地球との潮汐作用により、月の自転と公転は周期が同期した潮汐固定(潮汐ロック)の状態にあります。そのため、地球からはいつも月の海が広がる表側だけが見えていて、月の裏側は地球にいる限り見ることはできません。もしも月の自転周期と公転周期が同期していなかったら、地球からはどのような月が見えるのでしょうか。
アリゾナ州立大学で作成されたこちらの動画は、NASAの月周回衛星「ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)」が撮影した11万枚もの画像をもとに作成された、回転する月の動画。月面の実際の画像から作られたデジタル版の月球儀のようなイメージです。月の自転周期が公転周期と同期していなければ、地球からはこのように月のさまざまな部分を見ることができたはずです。
動画は月の表側から始まりますが、さまざまな大きさの海が広がる見慣れた景色は月の回転とともに見えなくなり、多重のリング構造に囲まれたクレーター「東の海」が赤道の南側に見えてきます。東の海が見えなくなる頃には、地球からは見ることができない月の裏側が広がります。表側とは対照的に明るく標高が高い地域が多い裏側ですが、南側には月面で最も標高が低いとされる地域「南極エイトケン盆地」が周囲よりも暗く見えています。直径およそ2500kmとされる南極エイトケン盆地は、東の海と同様に天体衝突によって形成されたと考えられています。
わずか24秒と短い動画ですが、海が多い表側と高地が多い裏側の違いや、南極エイトケン盆地のスケールなどを感じ取りやすくなっています。この動画はAstronomy Picture of the Day(APOD)に2020年7月19日付で掲載されています。
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文/松村武宏
最終更新日:2023/02/05