
こちらは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測した「イータカリーナ星雲(Carina Nebula)」のクローズアップです。イータカリーナ星雲はりゅうこつ座の方向、地球から約7500光年先にあります。

イータカリーナ星雲は、幅およそ260光年にも及ぶ巨大な星形成領域です。ウェッブ宇宙望遠鏡による最初の観測成果のひとつとして2022年7月に画像が公開された「宇宙の断崖(Cosmic Cliffs)」も、この星雲の一角にあります。
イータカリーナ星雲に浮かぶ「宝箱」
ウェッブ宇宙望遠鏡は赤外線の波長で主に観測を行うため、公開されている画像の色は取得時に使用されたフィルターに応じて着色されています。
ESA(ヨーロッパ宇宙機関)によると、画像中央の蓋を大きく開いた箱のような形の雲は「宝箱(Treasure Chest)」と呼ばれています。その正体は、彗星状グロビュール(Cometary globule)と呼ばれる天体の一種です。
彗星状グロビュールは一般的に、ガスと塵(ダスト)の高密度な雲から彗星のような長い尾が伸びています。しかし、画像の雲は彗星というよりも蓋の開いた宝箱を思わせる姿をしていることから、見た目そのままの愛称が付けられました。
箱の中身は宝石…ではなく若い星々
この“宝箱”の中身は、若い星々がコンパクトにまとまった星団です。ウェッブ宇宙望遠鏡の「NIRCam(近赤外線カメラ)」で得た観測データをもとに、この星団には太陽の約19倍の質量を持つO型星をはじめ、約70個の星が含まれていると研究者たちは考えています。
ESAによれば、星団の年齢はこれまで10万年と見積もられていましたが、最近では10倍以上古い130万年と推定されています。いずれにしても恒星としてはかなり若く、星団は今も“宝箱”を形作る雲の奥深くに埋もれた状態です。これらの星は塵が取り巻いているとみられ、星周円盤が存在する証拠も多くの星で見つかっているといいます。
若い星々が放つ光や恒星風はやがて周囲の雲を吹き払い、星団全体が姿を表していくと考えられています。
不思議な形を彫刻した巨大な星たちの力
不思議な“宝箱”の形を作り出したのは、北西方向の画像外に位置する、星雲の名前の由来になった星「りゅうこつ座η(イータ)星」(イータ・カリーナ)です。りゅうこつ座η星は少なくとも2つの星からなる星系で、1つの星は質量が太陽の約100倍、明るさは太陽の約500万倍にも達するとされています。
さらに、その近くには非常に高温の大質量星をいくつも含む散開星団「Trumpler 16(トランプラー16)」があります。この星団の星々とりゅうこつ座(イータ)星が放つ強烈な電磁波と恒星風が、現在観測されている“宝箱”の姿を形作った主な要因だと考えられています。
ウェッブ宇宙望遠鏡による今回のイータカリーナ星雲の観測は、若い星々が周囲から取り込んだガスの一部をアウトフロー(ガスの流れ)として放出する様子を追う観測プログラムの一環として実施されました。若い星が周辺の環境にどのような影響を及ぼすのかを理解する手がかりとして、今後の研究の進展が期待されます。
冒頭の画像はESA/Webbから2026年8月6日付で公開されています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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