
木星の衛星エウロパ(Europa)は、表面を覆う分厚い氷の殻の下に広大な内部海を持つと考えられており、太陽系内において地球以外に生命が存在する可能性のある有望な天体の一つとして注目を集めています。
2014年にはハッブル宇宙望遠鏡の観測データをもとに、エウロパの南極付近から水のプルーム(水柱、間欠泉)が噴出している可能性を示した研究成果が発表されています。もしも氷の割れ目から内部の水が宇宙空間へと放出されているのであれば、内部海の性質を直接調べる手がかりとなるからです。
ところが今回、スウェーデン王立工科大学(KTH)やサウスウエスト研究所(SwRI)などの研究チームは、過去の観測データを再解析した結果、プルームが存在する可能性を示した以前の研究に疑問を投げかける結果が得られたとする研究成果を発表しました。今回の研究を発表したのは、2014年にプルームの可能性を報告したのと同じチームであり、自らの過去の発見を厳密に再検証した形になります。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「Astronomy & Astrophysics」に掲載されています。

観測データの再解析が示す新たな事実
研究チームは今回、ハッブル宇宙望遠鏡の「STIS(宇宙望遠鏡撮像分光器)」で1999年および2012年~2020年に取得されたデータを、改めて詳細に解析しました。対象になったのは、水素原子が散乱・放射する特定の紫外線の波長である「ライマンアルファ線」の放射データです。
SwRIによると、以前の解析では、ハッブル宇宙望遠鏡が取得した画像内におけるエウロパの正確な位置を決定する上で、わずかな不確実性がありました。この不確実性が問題で、たった1ピクセルか2ピクセルだけエウロパの位置がずれても、データの解釈に大きな影響を与えてしまうのだといいます。
研究チームによると、今回の再解析では画像の位置合わせの手法を改善したことに加え、エウロパ全体を包み込む極めて希薄な大気(外気圏)を構成する水素原子からのシグナルを新たに考慮したモデルが構築されました。こうした新たな手法を用いて再解析を行ったところ、2014年の論文でプルームの証拠とされた局所的なシグナルは確認できず、統計的なノイズである可能性が高いことが判明したといいます。

謎の解明は次世代の探査機へ
2014年の論文および今回の論文の共著者であるSwRIのKurt Retherfordさんは、「エウロパのプルームの証拠は、私たちが当初考えていたほど強力なものではありませんでした」と述べています。
また、論文の筆頭著者であるKTHのLorenz Rothさんは、今回の再解析によってプルームが存在するという確信度は以前の99.9%から90%未満へ低下しており、「これは当時の主張を裏付けるには単純に証拠として不十分です」と述べています。
ただし、今回の研究結果はプルームの存在そのものを完全に否定するものではありません。エウロパ全体に薄い水素の外気圏が定常的に存在していることは確認されているため、エウロパの大気環境についての新たな理解も得られています。
「エウロパから実際に水が噴き出しているのか?」という大きな疑問の解明は、2030年代に木星系で探査を行うNASA(アメリカ航空宇宙局)の「Europa Clipper(エウロパ・クリッパー)」や、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の「Juice(ジュース)」といったミッションの探査機による詳細な直接観測に委ねられることになりそうです。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- SwRI - SwRI findings reconsider the existence of Europa’s vapor plumes
- Roth et al. - Europa’s Lyman-α emissions from HST/STIS observations (Astronomy & Astrophysics)























