
こちらは、ハッブル宇宙望遠鏡が観測した楕円銀河「NGC 4696」。ケンタウルス座の方向、地球から約1億5000万光年先にあります。

特異な姿を見せる巨大な銀河
NGC 4696は、数百もの銀河が重力で結びついている「ケンタウルス座銀河団(Abell 3526)」の中でも、最も大きく明るい銀河です。
一般的な楕円銀河は、複雑な構造を持たず、古い星々が集まってぼんやりと輝いていることが多い銀河です。
しかし、NGC 4696には差し渡し約3万光年にもおよぶ、巨大なダストレーンが存在しています。画像を見ると、塵(ダスト)の豊富な暗い雲の帯がうねるように中心部分を取り巻き、さながら「?(クエスチョンマーク)」の形を描いているようです。
「?」の周囲では、繊維状の細やかな構造が絡み合っているようにも見えます。実際にNGC 4696の中心部分をクローズアップしてみると、まるで珊瑚のように複雑なフィラメント(ひも状)構造が存在することがわかります。

巨大なブラックホールが織りなす「糸」
この奇妙な姿の背後には、超大質量ブラックホール(超巨大ブラックホール)が深く関わっていると考えられています。
ESA(ヨーロッパ宇宙機関)によれば、NGC 4696の中心に潜むこのブラックホールは、ほぼ光速でジェット(細く絞られた物質の高速な流れ)を噴出させています。また、NASA(アメリカ航空宇宙局)のチャンドラ(Chandra)X線宇宙望遠鏡などによるX線観測の結果、このジェットの凄まじいエネルギーによって、銀河内の高温ガスに巨大な空洞が形成されていることがわかっています。
2016年に発表された研究では、中心部分のフィラメント構造の謎が紐解かれました。NGC 4696の中心にある巨大なブラックホールが放つエネルギーによって押し出された高温のガスが、周囲の高密度な塵やガスを引きずることで、周囲よりも密度が10倍ほど高い幅約200光年の複雑なフィラメント構造を作り出していると考えられています。
さらに、2026年に入ってからは、ジェームズ・ウェッブ(James Webb)宇宙望遠鏡の観測データをもとに、このフィラメント構造のネットワークがブラックホールを取り巻く円盤構造と物理的に接続している可能性も指摘されています。
フィラメント構造を形作る物質は、渦巻きながらブラックホールへ落下し、最終的には飲み込まれることになります。NGC 4696は、ブラックホールの激しい活動が銀河のガスを加熱して新たな星の形成をさまたげる一方で、自らの活動のエネルギー源となるガスを手繰り寄せているという、壮大な宇宙の営みを私たちに伝えています。
冒頭の画像はESA/Hubbleから2010年8月12日付で公開されたもので、ESAの公式Xアカウントが2026年7月2日に改めて紹介しています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- ESA/Hubble - NGC 4696: a cosmic question mark
- ESA - Tangled Threads Weave Through Cosmic Oddity [HEIC1621]
- Hlavacek-Larrondo et al. - JWST reveals how black holes are fed: kiloparsec-scale multiphase filaments feed sub-kiloparsec circumnuclear disks (arXiv)
























