
こちらは、ESO(ヨーロッパ南天天文台)のVISTA望遠鏡で観測した「らせん星雲」(Helix Nebula、NGC 7293)。みずがめ座の方向、地球から約650光年先にあります。

まるで宇宙の深淵からこちらを見つめる、巨大な眼差しのように見える姿が印象的です。深い青色をした瞳孔にあたる中心部を、オレンジや赤で示された複雑なガスの構造が縁取っており、背景に広がる無数の星々や銀河とともに、息をのむ神秘的な光景を描き出しています。
太陽の未来を映し出す惑星状星雲
惑星状星雲とは、超新星爆発を起こさない比較的軽い恒星(質量は太陽の8倍以下)が、恒星進化の最終段階で周囲に形成する天体です。
太陽のような恒星は、晩年を迎えると主系列星から赤色巨星に進化し、外層から周囲へとガスや塵(ダスト)を放出するようになります。やがて、ガスを失った星が赤色巨星から白色矮星へと移り変わる段階(中心星)になると、放出されたガスが星から放射された紫外線によって電離して光を放ち、惑星状星雲として観測されるようになります。
画像の中央、目でたとえれば“瞳孔”の中心にある小さな青い点は、らせん星雲の中心星です。太陽も約50億年後には似たような最期を迎えると考えられていますから、らせん星雲は太陽系の未来を映し出す鏡とも言える存在です。
ちなみに、このタイプの天体を指す「惑星状」星雲という名前は、昔の望遠鏡で見た様子が惑星のようだったことから、当時の天文学者たちによって名付けられました。実際は惑星とは関係のない天体です。
赤外線が明らかにする複雑なガスの構造
冒頭の画像はVISTA望遠鏡で取得した赤外線の観測データを使って作成されました。赤外線は人間には見えないため、色は観測時に使用されたフィルターに応じて擬似的に着色されています。
ESOによると、らせん星雲の目立つリング状構造は差し渡し約2光年、星雲を形作る物質全体では少なくとも4光年ほど先まで広がっています。注目は中心から放射状に広がるフィラメント状の構造で、ひとつひとつが太陽系ほどの大きさを持つといいます。
近年の観測で解き明かされるらせん星雲の素顔
らせん星雲は地球に近い惑星状星雲であることから、ハッブル宇宙望遠鏡をはじめ、さまざまな望遠鏡で観測が行われてきました。最近では、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測したフィラメント構造のクローズアップが公開されています。

また、チャンドラX線宇宙望遠鏡などによるX線での観測データをもとに、らせん星雲の中心星が自身を周回する惑星を破壊した可能性を示した研究成果も発表されています。
恒星が死を迎えるとき、周囲の惑星系では何が起こるのか。太陽系の未来を予測する上で、らせん星雲は今後も貴重な手がかりをもたらしてくれることでしょう。
冒頭の画像はESOから2012年1月19日付で公開されたもので、ESOの公式SNSアカウントが2026年7月16日に改めて紹介しています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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