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NASA有人月ミッション「アルテミスII」の公開画像から太陽のFコロナの構造を解析した研究成果

東京都市大学の津村耕司准教授と、石垣島天文台室長を務める国立天文台の有松亘講師は、NASA(アメリカ航空宇宙局)の有人月ミッション「Artemis II(アルテミスII)」の最中に撮影された広報用の画像から、太陽の周囲に存在する「Fコロナ」と呼ばれる構造の広がりを明らかにしたとする研究成果を発表しました。両名の研究成果をまとめた論文は学術誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載されています。

月フライバイで宇宙船から観測された「日食」

アメリカの現地時間2026年4月6日に「Artemis II(アルテミスII)」ミッションのOrion(オリオン)宇宙船から撮影された「日食」の様子。太陽の外層大気である太陽コロナや、普段の月の撮影時には暗くて写らないような星々も見えている(Credit: NASA)
【▲ アメリカの現地時間2026年4月6日に「Artemis II(アルテミスII)」ミッションのOrion(オリオン)宇宙船から撮影された「日食」の様子。太陽の外層大気である太陽コロナや、普段の月の撮影時には暗くて写らないような星々も見えている(Credit: NASA)】

こちらは、2026年4月に実施されたArtemis IIミッションにおいて、4名の宇宙飛行士が搭乗した宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」から観測された「日食」の様子です。

Artemis IIではアメリカの現地時間2026年4月6日に、Orion宇宙船が月に最接近するフライバイを行いました。この時、宇宙船は地球から見て月の裏側に回り込んだ後、月によって太陽が隠される日食を1時間近く観測することになりました。冒頭の画像はその際に撮影されたものです。

日食中は、太陽の周囲に広がる外層大気のコロナ(太陽コロナ)を観測することができます。コロナはいくつかの成分に分かれていますが、このうち太陽系内をただよう微細な惑星間塵(惑星間ダスト)に太陽光が散乱されることで生じるものは「Fコロナ」と呼ばれています。Fコロナは非常に暗く、観測するには太陽がすべて隠れて見える皆既日食や、太陽を隠しながら観測できるコロナグラフのような装置が必要です。

市販カメラのJPEG画像から信頼できるデータを抽出

津村氏と有松氏は今回、冒頭に掲載したNASA公開の画像を使って、Fコロナの解析を試みました。

特筆すべきは、解析に用いられた画像が科学観測用の機器で取得されたものではなく、宇宙飛行士が市販のデジタルカメラで撮影した後でNASAが公開した「JPEG画像」だった点です。

通常、JPEG画像はデータサイズの圧縮やガンマ補正などの画像処理が施されているため、精密な科学解析には不向きとされています。しかし両名は、画像に写り込んだ背景の星々を利用して感度の校正を行うことで、この制約を克服し、信頼できる輝度分布を復元することに成功しています。

解析の結果、Fコロナは黄道面(※)に沿った扁平な構造をしていることが確認されました。太陽光を散乱させている塵の分布については、東西方向(黄道面に水平な方向)は従来の観測結果とおおむね一致した一方で、南北方向(黄道面に垂直な方向)は従来の分布モデルによる予想よりも大きく広がっていることが新たに判明したといいます。

※…天球上における太陽の見かけの通り道、または太陽を公転する地球の軌道面。

Artemis II(アルテミスII)ミッションの撮影画像におけるFコロナの広がり(左)と、モデルで計算されたFコロナの広がり(右)を示した画像。モデルよりも南北方向(黄道面に垂直な方向)へ広がっていることがわかる(Credit: 石垣島天文台, Tsumura & Arimatsu, 2026より改変)
【▲ Artemis II(アルテミスII)ミッションの撮影画像におけるFコロナの広がり(左)と、モデルで計算されたFコロナの広がり(右)を示した画像。モデルよりも南北方向(黄道面に垂直な方向)へ広がっていることがわかる(Credit: 石垣島天文台, Tsumura & Arimatsu, 2026より改変)】

宇宙探査と科学観測の新たな可能性

普段は観測しづらいFコロナの構造を明らかにした今回の研究は、太陽の近傍における惑星間塵の分布をより詳細に制約するものであり、太陽系内の物質の起源や進化を理解する上で重要な手がかりとなります。また、専用の観測機器を用いずに取得された一般公開用の画像からでも重要な科学的成果を導き出せることを、実証することにもなりました。

NASAは月の南極域に月面基地を建設する計画を進めており、今後は月の周回軌道を利用した科学ミッションも活発に行われるようになるかもしれません。今回の成果は、今後の宇宙探査活動と天文学の連携における、新たな可能性を示すものとなりました。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典