
こちらは、アメリカ・アリゾナ州のキットピーク国立天文台にあるメイヨール4m望遠鏡で観測した銀河「ろくぶんぎ座A(Sextans A)」です。ろくぶんぎ座の方向、地球からおよそ440万光年先にあります。

不規則銀河とは、渦巻銀河や楕円銀河のような整った構造を持たず、星々が無秩序に集まっているように見える銀河のことです。ろくぶんぎ座Aはそのなかでも軽くて小さな「矮小不規則銀河」に分類されています。直径は天の川銀河の20分の1にあたる約5000光年しかありません。
NOIRLab(アメリカ国立光学・赤外天文学研究所)によれば、小さな銀河は大きな銀河との重力を介した相互作用の影響を受けやすく、それが不規則な形状につながることもあるといいます。また、ろくぶんぎ座Aの場合は内部で起きた相次ぐ超新星爆発の影響を受けて、独特な四角形のような形にゆがんでいると考えられています。
画像では、若い星々が放つ青い輝きと、新たな星が生まれる星形成領域の存在を示す赤い輝きのコントラストが美しく、四角い形と相まって、まるで輝く星々で満たされた宇宙の宝石箱のようです。
初期宇宙の姿を伝える存在
美しい外見を持つろくぶんぎ座Aですが、天文学的にも非常に興味深い特徴を持っています。この銀河は、水素やヘリウムよりも重い元素(天文学ではまとめて「重元素」や「金属」と呼びます)の割合が極めて少なく、太陽のわずか3〜7パーセント程度しか含まれていません。
重元素は星の内部における核融合反応や、超新星爆発のような激しい現象で生成され、恒星の死とともに宇宙空間にばらまかれます。ただ、ろくぶんぎ座Aのように質量の小さな銀河では重力が弱いため、合成された重い元素を銀河の内部に長期間留めておくのが難しくなります。
結果として、ろくぶんぎ座Aは化学的にとても原始的な状態にとどまっているといい、重い元素が乏しかった宇宙初期の古い銀河とよく似た環境を現在まで保っていると考えられています。遠く離れた初期宇宙の小さな銀河を詳細に観測するのは困難ですが、地球から比較的近い位置にあるろくぶんぎ座Aを詳しく調べることで、初期宇宙の星々がどのように誕生し、進化していったのかを知るための重要な手がかりが得られるのです。
ろくぶんぎ座Aの鮮やかな画像は、メイヨール4m望遠鏡の観測装置によって複数の波長(可視光線)で取得されたデータをもとに作成されました。星々の年齢や活動状態を様々な波長……すなわち“色”を通じて視覚化したこのデータは、単に美しい天体写真を作るためだけでなく、私たちの宇宙の成り立ちを紐解くための優れた資料として活用されています。
冒頭の画像はNOIRLabから2021年6月30日付で公開されました。
本記事は2021年8月6日公開の記事を再構成したものです。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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