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白色矮星が関わる超新星爆発の一部は「原始ブラックホール」の通過が引き金になっている?

ニューヨーク州立大学ポリテクニック・インスティチュートのShing-Chi Leung氏を筆頭とする研究チームは、一部の超新星爆発が「原始ブラックホール」を引き金として発生する可能性を示した新たな研究成果を発表しました。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「The Astrophysical Journal」に掲載されています。

ハッブル(Hubble)宇宙望遠鏡が観測したIa型超新星「SN 2018gv」(Credit: ESA/Hubble & NASA, A. Riess and the SH0ES team; Acknowledgment: Mahdi Zamani)
【▲ ハッブル(Hubble)宇宙望遠鏡が観測したIa型超新星「SN 2018gv」(Credit: ESA/Hubble & NASA, A. Riess and the SH0ES team; Acknowledgment: Mahdi Zamani)】

原始ブラックホールが白色矮星を爆発させる?

原始ブラックホール(Primordial Black Hole: PBH)は、ビッグバンの直後に生じた物質の密度ゆらぎから形成されたと考えられている理論上の天体です。通常の物質(バリオン)の5~6倍も存在するとされるダークマター(暗黒物質)の候補のひとつですが、今のところ発見には至っていません。

Leung氏らは2025年に、原始ブラックホールが超新星爆発の一種である「Ia型超新星」を引き起こす可能性を報告していました。Ia型超新星は、太陽のように比較的質量の軽い恒星が寿命を迎えた後に残される「白色矮星」が関わる超新星爆発です。伴星から流れ込んだガスが白色矮星に降り積もったり、白色矮星どうしが合体することで、質量が太陽の約1.4倍に達した時に爆発に至るとされています。

Leung氏らの先行研究では、白色矮星の内部を原始ブラックホールが通過する際の潮汐相互作用によって、内部の物質が約5億ケルビンまで加熱されることで熱核暴走反応が引き起こされ、超新星爆発に至るというシナリオが理論的に示されています。ただ、原始ブラックホールの通過を引き金とする特殊な爆発によって、観測可能な痕跡がどのように残されるのかが大きな疑問として残されていました。

原始ブラックホールの通過が引き金となって白色矮星が爆発に至るシナリオを説明した図(Credit: 東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構, Generated using Gemini Al (Banana Pro))
【▲ 原始ブラックホールの通過が引き金となって白色矮星が爆発に至るシナリオを説明した図(Credit: 東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構, Generated using Gemini AI (Banana Pro))】

天体の化学組成に痕跡が残されている可能性

今回、Leung氏らは原始ブラックホールを引き金とする超新星爆発のシナリオにもとづいて、化学組成のモデルを構築し、実際の観測データと詳細に比較しました。比較対象になったのは、「ティコの超新星(SN 1572)」や「ケプラーの超新星(SN 1604)」といった有名な超新星爆発の残骸をはじめ、超新星残骸「3C 397」、近年観測された近傍のIa型超新星、そして天の川銀河の恒星のデータです。

論文によると、ニッケル56やニッケル57といった放射性同位体、それにマンガン55やニッケル58といった安定同位体の生成量に注目したところ、ケプラーの超新星の残骸や3C 397にみられる高いマンガンやニッケルの比率、「SN 2011fe」や「SN 2012cg」といった近傍の超新星で観測されたニッケルの同位体比などが、Leung氏らのモデルでうまく説明できることが示されました。

その一方で、ティコの超新星の残骸についてはLeung氏らのモデルとは適合せず、従来の標準的なIa型超新星のモデルのほうが矛盾なく説明できることも明らかになっています。

また、Leung氏らは、天の川銀河の恒星にみられる化学組成の傾向が、標準的な超新星爆発だけでは説明できないことも示しています。原始ブラックホールを引き金とする爆発のモデルを組み込んで銀河の化学進化シミュレーションを行ったLeung氏らは、シミュレーション結果と実際の観測データが最も適合するモデルでは、白色矮星全体のうち約1~2%が、原始ブラックホールの通過を引き金としてIa型超新星に至る可能性があると述べています。

チャンドラ(Chandra)X線宇宙望遠鏡が観測した「ケプラーの超新星(SN 1604)」の残骸。X線の観測データと地上の望遠鏡で撮影した背景の星空を合成したもの(Credit: X-ray: NASA/CXC/SAO; Optical: Pan-STARRS)
【▲ チャンドラ(Chandra)X線宇宙望遠鏡が観測した「ケプラーの超新星(SN 1604)」の残骸。X線の観測データと地上の望遠鏡で撮影した背景の星空を合成したもの(Credit: X-ray: NASA/CXC/SAO; Optical: Pan-STARRS)】

原始ブラックホール探索の新たな道標に?

今回の成果は、近年では数多く発見されるようになった超新星爆発の一部が、実は原始ブラックホールによる白色矮星内部の通過が引き金となっている可能性を示すものとなりました。

Leung氏は「PBHという捉えどころのない天体を直接観測することはできないとしても、その性質を探るための興味深い手がかりは自然界に数多く残されているようです」と述べています。

Leung氏らは今後、原始ブラックホールの通過を引き金とする超新星爆発が、従来の超新星の発生数や、宇宙における突発的な天体現象の発生率に対してどのような影響を及ぼすのかを探求していく予定だということです。

なお、原始ブラックホールを巡っては、通過した痕跡が古い建物や岩石の内部に残されているかもしれないとする研究成果も以前に発表されています。

もしも本当に原始ブラックホールが存在するのであれば、その痕跡は意外な場所から見つかるのかもしれません。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典