VLT)」に設置されている観測装置「GRAVITY」による観測データをもとに作成された画像を見ると、2008年にVLTによる直接観測によってすでに発見されていた「がか座ベータ星b」(質量は木星の6~15倍、軌道長半径は約9.0天文単位)とともに、塵でできた円盤の内側に「がか座ベータ星c」が捉えられていることがわかります。

GRAVITYはVLTを構成する口径8.2mの望遠鏡4基を組み合わせることで口径130mの望遠鏡に匹敵する空間分解能を実現した観測装置です。研究グループによると「がか座ベータ星b」と「がか座ベータ星c」はどちらも同程度の質量を持つ可能性があるものの、明るさは「がか座ベータ星b」のほうが6倍明るいことが今回の観測で判明したといいます。

「がか座ベータ星c」は、惑星の公転にあわせて主星がわずかにふらつく様子を主星の光の色(波長)の変化を分析することで捉える「視線速度法」(英:radial velocity method、ドップラー法とも)を用いることで間接的に発見された系外惑星です。視線速度法では系外惑星の質量を知ることができますが、直接観測が可能な場合は系外惑星の明るさも調べられるようになります。

研究グループでは、今回の観測成功によって「がか座ベータ星c」は視線速度法による検出と直接観測の両方で確認された初の系外惑星になったとしています。

 

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Image Credit: Axel Quetz / MPIA Graphics Department
Source: MPE
文/松村武宏