
こちらは、ESO(ヨーロッパ南天天文台)の「VLT(超大型望遠鏡)」で観測した渦巻銀河「M77(Messier 77)」。くじら座の方向、地球から約4700万光年先にあります。

真正面から見た巨大な渦巻銀河
「M77」という名前は、18世紀にフランスの天文学者Charles Messier(シャルル・メシエ)が、彗星と見間違えやすい星雲や星団などの天体をまとめた「メシエカタログ」の77番目に記載されていることを示しています。別の天体カタログにおける「NGC 1068」「LEDA 10266」などの名称も持ちます。
ESOによれば、直径約10万光年のM77は、メシエカタログに収録された銀河のなかでも最大級の大きさです。地球からはM77がほぼ真正面から見えており、画像では塵(ダスト)の豊富な暗い雲の筋が交差する渦巻腕(渦状腕)の様子が捉えられています。
画像の中央、銀河の中心部を取り囲むように点々と輝くピンク色の部分は、電離水素領域やHII領域と呼ばれています。高温の若い星々が放射した紫外線によって電離した水素が特有の赤い光(Hα線)を放っており、渦巻腕で新たな星が生まれつつある場所を示しています。
一方、画像の左上や右下などに見える細い糸のような赤い模様は、M77を取り巻くガスが形作ったフィラメント(ひも)状の構造です。また、中心部の左側で放射状の光の筋をともなう明るい星は、手前にある天の川銀河の恒星です。画像の右下や下側には、M77よりも遠くに存在する銀河の姿も写っています。
穏やかな姿に隠された激しい一面
一見穏やかそうなM77ですが、実は地球に最も近い「活動銀河」のひとつです。活動銀河とは、中心部のごく狭い領域が非常に明るく輝いている銀河のことで、この領域を「活動銀河核(AGN)」と呼びます。
ESOによれば、活動銀河核は銀河のほかの部分全体をしのぐほど明るく輝くことがあり、ガンマ線やX線から電波まで、ほぼあらゆる波長の電磁波を放っています。その輝きの源は、銀河の中心に潜む巨大な超大質量(超巨大)ブラックホールです。
ブラックホールへらせんを描きながら落下していくガスや塵は、降着円盤と呼ばれる構造を形成します。降着円盤は落下する物質どうしの摩擦によって温度が非常に高くなり、可視光線やX線などを強く放出すると考えられています。
可視光線で観測した活動銀河核には、明るく輝いて見えるものもあれば、M77のように控えめに輝くものもあります。こうした見た目の違いは、ブラックホールを囲む分厚い塵のリングを見る角度の違いによって生じるのではないかとする「統一モデル」が1990年代に提唱されていて、2022年にはこのモデルを支持する重要な証拠を得たとする研究成果が発表されています。
- 超大質量ブラックホールを隠すリング構造。M77の観測結果が活動銀河核の理論を裏付け(2022年2月17日)
ニュートリノで探る銀河の中心
また、2022年11月には、南極のニュートリノ観測所「IceCube(アイスキューブ)」の研究チームが、M77から高エネルギーのニュートリノが放たれている証拠を初めて見つけたとする研究成果を発表しました。
ニュートリノは通常の物質とほとんど反応しない素粒子で、濃いガスや塵にさまたげられやすい光とは異なり、極めて高密度な環境からも抜け出して地球に届きます。IceCubeの研究チームは、この成果は超大質量ブラックホールを取り巻く環境の理解を深めるものだと述べています。
穏やかに渦巻く銀河の奥では、何が起きているのか。M77は、その答えを光とニュートリノの両面から探れる貴重な銀河と言えそうです。
冒頭の画像はESOから2017年7月5日付で公開されたもので、ESOの公式SNSアカウントが2026年9月25日に改めて紹介しています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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