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超新星「SN 2026gzf」で爆発最初期の閃光を観測 大質量星の最期は単純ではない?

大質量星が超新星爆発を起こして恒星としての生涯を終える時、まるでその瞬間を伝えるかのように、ごく短時間の閃光が最初に放たれるといいます。今回、この閃光を捉えるとともに、超新星爆発の全貌を追跡観測することに成功したとする研究成果が発表されました。観測結果は、大質量星の最期に多様な道筋が存在する可能性を示しています。

ビクター・M・ブランコ4m望遠鏡(セロ・トロロ汎米天文台、チリ)の観測装置「DECam(ダークエネルギーカメラ)」で観測した超新星「SN 2026gzf」(Credit: CTIO/NOIRLab/DOE/NSF/AURA; Image Processing: D. de Martin & M. Zamani (NSF NOIRLab))
【▲ ビクター・M・ブランコ4m望遠鏡(セロ・トロロ汎米天文台、チリ)の観測装置「DECam(ダークエネルギーカメラ)」で観測した超新星「SN 2026gzf」(Credit: CTIO/NOIRLab/DOE/NSF/AURA; Image Processing: D. de Martin & M. Zamani (NSF NOIRLab))】

超新星爆発を告げるX線の閃光を検出

2026年3月21日、中国主導のX線観測衛星「天関(Einstein Probe=アインシュタインプローブ)」が、約5億光年先の銀河から放たれた軟X線の閃光「EP260321a」を検出しました。その1時間後から地上の望遠鏡群が追跡観測を実施した結果、対応する超新星「SN 2026gzf」が発見されています。

星が重力崩壊を起こして爆発する際、内部から広がった衝撃波が星の表面を突き破る瞬間に放たれる最初の光は「ショックブレイクアウト」と呼ばれます。理論上すべての超新星爆発で起こると考えられていますが、継続時間がわずか数秒から数時間と短い現象です。X線での確実な検出例は、2008年に観測された「SN 2008D」以来のことです。

Ic-BL型でもガンマ線バーストを伴わず?

カーネギーメロン大学のBrendan O'Connor氏が率いるチームと、メリーランド大学のJillian Rastinejad氏が率いるチームは、それぞれ独立してSN 2026gzfの多波長観測を実施しました。その結果、両チームともに、SN 2026gzfが水素とヘリウムの外層を失った大質量星に由来する「Ic-BL型」超新星(吸収線の幅が広いIc型超新星)であることを突き止めています。

このタイプの超新星は、しばしばロングガンマ線バースト(ロングGRB)を伴うことで知られています。ロングGRBは、数秒から数分間続くガンマ線バーストです。大質量星の重力崩壊にともなって星の中心部にブラックホールが誕生する際、その周囲の物質の一部が光速に近い速度で放出される際に形成される相対論的なジェットが星の外層を突き破ることで、爆発的なガンマ線放射として観測されると考えられています。

ところが、SN 2026gzfにはその兆候がありませんでした。NASA(アメリカ航空宇宙局)のチャンドラ(Chandra)X線観測衛星と、アメリカ・ニューメキシコ州のVLA(Very Large Array=超大型干渉電波望遠鏡群)による観測では、ジェットが周囲の物質と衝突する際に生じるはずのX線や電波の残光(アフターグロー)が検出されなかったのです。

SN 2026gzfは地球から比較的近い距離で発生したため、既知の仕組みで生じるガンマ線バーストの残光であれば、チャンドラもVLAもほぼ確実に検出できる感度を備えていました。O'Connor氏らは、SN 2026gzfでは星の内部から噴き出したジェットが弱く、星の表面か周囲の物質によって閉じ込められたために、外部まで到達できなかった可能性を指摘しています。

ビクター・M・ブランコ4m望遠鏡(セロ・トロロ汎米天文台、チリ)の観測装置「DECam(ダークエネルギーカメラ)」で観測した超新星「SN 2026gzf」の周辺と爆発前後の様子(Credit: CTIO/NOIRLab/DOE/NSF/AURA; Image Processing: D. de Martin & M. Zamani (NSF NOIRLab))
【▲ ビクター・M・ブランコ4m望遠鏡(セロ・トロロ汎米天文台、チリ)の観測装置「DECam(ダークエネルギーカメラ)」で観測した超新星「SN 2026gzf」の周辺と爆発前後の様子(Credit: CTIO/NOIRLab/DOE/NSF/AURA; Image Processing: D. de Martin & M. Zamani (NSF NOIRLab))】

大質量星の最期には多様性がある?

2つの研究チームの成果を総合すると、爆発した星は太陽の約20倍の質量で誕生し、生涯の早い段階で水素を失う「ウォルフ・ライエ星」だったと考えられています。死を迎える直前には不規則な質量放出を繰り返し、水素とヘリウムをすべて失ったことで、炭素と酸素が主体の星になっていたとみられています。

激しい質量放出によって、爆発した星の周囲には物質の殻が何重にも作り出されたと予測されています。天関が検出したX線の閃光は星に近い場所にあった小さくて低質量の殻が生み出し、それに続く超新星の残光はより外側に広がった非対称の殻が生み出したと考えられています。

今回の成果は、Ic-BL型超新星が必ずしもガンマ線バーストや相対論的なジェット、長期間続く残光を伴うわけではないことを示す、初めての明確な事例となりました。別の言い方をすれば、大質量星の最期はこれまで考えられていたよりも多様な道筋を経る可能性が示されたことになります。

LMU(ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン)によれば、ジェームズ・ウェッブ(James Webb)宇宙望遠鏡によるSN 2026gzfの追加観測もすでに承認されており、今後は爆発の構造や噴出した物質の組成の解明が進むと期待されています。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典