
JAXA(宇宙航空研究開発機構)は2026年8月20日、火星衛星探査計画「MMX(Martian Moons eXploration)」の探査機を搭載する「H3」ロケット10号機の打ち上げ予定日を発表しました。

「H3-24L」形態の初飛行
JAXAによると、H3ロケット10号機の打ち上げ予定日は2026年10月20日、打ち上げ予定時刻は4時41分03秒です。打ち上げ予備期間は2026年10月21日~2026年11月7日が確保されています。
機体形態は1段目エンジン「LE-9」が2基・固体燃料ロケットブースター「SRB-3」が4基・ロングフェアリングを採用する「H3-24L」形態で、10号機が初飛行となります。2025年10月に新型宇宙ステーション補給機1号機「HTV-X1」を打ち上げた7号機の「H3-24W」形態に似た構成ですが、フェアリングなどに違いがあります。
H3ロケットを巡っては、2025年12月に発生した8号機の打ち上げ失敗を受けて、JAXAが原因究明と対策を進めてきました。2026年6月に打ち上げられた6号機(※「H3-30S」形態の試験機)の2段目機体軌道投入成功に続き、2026年8月11日に打ち上げられた9号機では測位衛星「みちびき」7号機の軌道投入に成功しており、10号機は8号機以降3回目の打ち上げとなります。
- JAXAが「H3」ロケット9号機を打ち上げ 「みちびき」7号機の軌道投入に成功(2026年8月11日)
- JAXAが「H3」ロケット6号機を打ち上げ 2段目の軌道投入を達成(2026年6月12日)

火星衛星からのサンプルリターンに挑む「MMX」
MMXは、火星の衛星のひとつ「フォボス(Phobos)」に探査機を着陸させてサンプルを採取し、地球に持ち帰ることを目指すミッションです。成功すれば世界初となります。
フォボスは火星の高度約6000kmを周回する直径20~30kmほどの小さな天体で、本格的な探査がまだ行われておらず、JAXAは「太陽系で最も重要な未踏峰」と表現しています。
火星の衛星フォボスともうひとつの衛星「ダイモス(Deimos)」の起源を巡っては、火星への天体衝突によって形成されたとする「巨大衝突説」と、太陽系外縁部から飛来した小惑星が火星の重力に捕らえられたとする「捕獲説」の2つが提唱されています。MMXではフォボスの表面から10g以上の物質を採取する予定で、この論争に決着をつけることを目指します。
なお、火星への天体衝突時に巻き上げられた物質の一部はフォボスに降り積もっていると考えられており、サンプルには火星表面の物質が含まれている可能性もあると期待されています。

日本主導の月・惑星探査として最大の国際協力体制
MMXは打ち上げ時の質量が約4.5トンに達する大型の探査機で、機体の開発は三菱電機株式会社が担当しました。限られた推進剤を効率的に使いながら地球と火星圏を往復するために、火星到着後に切り離す「往路モジュール」、観測や着陸を担う「探査モジュール」、サンプルを積んで地球に帰還する「復路モジュール」という3つのモジュールで構成されています。
搭載される11の科学機器のうち、ローバー「IDEFIX(イデフィックス)」などの4つは、NASA(アメリカ航空宇宙局)、CNES(フランス国立宇宙研究センター)、DLR(ドイツ航空宇宙センター)といった海外の機関から提供されています。JAXAによれば、MMXは日本が主導する月・惑星探査ミッションとして最大規模の国際共同ミッションとなります。
また、NHK(日本放送協会)とJAXAが共同開発したスーパーハイビジョンカメラ「SHV」も搭載されており、火星圏の高精細な4Kおよび8K映像の撮影と地球への伝送が行われる予定です。
MMXの要と言えるサンプルの採取装置も国際協力の一例です。探査機に2つ搭載される採取機構のうち、円筒状の器具をフォボス表面に突き刺して物質を採取する「C-SMP」はJAXAが開発を担当し、圧縮ガスを吹き付けて物質を集める空気圧式の採取機構「P-SMP」はNASAが開発を担当しています。方式の異なる2つの装置を組み合わせることで、サンプルの確実な採取を目指しています。


打ち上げに向けた準備は最終段階へ
2026年8月13日に種子島宇宙センターで開催された記者説明会では、MMX探査機の打ち上げ準備状況が説明されました。
MMX探査機は2025年2月にシステム総合試験を開始し、三菱電機鎌倉製作所での各種環境試験を経て2026年3月末に種子島宇宙センターへ搬入され、同年6月には最終的な電気試験を完了しています。
火星圏到着は2027年の予定で、火星を周回しながらフォボスの観測を行い、到着から1年半ほど後にサンプルの採取を実施します。その後はダイモスのフライバイ観測を行い、2030年に火星圏を出発。地球には2031年に帰還し、サンプルを収めたカプセルがオーストラリアに着陸する計画です。
MMX探査機がフォボスから持ち帰るサンプルは、火星の衛星の成り立ちや火星圏の進化、生命の材料となる水や有機物の起源を解き明かす手がかりになると期待されています。約5年間にわたる火星圏探査の旅が始まるまで、あと2か月です。

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- JAXA - H3ロケット10号機による火星衛星探査機(MMX)の打上げ
- JAXA - 火星衛星探査計画(MMX)機体公開に関する記者説明会 (YouTube)
- JAXA - MMX - Martian Moons eXploration
























