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NASAの次世代望遠鏡「ローマン宇宙望遠鏡」推進剤の充填完了 打ち上げは8月30日の予定

NASA(アメリカ航空宇宙局)は2026年7月27日付で、打ち上げ準備を進めている次世代の宇宙望遠鏡「ナンシー・グレース・ローマン(Nancy Grace Roman)」における推進剤の充填作業が完了したことを発表しました。

ローマン宇宙望遠鏡の打ち上げは当初のスケジュールから大幅に前倒しされており、直近ではアメリカ東部夏時間2026年8月30日7時26分(日本時間同日20時26分)に予定されています。

作業台に載せるため吊り上げられたナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡。2026年6月26日撮影(Credit: NASA/Sydney Rohde (Rocz))
【▲ 作業台に載せるため吊り上げられたナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡。2026年6月26日撮影(Credit: NASA/Sydney Rohde (Rocz))】

慎重な推進剤充填作業が完了

NASAによると、アメリカ・フロリダ州のケネディ宇宙センターへ2026年6月21日に到着したローマン宇宙望遠鏡は、太陽電池や断熱材などのテストを経た後、7月25日に290ガロン(約1100リットル)のヒドラジンを充填する作業が行われました。

ローマン宇宙望遠鏡は打ち上げ後、太陽と地球の重力や天体にかかる遠心力が均衡するラグランジュ点のうち、地球から見て太陽とは反対の方向にある「L2」(地球からの距離は約150万km)を周回するような軌道に移動して観測を行います。ヒドラジンはL2周辺へ向かうための軌道変更や、運用時の姿勢制御に使用されます。

推進剤の充填が完了したローマン宇宙望遠鏡は、いよいよ打ち上げに使用されるSpaceX(スペースX)社の「ファルコンヘビー(Falcon Heavy)」ロケットのフェアリングへ格納されることになります。

ちなみに、ローマン宇宙望遠鏡の主要ミッション期間は5年間ですが、NASAによればさらに5年間の延長にも対応し得るだけのヒドラジンが搭載されているといいますから、延長ミッションにも期待がかかります。

推進剤充填前に記念撮影が行われたナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡。2026年7月20日撮影(Credit: NASA/Sydney Rohde (Rocz))
【▲ 推進剤充填前に記念撮影が行われたナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡。2026年7月20日撮影(Credit: NASA/Sydney Rohde (Rocz))】

ダークエネルギーの解明や標準宇宙モデルの検証に挑む

ローマン宇宙望遠鏡の主な目標は、宇宙の加速膨張の要因とされる「ダークエネルギー(暗黒エネルギー)」や、質量比で通常の物質の5倍以上も存在するのに電磁波では観測できないとされる「ダークマター(暗黒物質)」の解明です。

計画段階では「Wide Field Infrared Survey Telescope(広視野赤外線サーベイ望遠鏡)」の頭文字から「WFIRST」と呼ばれていましたが、「ハッブル宇宙望遠鏡の母」と称されるNASAの初代主任天文学者Nancy Grace Roman(ナンシー・グレース・ローマン)氏にちなんで名付けられました。

在りし日のNancy Grace Roman(ナンシー・グレース・ローマン)氏。1970年代にNASAのゴダード宇宙飛行センターにて撮影(Credit: NASA)
【▲ 在りし日のNancy Grace Roman(ナンシー・グレース・ローマン)氏。1970年代にNASAのゴダード宇宙飛行センターにて撮影(Credit: NASA)】

主鏡の直径はハッブル(Hubble)宇宙望遠鏡と同じ2.4mですが、2つ搭載されている観測装置のひとつ「WFI(広視野観測装置)」は、その名の通り広視野を一度に捉えられることを特徴としています。

WFIの視野の広さはハッブル宇宙望遠鏡に搭載されている「ACS(掃天観測用高性能カメラ)」の約100倍、「WFC3(広視野カメラ3)」の約200倍。観測ペースはハッブル宇宙望遠鏡の約1000倍に達する見込みです。

ローマン宇宙望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡の視野を比較した図。背景は「わし星雲」で、中央の小さな四角がハッブル宇宙望遠鏡の視野、外側がローマン宇宙望遠鏡のWFI(広視野観測装置)の視野に相当する範囲(Credit: L. Hustak (STScI))
【▲ ローマン宇宙望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡の視野を比較した図。背景は「わし星雲」で、中央の小さな四角がハッブル宇宙望遠鏡の視野、外側がローマン宇宙望遠鏡のWFI(広視野観測装置)の視野に相当する範囲(Credit: L. Hustak (STScI))】

太陽系外惑星の直接観測にも挑戦

もうひとつの重要な観測装置は「CGI(コロナグラフ)」です。これは、明るい恒星の光を打ち消し、そのすぐ近くを公転する暗い太陽系外惑星を直接撮影するための技術実証として開発されました。

CGIは単純に恒星を隠すのではなく、レンズやプリズム、鏡面をリアルタイムに変形できるデフォーマブルミラーなどを組み合わせた複雑な装置です。太陽系外惑星で生命の兆候を探るべくNASAが構想中の大型宇宙望遠鏡「ハビタブル・ワールド・オブザーバトリー(Habitable Worlds Observatory)」に向けた、重要なステップでもあります。

【▲ ローマン宇宙望遠鏡に搭載されたコロナグラフの動作を解説した動画(英語)(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center)】

数十億の銀河や数万の新たな太陽系外惑星を観測し、宇宙の謎へさらに迫ることができると期待されるローマン宇宙望遠鏡。広大な宇宙の謎へ挑むミッション、その始まりを告げる打ち上げまで、あと1か月ほどです。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典